第59話

「さて、俺は報告を終えたから報告書を作成してくるからまたな」

 そういってシュシャはこの場から去っていった。出来る大人っていうのか余裕があってかっこいいなと思った。

 

「そういえば聞きたい事があるのだけど、あの光りについて何か知っていますか?」

 僕はアーネルトとアンネイに遠くに見える光りについて聞いてみた。

「気にはなっているが、ゾンビの件があって調査できていないんだよね、あと専門外なところもあってさ」

「同じく~」

 二人とも知らないと答えた、そうなってくるとあの顔の半分が骸骨のクライドはこの街の人じゃないのか?

「あの、顔の半分がこう骸骨になっているクライドっていう人知ってますか?」

 アーネルトとアンネイは怪訝な顔をし、冗談を言っているのかという表情のしていた。

「いや、そんな人は知らないな? ゾンビ……じゃないんだよね?」

「え、ええ。ゾンビじゃなかったですね」

「うーん、そうなるとこの世界の住人、かもしれないのかなぁ……少なくても私たちの中にそういう人はいないね」

「そうですか、ありがとうございます」

 僕はクライドの事が気になった。なぜゾンビの事を知っていたのか、それを確かめに行こうと思った。

 

「それでこの後どうする? 荷物とかとってきてここに住むかい?」

 アーネルトが聞いてくると、僕たちはいったん相談させてくださいとその場を離れて話す事にした。

 

「私は今後の事であの二人と話しておきたいと思ってる。それに荷物も何も今持ってるバッグに全て入ってるし、ここに残るでいいかなと思っている」

「私も同じく、かな」

 ムッツーとタッツーの言う通り、僕たちが持ち歩いてるバッグに全て入ってる。この世界に来た時の服一式、そしてアーミーナイフ。

「僕はクライドの所に行って、ビヴロストとゾンビについて聞いてくる。なんでゾンビについて知っていたのか聞けたら聞いておきたい」

「ヨーちゃんが行くなら私も行く」

 マナチも着いてきてくれることになった。

「私たちも行きます」

 ツバサとジュリも着いてくることになった。するとハルミンも僕の近くにきて、小さく手を挙げていた。

「なんか身体を動かしておきたいし」

 

「四人で行けば、もしゾンビが出てきても大丈夫だね。ハルミンもいるし」

「そうだな、大丈夫だろう」

 タッツーとムッツーのお墨付きのハルミンだった。僕もハルミンの火力があれば大抵の化物相手にどうにかなりそうと思った。

 

 クライドの元へ行く事を決めると僕の生存確率が80%に代わり、この選択で正しかったのかと感じた。

 

 話が決まり、アーネルトとアンネイがいると事に戻り、僕たち四人は確かめたいことがあるので一度外に行って戻ってくる事を伝えた。ムッツーとタッツーは話足りないのか、その場で話を続ける事にしていた。

「それじゃ、気を付けてな」

「ああ、ちょっと行ってくる」

 ムッツーに言われ、僕は返事をし、その場を後にした。

 

 病院を後にする間、ムッツーとタッツーが二人にいろいろ質問をしている声が聞こえた。この世界に来たタイミングについて、元の世界ではどんな世界だったのか、等矢継ぎ早に聞いていた。僕は戻ってきた時にどんな質問をしたのか聞いてみようと思った。

 

 +

 

 クライドがいる屋上に到着するとうんざりした顔をしていた。僕たちが来るのを待っていたかのように、ドアを開けると顎で座れと言われた気がした。僕たちはクライドが座っている反対側のソファに座ると大きくため息をつかれた。

 

「あのビヴロストとゾンビについて詳しく聞きたくてきました」

「ふん、ビヴロストは前に言った通りだ。なんで知ってるかっていうのは調べてたから知っている。ゾンビはなんで詳しく聞きたいんだ?」

「襲ってきたゾンビを倒しました。数は三百いました」

「だろうな」

「あの帰れる方法を知ってませんか?」

 僕がそれを聞くと骸骨の方の目がかすかに動いたように見えた。瞼もない眼球だけの目が少しだけ震えたように見えたのだ。

「なぜ、私にそれを聞く? いや直感か? まあ、いい話し相手になってやる」

 だらりと座っていたクライドは身を乗り出した。

「帰れる方法を知っているか、だな。知っている。だが期待させるようで悪いが、知ってはいるけれどオレには出来ないという答えになる。帰れるかわからないが異世界に通じる門があって、その門をくぐると別の異世界に行ける」

 僕は心臓の鼓動が早まっていた。口の中がカラカラになるような、一番近い手がかりを掴んでいるような気がした。

「この世界のどこかに門があるからそれに飛び込めば、もしかしたら帰れるかもしれない。ん? そういえば二人足りなくないか?」

「ふ、二人は別の所にいます」

「ふぅん、まあいい。それじゃ、オレはどこかに旅に出る。用事を思い出したのもあるしな」

「え、いやもうちょっと話を――」

 

 クライドは立ち上がるとあたりの物ごと消えた。

 

 当然、座っていた僕たちは尻もちをついた。その消え方はアーミーナイフから召喚されたものを消した時と同じような消え方をした。僕は何が起きたのかわからなかった。


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