第74話

 僕たちは気を取り直して、EXP部隊所属のシュバルツ・シャッテンの行動記録を見る事にした。記録された映像はツバサが調べてくれたおかげで見たい部分を抑えてくれていた。

 

「私は先にいくつか見たので、言いますがグロいですし、かなり酷かったです」

「わかった、ありがとう」

 

 僕が頷くとツバサが再生してくれた。

 

 シュバルツ・シャッテン、シュシャがやったことは集団毒殺だけではなく、数人で固まっている人たちを寝た後に殺害し、持ち物を確かめたりしていた。そのあと、ネズミたちが瓦礫の隙間から出てきて、殺した人たちを貪り食っていた。血の一滴すら残さないようにネズミたちは、血すらも舐めつくしていっていた。

 

 そのあと、大きな集団を見つけて観察し、闇夜に紛れて毒を混入させていたりした。こいつが集団毒殺をしている張本人だったのが確信した。

 

 毒で苦しんでいるのを遠くから見ていた。一人、毒が効かない存在を見つけ捕縛しようとした所、失敗していた。何者から瓦礫の破片を投げられたのか、よろけていた。

 彼がその方向を見ると見知らぬ、僕たちと同じくらいの女性が必死になって瓦礫を投げていた。その形相は鬼気迫るもので、シュシャは舌打ちをし、その場から離れていった。

 数時間後に周りを気を付けながら、毒殺した場所に戻るとネズミの死体を確認して舌打ちをしていた。ネズミに死体を回収させようとしたが、死体をかじるとネズミも苦しみながら死亡してしまい失敗したのだろう。

 

 一人死ななかった人がいた事を確かめるように、毒殺した人たちの人数を数え、アーネルトに毒耐性がある個体のため、ゾンビにならない抗体を持っている可能性があると報告をしていた。二人のやり取りから接触方法とサンプルの確保など、命令され、シュシャはその命令を実行すると返していた。

 

 特に躊躇するような素振りもなく、僕たちが出会ったシュシャとは別人に感じた。改めて、最初から騙されていたのだと痛感し、悔しさが湧き出てきた。

 

 今度は別の団体を発見し、接触していた。最初に会った時のような社交性がある雰囲気を出し、会話をしていた。そこに居たのは、また僕たちと同じような年齢の人たちだった。皆、不安な表情の中打ち解けあっていた。

 シュシャと会話していく中で、その人たちもアーミーナイフをポケットから出し、説明をしていた。シュシャ自身、それが何か詳しく聞いて驚愕していた。ステータスウィンドウやアビリティ・スキルについては関心を持っており、いろいろな事を聞いていた。

 

 その夜、彼らが寝静まった後にナイフで一人ずつ殺していった。

 

 全員殺し終えるとアーネルトに危険性を報告していた。そのあと、アーネルトから彼らを誘導して街へ向かわせろと言われていた。方法について聞くと、その場所を放棄させてもらわないといけないから、ネズミと爆弾を使って追い立てればいいと言われ、シュシャは実行に移したのだった。

 

 シュシャは爆弾を瓦礫の山にセットし、街とは反対側に行きそうな団体は面倒なのか殺していっていた。殺した後にネズミを呼び、遺伝子サンプルの収集している時に彼はまた攻撃を受けた。彼は即座に攻撃した方向を確かめるように身を隠しながら動いていた。

 

 そこでツバサが動画をいったん止めてくれた。

 

 映っていたのは毒耐性があって生き延びた人と彼に瓦礫を投げつけていた人だった。

 

「もしかして、この二人はあの時から戦っていたのか」

「多分、そうだと思います。動画の続きを再生しますね」

 

 二人のうち一人は何か叫びながら銃を召喚し攻撃してこようとしたが、彼が煙幕を二人に投げ逃走した。叫び声がする中で、その場から逃げて爆弾を起動させ、爆発させた。シュシャはアーミーナイフの危険性を知っているため、自身の生存を優先するため仕掛けていた爆弾を爆発させていった。

 

 彼がタブレットで爆弾の起爆を順次させていく中で、うまく起動しないものがあるのか、何度もタブレットをタップしては、爆弾が仕掛けられている方向を確かめていた。タブレットがうまく作動しないのか、爆弾が勝手に爆発するようになり、彼は戸惑っていた。

 彼の足元にネズミたちが大量に走り回り、みな同じ方向に走っていくのをみて、どこから走ってきているのか彼は瓦礫の山に登り確かめた先に、二人の影を見つけていた。シュシャは舌打ちし、銃を取り出して二人に狙いを定めようとした矢先に、爆発が連鎖して、体制を崩してしまっていた。

 

 彼の近くで爆発が起こり、二人が何らかの方法で攻撃してきたことを舌打ちしながら独り言を言っていた。そのあと、彼は瓦礫の山から脱出していった。

 

「次は、廃墟の街での事です。どうやらあの爆発と炎上は彼がやってたものでした」

 ツバサが動画を再生し始める。映っていたのは、浮遊するドローンが例の二人組が瓦礫の山から廃墟の街に入ってくる所を映している場面からだった。

 

 ドローンからの監視に気づいた二人はドローンの方を見ると銃を構え撃ち落とした。シュシャの舌打ちが聞こえ、建物の影から銃を構え、二人組に狙いを定めていた。しかし、二人は急に走り出し、銃の狙いから外れるように移動していった。

 またもシュシャは舌打ちに、タブレットを出して爆弾を起爆していった。廃墟の街で爆発と炎上が発生していたのは、彼があの二人組を殺そうとしていたのがわかった。だが、またしてもタブレットの操作がうまくいかないのか、彼は苛立つようにタブレットをタップしていた。うまくいかない事にタブレットの操作を諦め、その場から移動をし、廃墟の街から脱出していった。

 

「シュシャはどうやらあの二人に色々見られていたから殺すつもりだったけれど、失敗してました。それでこの次の動画で、今どうして爆発が起きているのかわかります」

 ツバサは次の動画を再生した。そこに映っていたのは、僕たちと初めて会った時の場面だった。

 

 彼は僕たちと挨拶するとすれ違い様に何かムッツーにつけていた。そのあと、アンネイに連絡を入れ、発信機をつけたと報告をしていた。僕たちはあの時から行動を監視されていたようだった。

 

 ツバサが今度は別の記録を再生し始めた。

 

 二人組がこの街に接近していると誰かから連絡を受けたシュシャは、アーネルトから二人組の処理を任せられるが、可能ならサンプル検体として捕縛を命じられていた。損失分を埋めろと命令され、彼は何人か引き連れ、待ち伏せをしていた。

 街に到着した二人は周りを警戒しているのか、キョロキョロとしていた。銃から網を発射したと同時に電流のようなものが流れ、二人はその場で倒れ込んだ。倒れ込んだ二人に数人が囲い込み、彼は銃を構え、二人のうち一人に何かを発射し、バチンバチン! という音と共に、撃たれた方はぴくぴくと身体を痙攣させていた。

 

「多分、スタンガンと呼ばれる電気ショックで気を失わせたのだと思います」

 ツバサが動画の開設をしてくれた。恐らく毒耐性があるのを知っていたので、電気ショックにより麻痺させ、捕縛したのだろうということだった。

 

 アーネルトに連絡を入れると地下の事件施設に運ぶように言われ、彼とその仲間は二人を運んでいった。

 

「次で最後の記録映像になります」

 最後、と言われた動画が再生が始まると、そこに映っていたのは二人が全裸の状態で手足が拘束され、口に何か詰め物をされた状態で大の字で壁に貼り付けにされていた。身体のいたる箇所に青色の痣があり、暴行を受けたような状態だった。

 

 彼女たちの前にある移動できるテーブルの上にアーミーナイフが置かれていて、シュシャがそれを指さして二人に聞いていた。

「なざ、これどうやったら我々も使えるようになんのかな? 教えてくれない? あ、喋れないか……ッ!」

 彼は二人のうち一人を殴った。

 

「ふぅ~、ん? 何? 君も欲しいの?」

 そして、もう一人を殴っていた。

 

「はぁ、まあ、研究チームがどうせ解析するから答えなくてもいいよ」

 アーミーナイフは研究チームと呼ばれた職員が移動テーブルごと持っていっていた。

 

「それじゃ、バイバイ~」

 

 シュシャは二人を放置し、部屋から出ていった。僕はいつの間にか、拳を強く握っていた。それを感じ取ったのか、マナチが僕の手を上から包み込むように握ってくれていた。

 横を見るとマナチは辛そうな顔をしていた。僕は深呼吸し、自分を落ち着かせるようにした。

 

「これにまだ続きがあります」

 ツバサが言うと数分後に監視カメラに切り替わり、斜め上から二人が映った。そして、彼女の周りに四角い何かが大量に現れ、二人のうち一人が監視カメラの方を睨んだ後に、動画が砂嵐のようになり消えた。

 

「おそらく、爆弾を召喚したのかと思います。それで予測ですが二人が脱出し、彼女たちがいた場所は爆発と炎で埋め尽くされ、今、この場所が破壊されているのかなと思います」

「それで施設は半壊し、地下の巨大実験施設に二人は落ちたって事か、いやそれだったらエントランスの死体とかも説明がつかないか」

「先に地上に出て、逃げてる最中に地下に落ちた、とか?」

 ツバサの説明の後に、僕が予測を言うとマナチが二人がどこにいるのか検討をつけてくれた。

「その線はあると思います」

 

「そういえば、最近の記録映像が残ってました。まだ見てないので念のため今見てみます」

 ツバサは最近の記録を再生した。

 

 そこにはシュシャが隊員たちに何か命令を下している映像があった。

「研究チームからの報告で没収したアーミーナイフがなぜか消えたとのことだ、そのあとに二人組は逃げた。一度は地上に逃げたものの、二人が巻き起こした爆発で地下施設に落ちていった。地下には実験生物がいるが二人を倒せるとは思わない。登ってこれる入口を全てロックをかけ、時間を稼ぐ。念のため、行方不明となっている五名は発見次第、殺害すること。無論、二人組もだ。作戦開始!」

 

 僕は、殺されてたまるかと思った。同時に言いようのない殺意が心の奥底から湧き出ていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る