ヴァスドル・ウィッチ1 始まりの予言
名瀬きわの
プロローグ
「聖者は全員揃ったか。では、予言を始める。」
あたり一面大理石で覆われた神秘的な王室で、はっきりと響く声は、そう言った。
予言者は、羽織っていたベールの胸元から、一つの水晶を取り出して、その場の人々には理解することのできない呪文で、予言を始めた。
「時期王になるべき者は…」
その場にいる全ての者が、息を呑んだ。すると予言者は、驚きの表情をした後、恐怖に怯えるように顔を歪ませた。
「《時期王候補は3人の娘。そのうちの1人が王になるだろう。しかし…》」
「《しかし…》何なのだ!」
先程の響く声が、先を急かした。
しばらく沈黙が続いた後、予言者は決心し、恐る恐る口を開いた。
「《“悪”が蘇り、世界を破滅に導くだろう。》」
その場にいた全ての者が、一斉に騒ぎ出した。
「“悪”が復活するだと!そんなはずは…」
ひとりの聖者は、険しい顔でそう呟いた。それ以外の者も「信じられない」と言う表情を浮かべた。
「鎮まれ。」
王のひと声により、あたりは一瞬で静寂となった。
「私の任期はあと5年ほどだ。それまでに、時期王候補となる娘たちを、何としてでも一人前の魔法使いにし、王継承をしなければならない。そして、蘇る“悪”に対抗させねばならないというわけだ。」
王のはっきりした発音を、誰もが聞き取り頷いた。それを確認したあと、王は再び口を開いた。
「ところでその娘らは誰なのだ?」
予言者は王の前に立ち、水晶を見せた。
「この者たちです。」
ひとりひとりの顔やプロフィールを確認すると、王はひとりの少女に目が止まった。
「この娘は…」
「いかが致しましょう。予言とはいえ、このようなことがあり得るのでしょうか。」
王は悩ましそうに顔をしかめたが、再び予言者と目を合わせ、はっきりとした声で答えた。
「予言に例外はない。この者も候補として、魔法使いに育てるのだ。早速、この3人にこのことを伝えるように。」
命令が下り、その場にいた2人の聖者が、王室を出た。
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