SUNRISE
野草 結人
第1話 依頼内容
薄暗い室内にタイピング音が響く。
大きな窓の外に見える街並みはキラキラと綺麗で、どこか嘘臭い。
カタンッ
エンターキーを押す音が静かに響いた。
直後、モニターに表示されたその文字を見て、小さく息を吐いた。
〈ご依頼、承りました〉
■■□―――――――――――――――――――□■■
ピロン♪
ポケットの中から携帯の通知音がメールの受信を伝える。
「わりぃ、ちょっとメール確認していいか?」
俺がやっている賞金稼ぎという仕事はある意味、早い者勝ちだ。
他人が手をつけた後でも仕事はできなくはないが、色々とリスクも増えるので、できれば遠慮したいのが本音だ。
「ああ、俺のことは気にせず確認してくれ。」
「わりいな」
連れの男が酒のグラスを傾けるのを見て、素早く携帯の画面を確認する。
メールで送られてきた次の仕事内容は、ある製薬会社本社ビル最上階に住むターゲットの暗殺。
その達成条件は3つ。
達成条件① ターゲットは即死に限る。
達成条件③ 暗殺は深夜2時から3時の間に実行すること。
達成条件② 壁、天井、窓、ドアなど一切の破壊行為は禁止。
この条件ではこの仕事に手を出す者は限られるだろう。
この依頼を達成する為には、人の出入りも無い深夜に扉や窓などを一切壊さず侵入し、ターゲットを一撃で殺せ、と。
それに、成功報酬で800万円、この難易度の割に安い仕事だ。
いつもなら内容と報酬の合わない仕事には見向きもしないが、その社名が少し気になった。
(株) Arc Symphony、今の社長がまだ若くして立ち上げた会社で表向きは市販薬から医薬品までを手広く扱う製薬会社として知られているが、裏では結構やばいこともやっているという噂だ。
俺はなぜか、この仕事をやらなきゃいけない気がした。
「どうした?」
「ああ、わりぃ。問題ない」
声をかけられ、自分の思考に没頭していたことを自覚した。
とりあえず、手短に手付けの連絡だけを送り、携帯をロックした。
詳細については、また後日資料が送られてくるだろうと思い、とりあえず今は目の前の呑み仲間の話に集中することにした。
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