第5話 回想編②性について
2021年4月
4月下旬、私は入院し、癌の手術を受けた。彼とは入院中も毎日朝から晩まで連絡を取り合い、仲を深めていった。そしてその頃から彼は性に対しても自らを剥き出しにしていったのである。私に出会う前の2年間は耳鳴り、パニック、身体の不調の為、セックスをする気にもなれず彼女もいなかった。それに自身の性器にも自信がなかった。自律神経失調症というのは交感神経が優位になる為、男性性器は勃起しなくなる。しかし、医者からは毎日自慰行為をするように言われた。それができないと完全に勃起しなくなるというのだ。もともと性欲の強い彼であっても、不調の中毎日自慰行為を続けるのは辛かったと思う。私に出会ってからは私の写真を見て行為をするようになり、「今まで苦痛だったオナニーが、毎日楽しくなった。」と喜んでいた。そして「見て見て~」とでも言うように性器や射精の瞬間、その精液を写真や動画などで送ってくるようになった。私は彼の事を子どもっぽく感じた。それには他にも理由がある。彼は恥ずかしげもなく自分の性器を「チンポ」、私の性器を「オメコ」と呼んだし、「ピストン」「交尾」、あからさまというか下品さを感じる用語を多く使っていた。(以下この小説では下品用語はなるべく避ける)
同時に彼はやきもち焼きで、私が以前に付き合った人数や、付き合わずにセックスした人はいるのかとか、元夫と別れた原因など、あらゆる事を聞いてきた。以前に付き合った男たちとどんなセックスをしてきたのかまで事細かく聞いてくるので違和感を覚えたこともある。
彼は少し変わっているのだ。経験人数は12人だと言ったが一般的ではない事を多く経験していた。「多いね。」と言うと、「風俗に行く人よりまし。一人ひとりが長いから。」と言った。彼はお金で女性を買うのが嫌いらしい。だから風俗には行った事がないそうだ。いちばん長く付き合ったのは同棲していた彼女が6年。次に4年。2年と続く。一般的でない事とは、高校生の時にバイト先で年上の同僚にトイレでレイプされたとか、既婚者と付き合ったとか、また別の既婚者にはセックス時に唾液まみれにされ、彼女だけシャワーを浴びて先に帰られた。その彼女には「子作り頑張るから。」と言われ、関係は終わった。彼はやはり既婚者なのか。既婚者ならば既婚者同士で付き合っても納得はいく。独身ならばわざわざ何人も既婚者を選ばないだろう。彼女らはデートする事もなく3、4回のセックスだけで終わっている。私からすればそれは彼女ではない気もしたが、彼は「相手はどう思ってるかわからんけど自分は彼女だと思ってたし好きだった。」と言うのだ。また別の彼女は、旅行に行ってくると言ったままLINEが既読にならなくなった。ブロックされたのだろう。その彼女とのセックスでは陵辱され、アナルに指を入れられて痛みに耐えられず降参、多分頑張れなかったから捨てられた、と彼は思っている。
普通の付き合いもある。しかし、彼女の浮気が3度もバレて別れた。1度目はメールで発覚。2度目は電話すると男の車の中、3度目は性器から煙草の臭いがした。彼は煙草を吸わない。さすがに3度浮気されたので許せなかったという。
いちばんビックリしたのは、元風俗嬢と付き合った時の話。彼女は気が多くて他の人とも関係を持ちたがった。たまには他の人と遊んでいいよと言ったらいつしかそのまま、相手の男に盗られたそうだ。彼女は他の男とした時のコンドームを見せてきたり、行為の動画を見せてきたりした。酷い話だとその時は思った。「浮気をしてもいい、でも報告して欲しい。と言っていたのに内緒で会われて結局寝盗られた。」と言っていた。彼は内緒にされるのを酷く嫌がった。私にもしきりに「浮気したことある?」と聞いてきた。私は「ない。」と答えた。「浮気してもいいけど報告してね。」彼にこれを言われた時、私はなんとも言えない悲しい感情が湧いたのを今でも覚えている。
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