第40話
ベェスチティが何体いるのか、一つの建物に一体だけなのか、ここはどのくらいの広さがあるのか、僕は進む方向を見て考えた。ベェスチティの巣のような建物が重なっているため、空は見えるものの先がどうなっているのか見えない。
もしかして、この先行き止まりだったらと頭によぎった。だが、幸いにも僕たちが召喚してる銃には弾切れがない。ベェスチティに囲まれたとしても撃ち続ければなんとかなる、はずだと思った。
タッツーがハルミンを背負って歩いているのもあり、そこまで早く進めない。あたりをみるとじりじりと囲むようにベェスチティがポキポキと音を鳴らしながら近寄ってきていた。ムッツーとタッツーは検疫と洗脳について説明した為、頭痛には襲われていないようだった。
「こちらから仕掛ける、しかないな」
僕は、銃口を向かう方向に構えて撃とうとした。すると狙われたと思ったベェスチティがゆっくりとだが進路を変えた。
「ヨーちゃん、どうあっても逃がしてくれそうにないな」
銃口を向ければ戦意を喪失してくれると思ったがどうやら違うとムッツーは思ったのだろう。
「なら、全方位に撃ちながら進もう。近寄れば死ぬとわからせるしかない!」
僕はクリスベクターカスタムブレイクスルーをベェスチティたちに向けて撃った。体の一部分に当てるように、次々と狙いをつけて、撃った。
スススッ、スススッ――
僕が撃った先にいたベェスチティは頭部ではなく、体の一部がそがれたような状態になっていた。絶命はしていないものの苦しんでいるのか、苦悶の表情を浮かべていた。それでもこちらを逃がすまいという意思があるのか包囲を狭めてきていた。
「ムッツーは進む方向を、マナチとツバサは左右を、ジュリは後ろを、僕はみんなのフォローをしながら全方位に撃つ」
「わかった」
「うん!」
「は、はい!」
「やります!」
ムッツー、マナチ、ツバサ、ジュリがそれぞれ返事をしてくれた。
この中で返事をした後に真っ先に銃を撃ったのは、ジュリだった。
「キモイよッ!」
ヴァンッ!ヴァンッ!
後方、といっても距離がある所にいたベェスチティに向けてジュリの軽量型小型自動散弾銃参禄式から攻撃が放たれた。ショットガンと呼ばれるもので弾の種類によっては多数の小さい弾丸を散開発射させる事が出来る。
攻撃が当たったベェスチティは僕の持つクリスベクターカスタムブレイクスルーと違い、抉れるような状態ではなく、いくつもの弾が同時に当たっていた。抉るよりも肉をミンチにしたような痕をベェスチティにつけていた。ダメージがあった箇所からは遠目からでも、赤い汁がとめどなく流れていた。
続けて、タタタッ、タタタッと音がした。
マナチとツバサが左右のベェスチティに向けて撃っていた。二人の銃はアサルトライフルと呼ばれるもので、僕が使っているものよりも射程距離が長かった。砂利の砂漠で試射した時のまま高性能サイレンサーをつけているので、発射音が抑えられていた。
二人のアサルトライフルから発射された弾に当たったベェスチティは僕が撃った時と同じように肉がそがれ、行動を鈍くさせていたり、行動不能にさせていった。
タタタタタタッ――
先頭を行くムッツーの銃からはマナチやツバサとは違い、もっと長く銃弾を発射していた。狙いをつけているのか、つけていないのか、横なぎするように水平に動かし、撃っていた。ムッツーの銃にも高性能サイレンサーがついているため、音はジュリの銃に比べて低かった。
「むむぅ、私だけ音が大きい……」
そう言いながら、ジュリは自分が持つ銃に高性能サイレンサーを取り付けたのだった。取り付けた後に、ジュリはベェスチティへ構えて撃っていった。
パッフッ!パッフッ!
音が劇的に抑えられ、驚くような音ではなくなり、どこか気の抜けたような感じになった。だが、発射されて弾に当たったベェスチティは最初に撃った時と同じダメージを受けていた。
僕たちは十字型の陣形に自然となっていた。中央にハルミンを背負ったタッツーがいて、僕がその横で四人をフォローするように目を配らせていた。ベェスチティたちが迫ってくる様はこちらがいくら撃ち続けても止まる気配がなかった。
僕はその中で勢いがありそうなベェスチティに銃弾を浴びせた。
ゆっくりとだが、僕たちは撃ちながら前に進んでいっていた。正面にはベェスチティの死体の山があり、それを避けるように前に進むが、ベェスチティの死体が影になってくるため僕はより警戒しないといけないと感じた。
生存率30%――
視界の隅に見えている生存率は30%だった。
「ベェスチティの死体が影になって襲ってくるのが見えないかもしれない、注意して進もう」
あたりはどこから聞こえるのかポキポキという音がし、視界に入っているベェスチティに対しては銃で迎撃していった。
それでも死体の影で見えないベェスチティがいるような気がし、不安を感じながら進んだ。ベェスチティの建物もあり、死体だけではなく建物の中に隠れてる可能性もあると感じた。
スススッスススッ――
僕はベェスチティの建物に向けて撃った。搭載されている銃弾から建物ごと当てられるからだ。実際にその銃弾は建物に穴を空けていった。僕は周りの他の建物に対して撃ち込んでいった、建物に隠れていようと関係なくハチの巣にしていった。
どれくらい歩いただろう、進んだろう、一向にベェスチティの建物が建っているところから抜け出せなかった。
「あとどのくらい進めばいいんだ……」
ムッツーが言葉にしながら、ベェスチティめがけて銃を撃ちながら歩いていた。
「タッツー、まだ歩けるか?」
僕はタッツーがハルミンを背負っている事で僕たちよりも疲れやすいと思った。
「まだ行けるわ、ムッツーは弱音吐く前に進んで! 私は平気よ」
「疲れたら言いなよ、変わってやる」
ムッツーは前に見えるベェスチティに銃を撃ちながら歩みを進めた。
僕は後ろの方から聞こえる爆発音が段々と近づいてきている事に気づき、なぜこっちに向かってきているのか不安を感じていた。
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