最後にひと華

シヨゥ

第1話

 魔法は体力だ。なんて言われるようにこの世界の魔法はとにかく代謝を促す。摂理を捻じ曲げる力が強ければ強いほど消耗する。例えば人を生き返らせようと思ったらその代償に過労死するといった具合だ。

 そんなこんなで魔法の使用には免許がいる。無免許で使用したら独房にぶち込まれる。そんな刑罰が伴うことで使用をためらわせようという国の計らいだ。たしかにやたらめったら使用して自分も周りも無茶苦茶にされたらたまったもんじゃない。

 とはいえ使う奴は使う。特に自殺志願者。あいつらはとにかく最期にでかいことを成し遂げようとして無茶苦茶な使い方をする。

「これはまた、立派なのをおっ立てたな」

 今日は今日で街のど真ん中におおよそ30階建ての塔が現れた。術者はと言うと泡を吹いて倒れている。脈はあるのでしばらく昏倒してから起き上がるとは思う。

「どうします?」

「使い道もないし壊すしかないだろう」

「また大工連中が儲かりますね」

「仕方がない」

 自殺をしたら大工が儲かる。それぐらい各地でこういった建物が見つかる。

「神様もなんで万民に魔法を使えるようにしたんだか」

 今日もあと2件検分しなければならない。酷い世の中だ。

「自殺対策と魔法の無断使用の罰則強化。ここらを上申しておかないとな」

 そんなことを考えつつ次の現場に向かうのだった。

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