嫌われたくない
Side:クリスティーナ
リリアが王族との婚約がきまってから、クリスティーナは独り言が増えて言った。主に自分好きな人を奪っていった男に対して。
「アイツ……お姉様に好き放題言ってイイ気になっているんだろうな〜、ホントムカつく」
人を傷つけていい気になるなんて、しかも好きな相手の姉を。何も考えていないバカみたいなものじゃない。
お姉様も恋愛感情を抱いていないからよかった。もしあんな事をされてもあの人のことが好きなの! なんて言われたらどうしていいのかわからなくて、想像しただけで狂いそうになる。
けれど1番の問題は私がお姉様に避けられるようになってしまったこと。アイツが私のことを好きだと馬鹿みたいにお姉様に直接言うせいで私までお姉様に距離を置かれてしまった。
お姉様も内心では否定しているけど、私に隠してるだけかもと少し疑われたままなのが悲しい。
――なんとかしてお姉様と仲直りしないと……でもどうすれば……?
周りの本音の感情を聞いて、嫌な人は避けたり悪意を持っている人はお父様に解雇にしてもらったりしていた。けれど、自分から立ち向かうことをしてこなかったので、今の状況を打破できる方法が分からない。
ただひたすらにどうすればお姉様と以前のように仲良くできるか、そんな事を考えながら目的もなく屋敷を彷徨いていると、無意識にお姉様の部屋の前で足が止まる。
今会っても仕方がない。そう思い来た道を引き返そうとすると、部屋の中からくぐもった、けれど確かにお姉様が泣いている声が聞こえて来た。
居ても立っても居られなくなり、ノックもせずに部屋に入った。そこには昼にも関わらず部屋を真っ暗にしたままベッドの上で涙を流しているお姉様がいた。
「お姉様、隣いいですか……?」
「…………」
「座りますね」
返事がなかったけれど、お姉様を1人にしてはいけない。確かにそう思った。
ベッドに腰掛けるまではいいが、何を話せばいいのかわからない。とりあえず何かしなければならないと思ってした行動はお姉様の頭を撫でる事だった。
撫でていてふと思った事は自分の選択が間違えたという事だった。思いついたのは自分がされて嬉しい事であり、不本意だけど私のせいでお姉様が苦しんでるのに、苦しめている相手が頭を撫でるって私って馬鹿なの!?
自分の短絡的な行動に公開するも、嫌がれる素振りもないので止めるにも止められず、不謹慎だがこの時間を楽しんでいる自分がいた。
どれくらいの時間が経ったのか、飽きることなくただ黙って撫で続けていると、ずっと黙っていたお姉様が口を開いた。
「……ティア、ごめんね」
「? どうしてお姉様が謝るのですか?」
「私……ティアに何もされていないのに、ティアを避けようとしてた。私の方が姉なのに、子供っぽいよね」
「そんな事ありません! お姉様は泣くほど1人で苦しんでいたではありませんか! 力になれるか分かりませんが私にも話してください!」
それでも思い悩むリリアをじっと見つめる。絶対に話してもらう。そんなクリスティーナの気持ちが伝わったのか、リリアはゆっくりと口を開いた。
「……わかった。あのね――」
お姉様が胸の内を話してくれた事を嬉しく思っていた。けれど次第に自分の顔が無表情になっているのがわかる。
今の感情は、あの男絶対許さないという気持ちと、罪悪感だった。
「……私が居なければ」
あの時、王子がアポイントもなしに来たことで屋敷中が慌てていた。なぜかその時の私は自分のできることをしようと思って王子と対話した。それが間違いだった。
「違うの、ティアが悪いんじゃなくて……」
「わたじが……あのどき、たいおうしなければ……お姉ざまは……」
苦しむことも、謂れもないことを言われることもなかったのに……すべて、すべてが私のせいで……
「ティア! あなたが悪い事なんてないの。だから泣き止んで、ねっ?」
泣くつもりなんて無かったのに……。今や私の方がお姉様に慰めてもらっている。
――やっぱり、私……お姉様が好き。
「私……お姉様に嫌われたくない」
「! ティアごめん……、ごめんね」
結局、私もお姉様も涙が止まる事なく、異変を感じたお母様が部屋に来るまでこの時間は続いた。
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