1解決編(縛り解除)

※作品自体には来てませんが、ツイッタで解決編希望とあったので、載せときます。

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 音を立てて荒れ狂う風が、夜の闇を重たくする。

 夕立で濡れた体が震えてしまう。だが今はそれよりも、胸の痛みの方がよほど耐え難い。


「もうこれっきりだ、二度と期待なんかするもんか。ガキじゃねぇんだからよ!」


 一人きりでただずむ少年、大智は、今にも暗闇に溶け込みそうだった。惨めな現状も手伝って、自分がいかにちっぽけで些細な存在かを、思い知らされてしまう。

 淡い恋心は儚くも散った。長年連れ添った幼馴染に抱いた想い、それが通じる事はなかったのだ。渡という名のクラスメートが、以前から怪しいと睨んではいたものの、その不安は的中。ほんの半日前、彼は目撃したのだ。


 仲睦まじい様子を隠しもせず、共に歩く姿を。


 それから大智は茫然自失となり、ひたすらに彷徨い歩いた。気づけば門限を大きく過ぎた夜更け。それでも家族に告げる気にはならず、足も明後日の方に向いて止まらない。



「どうして恋なんか……もう懲り懲りだ!」



 夜空に向かって叫ぶ。酷く滑稽だと分かっていても、抑えられなかった。まるで、見知らぬ誰かが描いた安直なシナリオのようで、ありきたりだった。それでも張り裂けそうな心は叫べ叫べと、大智に迫る。



「この先、絶対に恋なんかしないぞ。誰一人として好きになったりするもんか!」



 その時だ。暗闇を切り裂いて、月が顔を覗かせた。微かに輝く様は、どこか慈愛に満ちており、地上に安らぎを与えるかのようだった。しかし傷心に苦しむ少年には届かない。暗雲が裂け目から、月明かりが差し込んだ事に気付けていないのだ。


 それでも月は輝き続ける。たとえ誰にも気付かれないとしても、感謝などされなくとも、万人の道を照らすのだ。


 幼い心には辛いでしょう、それでも愛する気持ちを忘れないで。俯かずに前を向いて。


 そう言いたげな月が、気高く、孤独に輝いた。



ー完ー

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