間違い
Side:クリスティーナ
「アンが居ないわ」
最近、お姉様が居ない時には必ずと言っていいほどアンが部屋で私を待ち構えているもしくは何かを察して入ってくるはずはずなのに、今日は一向に現れる気配もない。
もしかして、今日はチートデイ? お姉様成分を十分吸ってもいい日ってこと?
それが本当なら嬉しいけど、そんなわけない事はわかっている。いつまでも此処にいる訳にはいかない。
お姉様が精一杯お洒落したドレス。それをやめさせて、制服にしてもらったのにどこか不安が拭えない。
名残惜しいけど、1度お姉様の部屋を出てアンを探そう。そう思って扉を開けるとその前にはアンが居た。
私を見たアンが唐突にしまったという顔をしている。いつもならすぐに私に小言を言うのに……
そう思い視線を下ろすとアンが何かを持っているのを後ろに隠している。
「アン。その手に持っているものは何?」
「……私は何も持っていませんが」
「どうしてそんな嘘をつくのよ。ほら、両手を前に出して」
そしてアンが持っていたのは制服。それも直前までお姉様が着ていたものです。
「どうしてアンがお姉様の制服を持っているの?」
「いい天気ですので洗濯をしようと」
「でも、今日はお姉様が制服を来て行ったよね」
「これは予備の方ですから」
「そう……。じゃああれは何かしら?」
私が指を指した先には、お姉様の予備の制服一式。それがしっかりと畳まれてベッドの上に置かれている。
「クリスティーナお嬢様のと誰か間違えたのでしょう」
「いいえ、違うわ。だって私の匂いじゃ……私のよりも大きかったもの」
危なかったわ……。もう少しで匂いを理由にするところだった。お姉様と身長差があってよかった。
なによ、そのジト目は本当にサイズは違うでしょうが!
「……また着たんですか」
アンからは呆れたような声が聞こえてくるけど、それが何? 悪いの?
「その何が悪いのと目で訴えかけるのやめて貰えますか。はぁ……」
アンはため息をついて、スタスタと部屋に入って来る。目的はに持っている制服をしまうため。
そんな事、させないんだから。
何としてでも吐かせてやる。そう思った時に予期せぬ来客が部屋に入ってくる。
「アン。リリとベルは来たかい?」
「はい。おっしゃっていた通り手を繋いで来店されました」
「手を繋いで!」
そんなっ! あの奥手なお姉様に手を繋がせるなんて……あの皇子はそこまでやり手ってことですか!? それも、今日ほとんど初対面でしょ? お姉様もどうしちゃったの!?
「……2人の様子は?」
「お嬢様は少しわかり辛いです。知っている同世代の男がアレだけなので、ベルフリード皇太子殿下の行動の節々に魅力を感じているようです。ただ……」
「ただ?」
「おそらくですが、ベルフリード皇太子殿下はお嬢様を意識したように思えました」
「そんなっ!」
そんなっ! そんな事をすれば、今でさえ距離が少し空いているアインのことなんて忘れてしまう。なんとかしないと……でも!
「レオ兄! これは契約違反じゃないですか!」
「契約って……まあどちらにしても僕はちゃんと約束を守っているよ」
「どこがですか!」
「あの時も言っただろう? 僕はティアの作戦が全部失敗してから行動するって」
「だからこんか…い……」
僕は……今回、お姉様をデートに誘ったのはベルフリード皇太子殿下であり、レオ兄ではない。違う! レオ兄は既に彼にお姉様の事を話していて、それに興味を持ったからこっちに来たんだ。じゃあ、この僕はの意味って……
「……レオ兄は動かないけれど、ベルフリードは動く」
「正解。僕は直接動くことはしないさ。今回、ベルがリリのドレスにしろ、ティアの制服にしろ服屋に行くことは予想できた。急に皇族と公爵家が来ても店が困るだろう? だからアンに行ってもらったというわけさ」
間違えてた。前提から違ったんだ。お姉様が何もしない限り、ベルフリードは何もしてこないと勝手に思ってた。
「……少し出かけて来ます」
「ドルン……ではないね。ラティス家かな? 気をつけて行っておいで」
すべてお見通しですか。まぁいいです。レオ兄が手を出さないなら最悪の状況ではない、と思う。とりあえず今はこれからの事を考えないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます