押し付け
厄介ごとと言えばもう一つ……
「朝から災難な事だ」
前にも同じような事を言われたような気がする。しかし、こう言われるとジト目で睨め付けてしまう自分がもどかしい。
この態度が相手を楽しませているとわかっているのに……悔しい。
「そう睨まないでくれ。お詫びとして今日の昼休み、面白い話を聞かせてやる」
「面白い話……ですか?」
「ああ、初めて話したあの茂みで待っているといい」
そう言われて、無闇やたらに行動すると思っているのでしょうか。まったく……。
リリアはそう独り言ちながらも茂みに隠れる。どう取り繕うとも、ベルフリートが言う面白い話に興味がないはずがない。
待っていると、予想外の人物がやってくる。
どうしてアイン殿下が?
そう疑問に思うのと同時にベル様とやって来る。面白い話しって、2人の話? それともアイン殿下が偶然やって来ただけ?
リリアの頭の中が疑問でいっぱいになっている中、アインとベルフリートは示し合わしたかのように、向かい合って立ち止まる。
「呼び出しておいて遅れるなんて、随分といいご身分ですね」
「まあ、実際に偉いからな」
やはり、ベル様が私に聞かせたかったのはアイン殿下との話らしい。
「それで、要件は? 僕も忙しいのですが」
「忙しい? この国の王族は随分とお気楽だと思っていたが違うのか?」
「……兄だけを見て判断するおつもりですか?」
「いや、この国の王を見てのその判断だ」
アレだけならわかるけど、陛下を見て? 陛下に子育て以外で酷いところなんてあったかしら? ベル様もまさかその事で判断していませんでしょうし……
「父上の何を見て……!」
「今朝もまた失敗作が教室に来たぞ。リリアを貶しに……な。アレを放置しているだけで今の王は無能だとわかる」
「父上を知らないくせ「知らなくてもわかるさ」何をっ!」
「人柄など知らなくてもわかる。自分で自分の子供に手を下せないのだろう。だから全てをリリアに押し付けた…アレの世話も含めてな。それを甘いという以外になんて表現するんだ?」
押し付け……言われてみると確かに陛下はあまり干渉して来ませんでしたね。忙しいと思っていたのですが、また別の意味があったようです。
「そ、それは……だが!」
「父上だって悩んでいる。そんな話なら聞く必要はない。時間の無駄なだけだ。アレが無能な時点で王位を無くすべきだった。もしくはリリアが優秀でありアレが劣っている、またそのことに不満を抱いている。それがわかった時点で婚約を白紙にするべきだった。それを怠った時点で王も無能だ」
「確かに貴方が言った通りです。ですが、その事は父上もわかっています」
「ほう。面白い話だ。俺は王になりたいならリリアを逃すなと指示していると聞いているが?」
「そんな馬鹿なっ!」
「ちなみに、これは本人が言っていた事だからな。嘘ではあるまい。ちなみに、その場にはリリアの妹殿もいたようだぞ」
私も嘘だと思った。けどそこにティアが居たというのであれば話しが変わってくる。嘘だとわかればその場で何かしらの反応をしているはず。それがなかったという事は、ベル様の言っていることは本当の話。
「父上は本気で彼女に全てを押し付けるつもりなのですか……」
「それは知らないが、そうならないためにリリアの妹殿が動いているのだろう? 2人と関わりがある貴殿ならもっと具体的な話がわかるんじゃないのか?」
「!……失礼します!」
ベル様に誘導されるようにアイン殿下は慌てて駆けていく。
「話を聞いてどう感じた?」
「……別にどうもありませんわ。ただベル様が子供を虐めているようにしか……」
「ククク、子供か。それはいい事を聞いた」
悪い顔をしているベル様を見れば、どちらが子供かなんて言えないと思うのですけどね。
「どうして私に先ほどの話を聞かせたのですか?」
まるで陛下に不信感を持たせたいような……そんな内容の話をどうして私に……
「お前には自ら俺の国に来てほしいからな」
ベルフリートはそれ以上何も言わない。ただ見つめるようにリリアを見つめ……
昼休みをつげる鐘がなった。
「そ、そろそろ戻らないといけませんわね」
リリアはそれだけ言って、逃げるように教室に戻った。
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