第5話
受付に戻ると寧々子さんがお帰りなさいですにゃ! と出迎えてくれたが。
「あれ? ヒバナは?」
妹のヒバナが居なかった。
「ヒバナちゃんにゃら、コロシアム広場の方に行きましたにゃ~。止めたのですが行ってしまわれまして~・・・・・・」
寧々子さんが申し訳なさそうにヒバナの居場所を教えてくれた。受付の仕事を放り出すわけにはいかないからね、しょうがない。
そう言えば、コンタクトルームから出たときに女の子の声援が聞こえたな。コロシアム広場から?
ヒバナを探しに行くから、声援の理由が解るかな。
寧々子さんからメイトホルダーを受け取って腰辺りに付けて、コロシアム広場へと向かった。
――コロシアム広場。
「む~・・・・・・」
「ヒバナ!」
「あっ! お姉ちゃん!」
大勢の女の子の前をキョロキョロしているヒバナを見つけ、声をかけるとヒバナはしまったという顔をした。
寧々子さんの制止を聞かずにコロシアム広場に向かったことを怒られると思っているのだろうな~。
「寧々子さんから聞いたよ。大人しく待っててって言ったでしょ?」
「ごめんなさい。だって・・・・・・」
「あの天上カケルと一年近くソウルメイトを離れていた雪野マフユが戦うと聞いたらソウルメイト好きなら飛んできて当たり前ですよ!」
ヒバナの話を遮るようにドヤ顔で話に割り込んできたのは眼鏡を頭にかけカメラを首からぶら下げている黒髪の少女、アニメ版ソウルメイトのヒバナと同じオリジナルキャラクターである
桝ココミを見た瞬間、アタシの脳裏にある場面が走馬灯にように流れる。
確か、漫画、アニメ版一話で主人公のホノオは世界チャンピオンの天上カケルが近所のロボセンターに来ていることを知って無謀にも挑戦する為にやってくる。だが、天上カケルの相手は主人公の永遠のライバルである雪野マフユに決まっていて・・・・・・。
そこから、雪野マフユと喧嘩してどっちが天上カケルと戦うかバトルすることになる。
熱心に見ていたけど、もうアニメが終わって記憶が朧気だから曖昧だけど、多分そうだったはず。
好きだったのに朧気なの? と思った人~。好きだけど記憶が曖昧になるのはしょうがないの!! 好きな話は覚えてるけどね!!
この世を去る前、ソウルメイト10周年記念で全話収録のDVDが出る予定だったのを思い出した。せめて、買ってから去りたかったよ・・・・・・。
「あの~、どうしました?」
怪訝そうに桝ココミが話しかけてきた。
いかんいかん、意識が何処かにトリップしていたよ。
「ごめんなさい! ちょっとボ~としちゃって! ところで貴方は? アタシは厚木ホノオ、最近、此処に引っ越してきたの」
「私は妹の厚木ヒバナです!」
不審がられないように自己紹介も兼ねて一気に喋る。後に続いて自己紹介するヒバナは可愛い。
「なるほど、アタクシのバトラー記録帳に載っていない顔だと思いましたが越してきたんですね。
アタクシは熱きソウルバトラーを追い続けるソウルメイト専門記者をしている桝ココミです! 以後、お見知りおきを~」
はい、貴方の事は存じ上げておりますと思っていたらスッと手を差し出されたのでアタシも手を差し出し握手をする。
初対面の人と握手なんてしたことないから緊張する。
「厚木さんはどうして此処に? ソウルメイト関係ですか?」
「はい。母さんから中学校の入学祝いにソウルメイトをプレゼントされて」
「ほうほう、登録するために此処へ来たという事ですね!」
「ま、まあ、そういう事です」
アニメで見る度に思っていたけど桝ココミって常にテンションが高い。
熱血系で細かいことは気にしない主人公の厚木ホノオなら気にしないと思うけど、陰キャのアタシには疲れるタイプ。
「登録しに来た日に世界チャンピオンの天上カケルと光速のプリンスこと雪野マフユとのバトルを見られるなんて貴方はとても幸運な人ですね! どうです、アタクシ、見晴らしの良い場所を知っています。此処で会ったのも何かの縁、ご一緒に観戦しませんか?」
桝ココミから観戦のお誘いを受けた。
ど、どうしよう~。
「お姉ちゃん・・・・・・」
考えてたらヒバナが服をクイクイと引っ張って観戦したいアピール!!!!!!
こ、これは断れない!!!!!!
此処で断ったら嫌われる!!!!!! 絶対に!!!!!!
「そうですね! 一緒に観戦しましょう」
可愛い妹のお願いは断れません。
公式イケメンの雪野マフユと天上カケルを生で見たいという欲もあるのは隠しておこう。
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