第75話
これからどうするのか、この場所から一刻も早く逃げるという意見で一致した。僕の中にはある殺意は思いであって、実際にあいつらを殺せるかどうかとなると躊躇してしまった時にマナチたちを危険な目に合わせてしまう。ハルミンならもしかしたら躊躇しないかもしれないと思った、けれど、そうだとしても人の形をしている人じゃないあいつらを殺させたくないと思った。
「どこへ逃げよう……」
僕はふとつぶやき、この施設の間取り、出た後の向かう先など決めてなかった。
「この街の外へ逃げるしかない、どこか遠くへ――」
爆発音が響き、部屋の電灯がチカッチカッと点滅した。地面も揺れていて、建物全体が揺れているような感じがした。
「生存確率を見ながら出よう、襲ってきたら、僕がなんとかする」
僕は強がってたと思う。自然に言葉として口から出ていたけれど、わからなかった。
僕たちは互いに頷き、銃を召喚し部屋から出た。また爆発が起こり、地面が揺れる。この場所も長くは持たないのだろうと思った。沈下した建物の事を思い出し、この施設がそうならない事を祈りながら、出口を探した。
「急げ! あっちだ!! 早くしろ!!」
どこからか声がし、その声が怒号で苛立っているのがわかった。僕たちは声がする方から見えないように近くの部屋に隠れることにした。幸いにも生存確率は隠れた方がよかったのか、変動しなかった。隠れていると複数人の足音がし、どこかに向かっていった。
扉を開けて外に出ようとする際に、生存確率が変動しないことを確かめ、僕たちは出入口を探し続けた。
定期的に爆発が起きる中で、生存確率が下がらない方へと移動していくと誰にも見つからないまま、兵器が大量に置いてある倉庫に行きついた。そこにはがっしりとした車やヘリコプターなど様々なものが置いてあった。僕は周りをみながら、どこか身を隠せる場所はないか探した。
この大きな倉庫に入る前までは生存確率が下がらなかったが、入った後にじょじょに1%ずつ下がってきていたからだ。
「どこかに隠れよう、何か嫌な予感がする」
ちょうど隠れやすそうな場所があり、僕たちはそこで身を寄せ合うように隠れると生存確率が元の50%に戻った。近くにいくつも箱があり、中身は何か機械が入っていた。ツバサとジュリがそれらに触れているのを見て、何やってるんだと思った。触れた後に、二人して頷き、すぐに僕たちだけ聞こえるように小声でしゃべりだした。
「センサー機器とタレットドローンのアビリティ・スキルが解放されました」
「そして、偵察のロックも解除されました」
息が合ったように二人は言った。
「偵察って?」
僕が聞くとジュリが詳しいのか、説明してくれた。
「簡単に言うとこのドローンが出口までのルートを見つけてくれる、というスキルです。どうやら自動でやってくれるので歩き回らなくても大丈夫っぽいです」
ジュリの説明が終わると彼女はドローンを召喚した。大きさは小さい虫サイズだった。
「こんな虫みたいなのが?」
「何体か召喚して、探させてみます」
そういってジュリは試しにやってみせてくれた。
これで出口までがわかれば、ここから脱出できると思った。だけど、僕は一つ忘れていた事があった。
突如倉庫の扉が大きな音を立てて、空いた。思わず誰が入ってきたのか見てしまいたい思いがこみ上げたが、僕たちは隠れ、息をひそめた。
「クリア! 例の二人組はまだここに上げってきてません」
「よし、ここで迎え撃つ! 絶対ぶっ殺すぞ。もし捕獲できるなら、継続的に電気ショック与えるか、薬で廃人にさせておかないとな」
「優先は殺傷で問題ないですか、隊長」
「ああ、殺せ」
声からしてシュシャとその隊員たちだった。僕たちは身をひそめながら互いにここで見つかったらヤバイと思った。相手がどれくらい人数がいるのかわからないが、僕は勝てないと思ったからだ。気おくれてしまっていた。ちょっと前までは強気だったが、相手が人の形をしていて、言葉が通じるというだけで怖さが湧き出てきたのだ。
――ドガァァァァァァン!!!!
「キャッ」
突如、爆発が倉庫の奥の方からあり、その際にマナチが声を出してしまった
「散会しつつ発砲! 身体の一部分でも出たら撃て!」
すぐさま、銃撃が僕たちが隠れている場所めがけて、銃撃が襲った。銃弾が壁に当たる音や身を隠していた箱などに当たる音と発砲音が重なり、次第に回り込まれてきていると感じた。
「ふっーふっー!」
ハルミンは目を血走らせていた、両手でうまく銃だけを出し、周りに発砲をした。
「気をつけろ、でたらめで当たらないだろうが弾は無限だ!」
シュシャが隊員に言っている声が聞こえ、僕はハルミンが僕たちを守ろうとしている状況の中で、自分も戦う事を決意し、同じように真似をした。そしたら、マナチ、ツバサ、ジュリも真似をし、銃を乱射していった。
それがどのくらい続いたのか、膠着状態になっていた。
「こ、このままじゃ多分危ないと思います。彼らは爆弾を投げてくる可能性があります」
ジュリが何か焦っているように言った。
「生存確率か」
「はい、下がってきてます」
僕の生存確率は変動していなかった、つまり、ジュリは知っているからこそ、これから起きる事がわかっているから変動したのだ。
「どうする?」
「か、考えがあります。ハルミン、二人の銃を使わせてください。応戦する時はいつものマシンガンで応戦してください。今なら片手で扱えますよね?」
ジュリがハルミンに言うと、彼女は頷き、ムッツーとタッツーが使っていた銃を消し、彼女が持つ本来の銃を召喚した。義腕と義手でその銃を軽々持ち、周りに乱射していった。反動が他の銃と比べてあるため、持っている腕が撃つ度に揺れていた。
「な、長くはちょっとこれは、し、しんどい、かも」
「大丈夫です、出来ました。あとはこの子たちにがんばってもらいます。行って! 行動不能にしてきてください!」
子ども一人くらいの大きさの六足の蜘蛛のような機械が二体現れた。足にタイヤがついていて、胴体にムッツーの銃、タッツーの銃がそれぞれセットされていた。ジュリが命令を出すと、僕たちが隠れていた場所からさっそうと飛び出していき、発砲音の後に悲鳴が上がっていった。
銃撃は止み、痛みを訴えかける声と恨みがましい声が聞こえてきた。
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