第56話
「ゾンビは元は人だ、そしてこの街には子どもと老人はいない。子どもと老人の厳密な年齢はわからないけれど、会ってきた人達を見ると二十台から三十代って感じだな?」
「人は減る一方になるから、街の大きさに対して人の数が少ないけど、ゾンビって何体いるんだろう?」
ムッツーとタッツーが話しはじめた。
ジュリがそこで気になったことを話しはじめた。
「あ、あの、この街の事なんですけれど子どもと老人がいないのにあの病院は何の病院なんでしょうか? 会ったアンネイさんとアーネルトさんは本当に医者なんでしょうか?」
「アンネイは医者だと名乗ったが、医者かどうか判別はつけられないが、子どもと老人がいないのはおかしい事なのか?」
ムッツーはさほど疑問に思っていなかったらしい。
「ここに異世界転移で街ごとさせられたとしても、街そのものが子どもと老人がいないなんてことはあるのか、ということね」
タッツーがジュリが気になってる点を言い、ジュリがそれに対して頷いた。
「となると何かを目的に作られた都市だからいないんじゃにか?」
「何かを目的って、何かの実験のためってことだと、ゾンビに繋がらない?」
ムッツーが言うとハルミンがそれに対して答えた。
「いや、そうだったとしたらたまたま運悪く異世界転移したら、ゾンビウイルスが発生してゾンビタウンになったってことになるのか?」
僕が言うとみな何か違うような気がするという顔をしていた。
「病院と名乗っている以上、異世界転移した後に住人の数やゾンビの数などを把握していると思うし、聞きに行きましょう」
タッツーが言うと、それしかないかと僕たちは思った。あまりあの場所に行きたくないが、知らないとあとどのくらい人がいて、ゾンビがいるのか、わからないままにしておくのは後々大変だと思ったからだ。
「それでは、明日病院に行き住民の数とゾンビの数を聞いてこよう」
「そのあとはどうする? ビヴロストっていう光りの樹を目指す?」
「あー、そうだった……帰れるかもしれないと目印にして向かっていたな」
僕がムッツーに明日の方針を告げた後に、今後の方針を改めて聞くとみんなも思い出したかのように考え込んだ。
「あの半分骸骨が言っていた事を信じるなら、あの場所は帰り道ではないよね」
ハルミンは目を伏せがちになって言った。
「確かめるにも確かめようもないし、モヤモヤする」
マナチが頭を抱えていた。
「元の世界に帰る方法か、この街にいる人も帰ろうとしてると思う。ゾンビの問題が終息したら、一緒に探すというのはどうだろう?」
ムッツーが険しい顔をしながら言った。確かに僕たちだけで帰る方法を探す、というのは難しいと思った。
「私もそうした方がいい気がします。ただ、信用がまだそのできないから時間が必要かもしれないけど」
ツバサは賛成するものの、あの病院の人たちが気がかりだった。
「一度、明日病院に行ってゾンビの数を聞いて、元の世界に戻る為に何かしてるのか、お互い協力できることがあるのか聞いてみましょう、ね?」
タッツーもどうやら帰る方法を協力するのが良さそうと思っているらしい。周りも頷き、僕もどちらかというとその方が帰れるような気がしてきた。
僕たちだけじゃどうしてもあてもなく歩いて探す、という方法以外わからないからだ。光りの方へと向かっていったが、あの光りを知っていたクライドの言葉を鵜呑みにするわけでもないが、もし真実だとしたら帰るための場所ではなく、ただの危ない場所だ。
+
僕たちはいつものように警戒しながら病院へ向かっていった。拠点から出る時に生存確率を互いに確かめ合い、この街に来た時と同じ推移だったので向かう事にした。何かある度に生存確率を確かめるのが習慣として自分たちは身に着いていた。
何事もなく、病院につくと警備員の人たちに止められるが数分後に病院内からアンネイが走ってきて、中に案内される。血液検査もし、特に問題なかったのもあり、エントランスホールの端にあるテーブルと椅子があるエリアで話す事になった。
「そんでどしたん? 何か聞きたい事あるの?」
アンネイが陽気に話しかけてきて、この人は本当に仕事してる人なのだろうかと僕は疑問に思った。どんな仕事をしているかわからないが、何かいい加減な感じがした。
「あのここにはどうして子どもと老人がいないのでしょうか?」
ツバサは真剣な表情でアンネイに聞いた。アンネイは目をぱちくりさせた後に答えた。
「ん、ああ、そうだよね。フフッ、実はね私たちは不老なんだ。不死ではないからケガや病気で死ぬけれど、平和に過ごし続けたら死なない不老なんだ。生殖機能を持たない進化の行き止まりに陥ってね、それを打破するために日夜研究しているのさ、子どもができない病気だからそれを治すための病院ってわけさ」
予想外の答えに僕は、何を言っているのか理解できなかった。不老、ってなんだ? 年老いても死なないって事か?
「まぁ、不老になっているからゾンビ化してしまうのかもしれないという仮説の元で今研究して解明しようとしてるわけなんだよね。不老だから、ゾンビ化してしまうのかわかるかもしれないし、君たちがこの街の外から来たというのもあって、自分たちからすると希望でもあるんだ。この異世界に飛ばされてから、ゾンビが流行りはじめたからね。抗体的なものがあるのかなと思ってさ」
何かふと、不穏な感じがした。何とも言えない感じでゾワリとした。
「ゾ、ゾンビの数はわかりますか?」
ツバサが息詰まりながら、アンネイに聞いた。
「観測できている数は三百、なぜかいつも三百ぴったしなのよね」
なぜかいつも三百ぴったし、と聞き、クライドがゾンビを何体倒したのか聞いた事を思い出し、なぜ彼が何体倒したのか聞いたのか、嫌な予感がした。その予感の後、ツバサとジュリと一緒に話をした、この世界がゲームを元に作られてたとして、臭いがしない、虫がいないという話を思い出す。廃墟の街に家具やドアなどがなかった事も思い出し、それらから考えられる結果は一度にゾンビになる数は上限があって、それ以上は出現させられないのではないか?
そうなると僕たちが倒したゾンビは他の人がゾンビに変わるのではないか?
「あ、あの……人がゾンビになる過程ってどんな状態からなったりしますか? あと倒した後ってどうなりますか?」
僕は当たってほしくないと思った。生存確率をちらりと見ると65%だったのが35%まで下がっていた。
「そりゃゾンビに傷をつけられたりしたらだけど、ゾンビを倒し……たら、ゾンビが……時間と共に消えて……あっ!」
ショッピングモールでゾンビを大量に倒した。するとゾンビは別の所で人がゾンビに変わる可能性があると思った。ならゾンビを倒さず、うまく捕獲しておけばゾンビの脅威はなくなるのではないか、と思ったのだ。彼女が言おうとした事、この街があまりにキレイ過ぎるという事、ゾンビは倒された後はキレイに消えてしまうのだと確信した。
――ビーッ!ビーッ!緊急事態発生!緊急事態発生!
「アンネイ! 大変だ、今までと違うゾンビがこっちに向かっている!」
アーネルトが奥の方から走ってきて、僕たちの方へと慌ててやってきた。
「へっ? はぁ? え??」
「おいバカ、しっかりしろ。EXP部隊から連絡があったんだよ、この病院に押し寄せてきてるんだよ。私たちは避難しなきゃいけないんだよ!」
「この子たちはどうするのさ?」
「いや、そりゃ一緒に避難するしかないだろ!」
「よし、避難だ。避難。ううっ……あの機密エリアだからそのあんまり周りみないでね?」
「今はそんなこと言ってる場合か! バカ!」
二人のやり取りを聞いて、僕たちはサイレンの音と周りが慌ただしく防衛の準備に入っているのが何かちぐはぐしていて、さっきまでの緊張感が薄れていった。
僕はムッツー、タッツー、ハルミン、マナチ、ツバサ、ジュリのそれぞれを見ると今何をしないといけないのか表情が語っているのがわかった。
「僕たちも戦います」
ゾンビを倒したら、新たにゾンビが生まれるが、傷を負わされたらだ。なら無傷で倒しきって、ゾンビが消え失せればゾンビの脅威は消えるのではないか?
また突然ゾンビが湧いたら、と思ったが僕たちは検疫というアビリティ・スキルがあるから、抗体を持っているのではないかと思った。血液検査で血液を採取しているのだから、それを見てもらえばもしかしたらわかるかもしれないと思った。
「え、でも、えっ、いいの?」
アンネイのアホみたいな表情をし、アーネルトが心配そうに僕たちを見ていた。
「ああ、任せておけ」
ムッツーが自信満々で言った。それ僕のセリフなんだけど……?
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