第39話
爆発音が不規則に鳴り、地面や空気を通して震動していた。一番近くにいるベェスチティが僕たちよりも遠くの爆発に気を取られている隙にその場から離れる事にした。僕とムッツーを先頭にその後ろにはマナチ、ハルミンを背負ったタッツー、一番後ろはツバサとジュリの順で移動を始めた。
ポキポキポキ――
ベェスチティが動く際に出る音、それは骨を鳴らしたような音がした。僕たちが動くのに気づいた、と思ったのだがどうやら遠くで起きている爆発が何なのか、見ようと立ち上がっていた。横に長い胴体を直立させた姿は、縦に伸びると胴が気味悪く伸びているが縦にそのまま立っている姿は短足なキリンのようにも見えた。だが下半身は蟻や蜘蛛のような異形らしさから気持ち悪く気味が悪い。
爆発の音がさらに増えていくとそのベェスチティの頭部の部分が震えだした。
ゴキボキッゴキボキッ――
頭部付近から聞こえる音は先ほどの音よりも骨を鳴らすというよりも骨を折った時のような音だった。
「何か様子が変だ、急いでこの一帯から抜け出そう」
ムッツーが言うが、タッツーはハルミンを背負っているのもあり、走るに走れない状態だ。近くのベェスチティが震え終わると、後ろについていた顔の目が僕たちを見ていた。
ムッツーとタッツーは頭痛に襲われたのか、歩みを一時的に止めていた。
「くっ……」
「い、いたっ……」
僕は何が起きているのか察知し、ベェスチティの方を向き頭部に向けてクリスベクターカスタムブレイクスルーを構えた。僕は一瞬だけ、引き金を引く事に躊躇した。それはほんの一瞬であり、すぐに引き金を引き絞った。
スススッ!
僕が持つクリスベクターカスタムブレイクスルーは、高性能のサイレンサーが装着されており、発射音は失敗した口笛のような音しか出なかった。ベェスチティの頭部は削れていくようにはじけていき、頭部だった部分が無くなった。
僕はムッツーに対して、撃つ覚悟があるのか確かめた事に少しばかり恥じた。だけど今、ベェスチティを倒した事によって。恥じた事ではなく、行動として示せたと思った。
ベェスチティはゆっくりと横たわるようにポキポキと音を鳴らしながら倒れた。頭部の肉片は発射した方向の建物や地面にまき散らされるように飛び散っていた。ベェスチティの消えた頭部からは赤い汁のようなものが出ていた。血とは違う透明感があるものだった。
「ふぅ・・ふぅ……はぁー」
僕は初めて生物を殺したことで、心臓の鼓動が一気に早くなっていた。それを落ち着かせるように深呼吸をしたものの、なかなか落ち着かなかった。
ベェスチティが倒されたことでムッツーとタッツーの状態は回復したようだった。
「あ、ありがとう」
「助かったわ」
僕は洗脳のことを、二人に話してない事を思い出し、またベェスチティが同じことをしてきた場合は洗脳されてしまう。
「二人とも聞いてくれ、ベェスチティは洗脳をしてくる。そして、アビリティ・スキルの検疫で私たちを守ってくれる。その頭痛はあれが洗脳してきている状態だ」
「け、検疫?」
タッツーは僕が言ってることがわからなかった。
「どういうことだ?」
ムッツーも理解できていなかった。
「この検疫というアビリティ・スキルは相手が自分たちに何をしてきてるのか知ることで無効化できるっぽいんだ。だから、今言ったことを覚えておいてくれれば、大丈夫なはずだ」
僕は自信はなかったが、これで予防にはなると思った。
「僕とマナチ、ツバサ、ジュリで話していた時にムッツーは洗脳されていても話は聞いていたろ?」
「いや、そうなんだが……」
「受け入れがたいかもしれないが、そういう仕組みで僕たちは生き延びられているんだ。理解しようと知っていこう」
ムッツーとタッツーは僕が言ったことに頷いてくれた。
光りがある方向へ僕たちは進むことを再開した。ベェスチティの死体をそのままにし、歩き始めた僕たちは向かう方向にもベェスチティの巣とも言える建物があるのが視界に入っていた。その建物から身を乗り出しているベェスチティたちが僕たちを見ていた。
「やれるか?」
僕は誰に言うわけでもなく、口にしていた。
「私、やるよ。ヨーちゃんの力になりたいしね」
マナチは力強く答えてくれた。彼女の方を見ると、顔は強張っており、がんばって強気でいようしているのがわかった。
「わ、私もやります」
ツバサもマナチと同じような表情をしていた。ただ違ったのは、今までのツバサと違って声が大きかった。
「私もやってやるです」
ジュリは鼻息を荒くしていた。きっと不意にベェスチティが近寄ってきても対応してくれそうな感じがした。
「ヨーちゃん、私もやる。やるよ」
最後にムッツーが答えた。彼女は生徒会長をやってそうな、かっこいいお姉さんな雰囲気をまとっており、頼れそうだと感じた。
「生き延びよう」
僕は行く手を阻むやつを容赦なく打ち殺すという気持ちで一歩一歩と進み始めた。
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