初恋の人

簪ぴあの

第1話

 あの時、おばちゃんはお下げ髪の女学生にもどっていた……


 確か、おじいちゃんが亡くなって、一周忌の法事の最中だった。お坊さんのお経が終わり、墓参りをすませたあと、おばあちゃんと親戚のみんなで食事をしていた時だ。近所の大村さんのおばあちゃんが知らせに来てくれた。

「上村さん、知ってはるか。となりの小学校で、元軍人さんらが同窓会をしてはるんや。あんたのとこで、世話してはった広瀬さん、来てはる。」


 おばあちゃんから聞いたことがあった。戦争中はとなりの小学校では軍事教練が行われていた。近所の家で、教官の軍人さんのお世話をするようにお達しがあって、おばあちゃんの家でも一人の軍人さんのお世話をすることになった。それが広瀬さんだった。

 戦争が終わってから広瀬さんに会ってない。おじいちゃんが亡くなったのは残念だけど、一周忌のこの日に広瀬さんが同窓会で小学校に来るなんて、おじいちゃんがひきあわせてくれるんだ。

 おじいちゃんが亡くなってから元気がなかったおばあちゃんは、久しぶりに明るい顔になった。小学校はおばあちゃんの家のすぐとなりだけれど、おばあちゃんの足ではなかなかたどり着けない。私とお母さんがおばあちゃんに付き添って、やっとの思いで小学校につくと、残念ながら同窓会は終わっていて、皆さん帰ったということだった。

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