社会奉仕部の存続
万倉シュウ
正体不明の勧誘ポスター
卒業。それは学生ならば誰もが通過する祝いの門であり、未来への出発点だ。先の見えない道ながらも、卒業生は夢に向かい羽ばたいてゆく。そして、在校生は大人びた背中を見送り、また一段、未知の階段を上る。
部活動の場合、文化部であれば文化祭、運動部であれば夏の大会を最後に引退する場合が多いだろう。受験勉強に専念するため、夏休みよりも前に引退する部活動もある。
こと社会奉仕部に関して言えば、後者だった。主な活動は月に一度のボランティア活動だけであり、部員が三年生のみだったため、引退を早める決断に至ったという。
三年生が引退すれば部員はいなくなり、部活は自然と消滅する。ただし、三年生が在籍している間は、書類上社会奉仕部は存続する。次年度、新入部員が入らなければ、正式に廃部となる。
さて、ここで本題。三ツ谷高等学校の昇降口には掲示板があり、進路に関するパンフレットやオープンキャンパスの案内、そして新聞部による校内新聞が掲載されている。普段は誰もが見向きもせず通過する背景でしかないけれど、四月の間だけは皆の注目を浴びる人気者となる。理由は明快、部活動の勧誘ポスターが
【社会奉仕部 部員募集中】
名刺サイズの用紙に油性ペンで手書きされている。
四月現在、三ツ谷高等学校に社会奉仕部員はゼロだ。しかし、今まさに社会奉仕部の勧誘カードが掲示板に貼られている。勧誘系の掲示物は四月に入ってから掲載する決まりになっており、違反物は美化委員会による月イチの見回りで撤去される。先月も例に漏れず、卒業式の翌日に見回りが行われたという。
ならば、この勧誘カードは一体誰が、何の目的で貼ったものなのだろうか。疑問に思わなくはないけれど、気まぐれや
けれど、話はそう単純ではない。きっかけは、掲示板の前で遠野さんが彫りの深い顔をこちらへ向け、小首を傾げてみせたことから始まる。
「
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