君との時は永遠に

各務あやめ

第1話 初恋

 夕暮れ時。私はひとり、図書室にいた。

 何気なく手に取った一冊の本。つまらなかったら途中でやめよう。そう思いながら、大して期待せず読み始めたのに、その物語は、私をひどく動揺させ、ぐらんぐらんと心を大きく揺さぶった。

 恋愛小説だった。

 主人公の16歳の少女、エリカは、ある日街ですれちがった少年、リュウに一目ぼれをする。彼は長身で、笑顔がさわやかな好青年。エリカにとって、それは初恋だった。 

 エリカは毎日、リュウのことを想い続けた。次第にふたりは親しくなり、ついにエリカはリュウに言う。

「リュウ。私、リュウのことが好きなの」

 顔を真っ赤にして、エリカは必死に言う。リュウは少し黙ってから言った。

「エリカ。僕はね―」


「誰かいますかー!?」

 その声に、私は、はっと本から顔をあげた。

「誰か、いたら返事をしてくださーい!」

「い、います!すいません!」

 慌てて本を閉じ、扉を開いた。

「すいません、内側から鍵をかけていたので―」

 早口で弁明し、相手の顔を見たその時。

 息が止まった。

 扉を開けた先、そこにいたのは―。

「ありがとう。職員室に行っても鍵がなかったから、困っていたんだよ。鍵は君が持ってたんだね」

 何も言えずにいる私には気にも留めずに、本棚へと歩いて行ってしまう。

 速水瞬。彼は、私の片思いの相手だった。


 背丈の高い、すらっとしたスタイル。

 さらさらと歩く都度に揺れる髪。

 すっと通った、高い鼻。

 大好きで。ずっと、大好きだった。


 速水先輩。


 大好き。

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