ハト時計の仕組み

夏川しおめ

第1話

 ハト時計を買った。

 九時、十二時、十五時にはハトの人形が飛び出てきて、「パッポー、パッポー」と鳴く。

 しばらくの間、そのハトは元気に時報をやってくれていた。

 しかし、ある日突然ハトが出てこなくなった。

「ハトさーんどうしたのー? 困るよー」

 とふざけて時計に声をかけると、

「すみません‼ 寝坊しました‼ すぐにハト出しますね」

 と中から声が返ってきた。

 中に何かいる⁉

 続けて中から聞こえてきたのはこんな会話だった。

「おい! お前なんで起こしてくれなかったんだよ!」

「すまん、俺も寝てた」

「なんだよもー!」

「お前らなにやってんだ!! 時計は信用を失ったらおしまいだってあれほど言っただろうが!!」

「「すみません!」」

「もういい、お前ら二人ともクビだ!」

「そんな……」

「お前らの代わりなんかいくらでもいるんだよ!」

 いくらでもいるの? その時計の中に何がそんなにいるの?

 怖くなった俺はその時計を手放すことに決めた。

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ハト時計の仕組み 夏川しおめ @colokke

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