第69話
遠くで銃撃音と悲鳴が聞こえる中、病院に到着した。途中で銃撃音や悲鳴を聞くたびに足を止めたくなったが、今はムッツーとタッツーを確かめることが優先だと言い聞かせた。病院に到着すると、建物は半壊し、地面には大きく穴が開いていた。穴の底は深くなく、広大な地下が存在しているのが外からでもわかる状態だった。
敷地内から辛うじてエントランスから入ることが出来、中に入ると血まみれになって死んでいる職員やEXP部隊が何者かと戦って死んだ死体があった。
「うっ……」
思わず口を覆いそうになるが、防護マスクをしているので目をしかめるだけにとどまった。死体、死体、死体があり僕たちはもうすでに吐くような程のメンタルの弱さを持ち合わせていなかった。マナチでさえ、どこか悲しい表情をしているだけだった。
あたりを見て回るとどの死体も建物の中を向いていて、建物から何か出てきたのか? という感じだった。
「奥から何か出てきたのかな?」
「この街にきて、ゾンビ、触手兼ミミック、他に何がある?」
僕はマナチがつぶやいた後にツバサとジュリに聞いてみた。
「生体兵器の暴走とか?」
「いやでもここで死んでる人たち、銃でやられているような感じですよ」
ツバサが予想するとジュリが近くの死体を見ながら言った。
「銃、か……」
「とりあえず、この奥を探してみよ。ムッツーとタッツーがいるかもしれない」
ハルミンは機密エリアと言われている方へと歩いていった。僕たちもそれに続き、歩いていくと地下への階段があり、一緒に降りた。階段の途中で、登って逃げようとしている人が殺されていた。職員、それに応戦して死んだEXP隊員たちがいた。
「何があったんだ……?」
地下に何があったのか、僕はわからないまま、生存者がいないのか、どこかに隠れている人がいるかもしれないと思い探した方がいいのかと思ったりした。もしかしたらどこかでムッツーとタッツーがどこかにいると信じて、生存者がいれば何か話を聞けるかもしれないと思った。
階段を降りきると爆発で吹き飛ばされたような形でくしゃりと曲がっていたドアがあり、そこから地下のエリアへと入る事ができた。通路にも死体があり、あたりを警戒しながら何かないか探していると、扉が空いている部屋があり何があるのかと入ると大量の透明な円状のケースに様々な生物が入っているのが見えた。
「なんだこれ?」
僕は思わず声に出してしまっていた。生きているのか、死んでいるのかわからない状態の生物が大量に陳列され、何かの機械と繋がっていた。僕は嫌な予感がし、頭によぎったその考えが当たってしまう事になった。
部屋の奥、中央に女性が二人、円状のケースに入っていた。
「う、うそ……よ……」
ふらふらとハルミンがその円状のケースがある部屋に無防備に入っていった。仲間だったムッツーとタッツーがその円状のケースに入っていたのだった。全裸にされていて、丸坊主にされ、頭の後ろ半分からチューブが突き刺さっており、下半身は機械で固定されていた。
ハルミンは二人の前まで着くと両ひざをついて、見上げていた。後ろ姿からじゃどんな表情をしているのかわからなかった。僕も自分の今の表情がわからない。
「ヨ、ヨーちゃん……あれ、あれさ……あれってさ」
僕の腕を引っ張っているのがマナチで、マナチが僕に何かを聞いている。何か聞いているけれど、僕は部屋の奥にある円状のケースに入っている二人の事で頭がまわらなかった。
「ヨーちゃん、どうしまし……」
ツバサが声をかけてきたが、中を見たんだろうか? そのあとに声は止まった。
「ツバサ? 何があったんですか…? あ……」
ガシャン、と銃が地面に落ちる音が聞こえた。
僕は部屋に足を踏み入れ、腕に何かが捕まっていたのを振りほどいてしまった。マナチが腕を掴んでいた事に気づいたのは、踏み入れた後だった。マナチの方を振り返るよりも、僕はムッツーとタッツーの近くへと行った。ハルミンの表情がわかるくらい近づくと、彼女は呆然としていた。口を震わせ、瞬きせず、涙を流し続けていた。
僕がそっと抱きしめると、マナチ、ツバサ、ジュリも部屋に入り、一緒に彼女を抱きしめた。
数分経った後に、この部屋が何なのか、あたりを調べたい気持ちが湧いてきた。どうしてムッツーとタッツーがこんな状態なのか、知りたいと思ったからだった。
「たぶん、これパソコンだと思います。幸いにもつけっぱなしなので……書いてある事はわかりませんがアイコンとか数字とかでなんとなく調べられると思います」
ツバサは手慣れたように、操作をしていき、この街の地図を出したり、日誌と思われる動画や音声を調べていった。そこからここは大規模な研究都市の実験場だと知った。
そこでアーネルトの活動日誌動画を見つけた。ツバサはそれを再生し、アーネルトが喋っているのが聞こえると僕たちは彼がどんな事をしてきたのか知ることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます