第67話

 僕たちがコントロールセンターに近づくにつれて触手が押し寄せてくるようになった。壁や地面に擬態してるものの、今までの通ってきた道や生存確率が露骨に下がる事から、対処していった。銃での攻撃ではなく、致死性の毒ガスによって倒していったのは効果的だった。

 

 ネズミの群れを倒していた時、アカネはピンなんて引き抜いてなかった事を思い出した。

 

「ねぇ、ハルミン。毒ガスを召喚する際にピンだけ抜いた状態をイメージで召喚って出来る?」

 ハルミンが一番嬉々として召喚し、投擲していたので聞いてみた。

「やってみる…出来た。これは投げる時に楽だねっ」

 とてもいい表情をしていた。

 

 +

 

 通路を進んでいくとコントロールセンターに到着した。両開きのドアそのものはひしゃげられて開いており、出入口付近には、木のような根が伸びていた。僕は念のため、銃で撃ってみて何か反応があるか確かめたが特に何も動かない事から攻撃してくるものではないと思った。生存確率も変動はしなかったので、植物なのかなと思った。

 

 コントロールセンターの中を覗くと正面には巨大なモニターがあり案内図でみたような水路と何らかの状況が数値で表示されていたりしていた。部屋に入り、あたりを警戒して周りを見てみると特に目立ったのは、木の根のようなものが壁に伸びていた。さらにそこに大きな穴があって、そこに木の根のようなものが入っていってるように見えた。

 「これは触手の巣か?」

 「そんな感じがしますね、気味悪いです」

 僕がつぶやくとジュリもそう思ったのか返事してくれた。

「とりあえず、机の上にある機械で操作すればあの扉のロックが外れて、地上に出れるはず、だよな?」

「ええ、多分。そのはずだと思います」

「うーん、ツバサとかジュリはそのあたり詳しかったりする?」

 僕はあまり機械に詳しくないので二人に聞いてみる。

「うーん、出来るかわかりませんがやってみます」

「たぶん、きっとなんとかなると思う」

 二人は巨大モニターを見ながら、机の上についている機械とにらめっこしながら、どれを操作したらいいのか調べていった。

 

 巨大なモニターを見ると水路の一か所が赤くなっており、そこに何かあって問題を引き起こしているのかと思った。そういえば、あの扉を開けたらミミックが地上に出るだろうなと思い、上の街は大変な事になるんじゃないかと思った。

「な、なぁ……思ったんだけど、扉を開けたとして、あのミミックって地上に出てしまう可能性がない?」

「ミミックを全部倒すのは、この水路は広すぎて無理じゃないかな?」

「扉を開けて閉めれば、多分大丈夫だと思う。それにムッツーとタッツーが気になる。そっちの方が大事だと私は思う」

 ツバサが調べるのをいったん止めて広さ的に難しいことを教えてくれた。さらにハルミンが今何が大事なのか僕に教えてくれた。

「そうだね、目的を見失っていた。ムッツーとタッツーのことが大事だ」

 

「あ、これかなぁ?」

 ジュリが巨大モニターと机の上にある機械を交互に見て、首をひねっていた。その声を聞いてツバサが近寄り、指さしながら巨大モニターと何かを確かめていた。二人が何か話し合って、ジュリが机の上にある機械を操作すると巨大モニターに表示されていた文字が変わった。

「多分、これでロックが解除されたと思います」

「戻って確かめてみよう」

「あ、ちょっと待ってその前にあの穴にこれ投げ込んでおいていい?」

 ハルミンが毒ガスの円筒を構えて、穴が開いた壁に投げ入れようとしていた。

「ミミックがこのあたりに大量にいたし、何か移動に使っていたのかそれとも巣に繋がっているのか、わからないけれどとりあえず投げ入れておけばいいかなって思ったんだけど……」

 僕は判断に困りツバサとジュリの方を向くと目をさらされた。

「やっちゃえ」

 マナチがまさかゴーサインを出すとは思わなかった。それを聞いたハルミンがポイポイッと穴に投げ入れていった。

 

「特に何も変化ないね?」

 

 ミミックの悲鳴とかなく、カンッカンカカンッとプシューという音が遠のいて行くだけだった。

「さ、地上に出る扉が開いているか確かめに行こう」

 僕はみんなに呼びかけ、コントロールセンターから地上に出る扉の方へと向かっていった。これ以上ここに留まるのもあまり精神衛生上よくないと感じていた。正直、ゾンビと比べてここで遭遇するミミックはとても気持ち悪い。ベェスチティのリーダーがアカネを取り込んだ時を思い出してしまうのもあり、嫌な気分になる。

 

 地上への扉がある場所に向かう途中、警戒しながら進んでいたが特に何も遭遇はしなかった。

 

 扉の前に着き、ツバサが扉の横にある機械を操作すると扉はギギギと音を立てながら左右に開いていった。開くと同時に後ろから風が急激に吹き荒れるように通りに抜けていき、地上と地下は密閉された空間だったのだろうかと思った。

 

 扉を抜けると反対側にも扉の横に機械があり、ツバサはそれを操作して扉を閉めた。

 

「これで多分、あのミミックは地上には出てこないはず?」

「他の出入り口というかあの時の爆発で出てこれるかもしれない事に今気が付いた」

「「あっ」」

 

 そういえば、僕たちは爆発があって地面が崩れて落ちてきた。そうなるとどこか空いてる箇所があるから、さっき僕が心配していた事なんて意味がない事だった。

 

「まあ、地上に戻ってこれてよかったよ」

 

 僕たちは階段を上り、どこかの建物の地下から地上に出た。鉄格子のようなシャッターが閉じられた建物で、外に出るのにシャッターを開けるスイッチをみんなで探し、無事にシャッターを開けた。ようやく地上に出る事ができ、安堵した。

 あたりは真っ暗になっていた事に気づき、もう一度建物に入りシャッターを閉じて、建物の上の階でくつろげそうな部屋を探し、そこで今日は休む事にした。ムッツーとタッツーが気になるが、今の状態のまま行こうとしたら生存確率が10%まで下がり、みんな嫌な予感がしていたので戻ったのだ。

 

 その夜はテントを出さず、クッション材を敷き詰めそれぞれの寝袋を出し、川の字になって休んだ。誰が言うのではなく、僕、マナチ、ハルミン、ツバサ、ジュリの順で横たわって休んだ。途中、ツバサとジュリがこの異世界はゲームを元にしていたら話がはじまって寝れそうになかったので、途中で止めさせた。二人が残念そうな声を出し、そのあとハルミンとツバサが笑って、おやすみと言い合い寝た。


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