第2話 興信所

2022年2月23日 


 興信所に行く前に、私は他に既婚者かどうか調べる方法はないかと考えた。何故なら興信所って金額的にかなり高くつくんじゃないかと思ったからだ。


 彼は京都市内でカフェを経営している。その隣にもお店があり、年配の女性がカレー屋さんを経営していると彼から聞いていた。たまに店の前で会えば話す事もあるというから、その女店主なら何でも知っているだろう。他にできるとすれば、お店が終わるのを待って後をつけるか。。

これらの方法はそれなりのリスクがあるだろうし、その女店主が、こんなことを聞かれたと彼に話してしまう可能性もある。私の友人に頼んだところでそれは同じ事だと思った。やっぱり興信所がいいか。。


 興信所にはまず電話で問い合わせた。二軒掛けてみたが素早く対応してくれた方にとりあえず話を聴いてもらう事にした。そして彼と別れて1週間後に伺った。

私は別れるまでの経緯を詳しく説明し、自分の今の気持ちと、このままでは気持ちに整理がつかず、前に進むことも難しいと伝えた。話を聴いてくれた担当者はとても親身になってくれた。

「このようなご相談の時は大概、既婚者であることが多いです。あまり会えないのを親の看病とする方も多いですね。」担当者に言われ、それでも彼に限って・・・と思ってしまう。あの時も嘘?あれもこれも嘘?嘘である事の方が信じられない。

「すべてが嘘ではないんです。本当の事も混じっていることが多い。でも、長く付き合っているといつかボロが出ますよ。自分の言った嘘を完璧に覚えている人はいませんのでね。」そうか。確かに辻褄の合わないこともあった。例えば、彼はバツイチだと言っていたのに、未婚だと言い直した事がある。

「6年間付き合っていた彼女がいて同棲してた。後は籍を入れるだけで結婚してるようなもんだったからバツイチって言ったよ。結局彼女に飽きたって言われて別れたんやけど・・・そんなこと本人に言う?そう言われて彼女に対する自分の気持ちも冷めちゃった。」そう言う彼に、だからといって結婚していないのにバツイチとか言うか?それに関しては「独身って何か問題あると思われかねないから。」とかわされた。

他には猫の話。彼は猫を1匹飼っていると言っていたが、途中で犬がいる事がわかった。猫を飼っている話の時に犬もいると普通言わないか?「猫の方が溺愛してるから。」と言っていたが、ここにも何か秘密が隠されているに違いない。

まあこのように辻褄の合わないことは多かった。しかし、あれもこれも彼は鬱病の薬を飲んでいたし、頭が朦朧としている事も多かったから、私にとっては許容範囲だったのだ。


 興信所の担当者が親身に話を聴いてくれたおかげで私の気持ちは少しスッキリした。そして調査を依頼する決心もついた。興信所に何かを頼むなんて機会、これからの人生ないと思う。ワクワクする気持ちもあった。金額は44万円。きちんと調査してくれて、自分の気持ちも納得するならこれくらいの金額は安いもんだと思った。また、稼げばいい。

「尾行、張り込み、その他調べますので、2ヵ月近くかかると思います。」

「はい。お願い致します。」

帰りは何となく気持ちが晴れ晴れとしていた。

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