三ツ谷高校七不思議

万倉シュウ

三ツ谷高校怪奇譚

 学校の怪談をご存知だろうか。その名のとおり、学校にまつわる怪談話のことだ。学校ごとに脈々と口承されており、子供が面白おかしく創り上げた架空のお話であることは暗黙の了解であるものの、出所不明であるがゆえに本当は事実なのではないかと、まことしやかにささやかれている。

 三ツ谷高等学校にも怪談話というものがある。通称『三ツ谷高校七不思議』。七不思議とは名ばかりに半分以上は人に依存する謎であり、怪談話ですらないことから、ただのゴシップ、世間話の一種として話の種にされることが多い。

 その一。一年生の学年主任教師は決して笑わない。人間なのだから笑うに決まっているのだけれど、誰もその笑顔を見たことがないという。そもそも写真が苦手だという学年主任はカメラの前に姿を現さない。証拠を残さない、といったほうが適切だろうか。

 しかし、学年主任も教師の一人。顧問を務める社会奉仕部の紹介記事のため、写真部の要請に従い、部員との集合写真に身を収めた。

 けれど、唯一撮った写真は紛失した。二度目の撮影依頼は、業務都合により断られ、結果的に社会奉仕部は部員二名で再撮影に臨むことになった。

 写真撮影を終え、社会奉仕部部長である遠野さんは、あごに手を添え、小首を傾げてみせた。

越渡こえど君、どういうことだろう?」

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