問い詰め
あの後、ベルフリード皇太子殿下と別れる際にアレとティアのことは内緒にしてもらうように頼みました。
隣国の皇太子に噂を立てられると、否定したりすることが難しくなりますし……、下手をすればすぐに国際問題になります。しかも、非がこちらにしかないので武が悪すぎます。
そう思っての行動だったでしたが、彼はすぐに受け入れてくれました。その代わり今度の休みの日に一緒に出かけるという条件をつけて。
少し悩みましたが、その提案に了承しました。ティアの変な噂を立てられるよりも、私の方が『第一王子の婚約者として、皇太子殿下を案内した。』そんな風になにかと言い訳ができるからです。
それより問題なのが――
「それで、今日のことはどういう事なのか、今日という今日はしっかりと説明してもらいますからね」
「…………」
正座をさせ問い詰めるけれど、ティアは一向に話すつもりはないらしい。
そうだと思っていましたし、いつもの私ならここで諦める所でしょう。ですが今日は違います。
「ティア、ちゃんと説明なさい」
「ぅ……」
こうなった時の為に、今日はお母様も一緒にいます。さあ、これで隠し事はできません。
「「ティア?」」
「……アレから……自主的に婚約破棄と言わせようと……」
ここまでしてようやく、ポツリポツリと話し始めた。
「それで、どうしてあんな演技をしてまで?」
「だって……アレから言わせようとしたら、私がアレに気があると思わせないといけないと思って……」
「気があると思わせた後がどうなるかわかってるの?」
「後は、その……ポイって」
「「ポイっ…… 」」
両手で物を後ろに放り投げるような 動作をするティアに、私もお母様も言葉を詰まらせる。考えが甘いというか、そう簡単に行くものではないでしょうに。
「その『ポイって』いうのが、仕草通り捨てるということなら、今すぐにでも私がしているわ。けれど、相手は王族。そう簡単にそれはできないのよ」
「わかってる。だから、お姉様を捨てさせたと思った後に、あなたがやったことはこういう事なんですよって事を叩きつけて、シシリーに丸投げしようと思ってる……ます」
最後はラティス様に丸投げということね。あの方ならアレの扱いは上手そうだし、確かになんとかなるかもしれないけれど……でも……
「そのシシリーという子は押し付けられて困らないという確証はあるの? あまり無関係な方を巻き込むのは賛同できないわ」
ラティス様の事を知らないお母様がティアが押しつけると言ったことに怪訝な顔をして問いかける。
「シシリー……シシリア・ラティスですが、アレが好きだと公言するモノ好きです」
「……」
お母様がそれは本当なのか、私に目で確認してくる。私は素直に頷いた。
「はぁ。それなら、ラティス侯爵夫人にも確認しておきましょう。婚約は子供たちが主体になるべきだと私は思っていますが、他所の家は分かりませんからね」
その後お母様がボソリと「それにアレが家に来るとなると……」と言っているのが聞こえて……いえ、何も聞こえていません。
何も言ってないのに鋭い視線がお母様から浴びせられる。
「とりあえず、下手に始めてしまった以上、今更取りやめてしまうと怪しまれる、もしくはリリに今以上の罵詈雑言が浴びせられるでしょう。それはティアもよしとしないでしょう?」
「いやです!」
「それなら頻度は少なく、そうね……アイン殿下の近くにいるか、もしくは……いえ、アイン殿下の側にいるようにしましょう」
お母様がためらったのはおそらく、アイリス第一皇女殿下の側。だけど、アレが皇女殿下の存在を知っている保証はありません。むしろ知らないと思っていた方が現実的です。
そんなアレを皇女殿下に近づけるとアレ自身が終わるのはいいのですが、国に問題が積み重なってしまいます。
とりあえず、今はいい感じでアレとの距離を開けるのが最適ですね。
こうして、第一回目のクリスティーナの問い詰めは終わった。
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