第66話

 そんな事はあり得るのか?

 ふと、瓦礫の山で爆発物を投げ、火の近くにいるのに無傷だった二人組を思い出した。あれがその効果として活用していたのだとしたら、ジュリが読み上げた使用者とパーティメンバーは効果無効というのは、とんでもない強さを発揮する武器だ。

 

「フレンドリーファイアがされないように設定がある、ってこと?」

 ツバサが驚愕していた。確か、前にただの異世界転移かゲームを元にした世界に異世界転移なのか話した時に言っていた言葉だ。つまり、この世界はゲームを元にしている異世界なのか?

「ま、待って、ちょっと待って……え、えっ!?」

 ツバサが何を見つけたのかアビリティ・スキルの何かを見て狼狽していた。

「何を見つけたんだ?」

 僕がツバサに聞くと、頭を抑えふるふると首を振っていた。呼吸がなにかおかしく、極度の興奮状態になっていた。

「お、落ち着けってどうした? 大丈夫か?」

 僕が心配して近寄ろうとすると、ツバサは持っていた銃の銃口をもう片方の手に向けた。

 

「はっ?」

 

――スススッ! チリンチリンチリン。

 

 僕は目を疑った、ツバサが自分の手に向けて銃を撃った。ただそれ以上に驚いたのは、ツバサの手のひらの前で銃弾がパラパラと落ちたのだ。

 

「「「えぇ!?」」」

 僕、マナチ、ハルミンは驚いた。

「ちょっとツバサ何やってるんですか!」

「ジュリ、これはすごいわ! 味方同士なら攻撃が無効化されるわ!」

「そうじゃなくて、どこにそんな事が書いてあっ……もしかして今の注意書きがパーティメンバーの所に書かれていたんですか!?」

「ええ、つまり…」

「これはゲームを元にした世界に異世界転移されてる可能性がある!」

 二人は興奮していた。ゲームを元にした世界に異世界転移だとしても、死んだ人は生き返るのか? それとも何かクリアしたら元の世界に戻れるとかそういうのがあるってことなのか? ゲームなら――

「クリア条件やゲームの仕様がわかれば、もしかしたらムッツーやタッツーが生き返るかもしれないですし、あとは、そう元の世界に戻るために何か必ずあるはず」

「あのクライドという人がキーマンの可能性が高いですね」

 二人が興奮して話しはじめたのをハルミンとマナチが少しばかり引いていた。

 

「ふ、二人ともとりあえずコントロールセンターに向かおう、話の続きは地上に出てからにしないか? ここにはあまり長居をしたくないだろ?」

 

 僕が二人を落ち着かせるように言うと、ぴたりと会話は止まり申し訳なさそうに頭を下げた。

「「すみません」」

 見事にハモっていた。

「とりあえず、先を向かおう。お互いの攻撃が無効化されているけれど、今までと変わらず気を付けて進もう」

「「「はい」」」

 

 +

 

 僕たちはコントロールセンターに進んでいくと、明らかに人に擬態しているミミックがいた。人の形は保っているものの、うねうねと触手が無数に出ており、怖気と気持ち悪さがあった。

「撃っていいよね」

 ハルミンの目が座っていた。

「あ、ああ」

 二丁の銃による照射がミミックをひるませ、肉片にさせるだけだと思った。しかし、攻撃された事によりこちらに気づいたのか向かってきた。

「んなっ!?」

「ひぃ!」

「いやぁぁぁ」

 みんなそれぞれ悲鳴を上げ銃を構え照射し、僕たちの所に到達する前に肉片と化した。遠目でもわかるくらいバラバラになっていたが、まだもぞもぞと肉片が動いていて、非情に気味が悪かった。

 

――ピンッ

 

 何か引き抜くような音がした。

 

「ふんっ!」

 

 ハルミンが銃をいつの間にか消して、円筒の何かを投げていた。僕はその円筒の何かに見覚えがあり、ネズミの駆除の時にアカネが大量に投げていた致死性の毒ガス武器だ。さっきジュリが話をしていたのをハルミンが使ったのだった。

 

――カンッカカンッ……プシュー!

 

 薄い白色の煙が散布され、それに触れた肉片がビクビクと痙攣しだすと動かなくなっていった。数秒、数分経ったのか白い煙が無くなり、肉片はどれも砂のようになっていた。

「ハ、ハルミン」

「よしっ」

 ガッツポーズをしているハルミンにマナチがハルミンの肩を揺さぶっていた。ツバサとジュリはぽけーっとしていた。僕ももうこれでいいや、と深く考えるのはやめた。正直、ミミックがひるまずに襲ってこようとしたのは怖かったからだ。とどめを刺せるのならよしとしようと思った。

 

 通路の奥を見るとさっきまでミミックが居た場所に新たな人影があった。

 

「お、おいあれ……」

 僕は銃を構え、通路の先にいる人影をみんなに知らせた。異常だとわかり、ハルミンは銃を召喚し、構えた。それぞれ銃を構えたが、通路の先にいる人影がじょじょに増えていった。

「こ、これヤバくないか?」

 僕がそう言うと、人影だったものが集まり一つの大きな塊へと変わっていった。通路を塞ぐくらいの大きさに代わり、段々とこちらに近づいていくようなうねりをしていた。

「へ、変な事いうから現実になるんですよ。フラグですよフラ、フラグ」

「ど、どど、どうした声が震えてるぞ」

 ツバサがフラグとかいうので言い返してみたが僕の声も震えた。正直クソ怖い。

 

――ピンッ

 

「ふんっ!」

 

 ――ピンッ

 

「ふんっ!」

 

 二回とも義腕と義手になったハルミンが投げた円筒の致死性の毒ガス武器はミミックに直撃した。当たった時の音がゴッ! という鈍い音がし、あと白い煙が出ると通路を塞ぎながら迫ってきたミミックは痙攣し、その場で砂のようになっていった。

 

「バルサンッ!」

 

 ハルミンがガッツポーズをしながら叫び、さっきまでの恐怖を消し去ってくれた。



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