一杯目① 町民は口が回る

やあ、店主。

昼間は良い天気だったね。

まあ、夜になって少し風が出てきたが、ご愛嬌というやつだろう。

今日の注文はなににするかって?

そうだな……。

じゃあ、いつもので頼むよ。それと、なにか酒を一杯もらおうか。

…………。

お、早速酒が出てきた。

それじゃあ…今日も一日、無事に過ごせたことに、乾杯!

ゴク、ゴク、ゴク……プパァ!

いやぁ〜、いつ飲んでもここの酒は美味いな! 疲れがふっ飛ぶよ!

え? 今日は随分疲れてるようだって?

参ったな…、店主にはお見通しか。

いやなに、今日の仕事も、幾分骨が折れた仕事でね。正直、疲れてこのまま寝てしまいそうなんだよ。

なんだって? そんなに疲れてるならベッドを貸してやろうかだって?

とても魅力的な提案ではあるが、遠慮させて頂くよ。

その代わりと言ってはなんだが、少し話を聞いてくれないか?

少し誰かに話したい気分でね。まあ、ただの愚痴だと思って、付き合ってくれないかい?

なに? 付き合ってやるから、もうひとつ何か注文しろって?

この、商売上手め!

仕方がない。じゃあ、なにか適当に作って出してくれ。

良い魚が入ったから、それならどうかって?

良いねぇ、じゃあ、それでお願いするよ。

さて、追加で注文したんだから、早速聞いてくれるかな?

そう、あれは昨日のことだったんだか………。

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