(三)-3

「名前を聞いているの。翔太って言っても色々いるでしょう。何翔太よ。山田? それとも佐藤? それとも北清水?」

「藤阪……、翔太です」

 また「です」を付けろと言われると思ったのだろうか。加島は、発音した苗字をフルネームにして、最後に「です」を付けた。

 藤阪翔太。間違いない。付き合っている私の彼の名前だった。彼は彼女と別れたと言っていなかったっけか。

「あなた、まさか女?」

「いえ、男です」

 加島は怪訝な表情を浮かべて、顔を上げた。それは私にだって外見で判断できる。


(続く)

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