第32話
最初に生存確率を答えてくれたのは、マナチだった。自信なさげにしょんぼりとしながらだった。
「私は40%」
テストの結果だと赤点とってしまったような落ち込み具合だった。僕はしょんぼり具合と数値からして、もしかして自分が一番低いのではないかと思ってしまった。
「わ、私は55%」
続いて答えたのはジュリだった。彼女もまたその数値に不安があるのか、しょんぼりとしていた。
「え、私も55%」
ツバサとジュリは同じだった。マナチはそこまで乖離していない数値で40%はそこまで低くないのかと思っているのか少しだけ安心したように見えた。
「ヨーちゃんは?」
マナチは僕に期待の目を向けていた。僕は自分の唇を触りながら、なんでみんな高いんだろうと思った。
「僕は……30%だ」
この四人の中で一番低かった。
マナチは一瞬呆け顔になり、すぐにハッとすると僕から視線を外した。いたたまれなさを感じたが、一度洗脳されていたりしてるので、まあ仕方ない。
「この生存確率は、いかに知っているか、あるいは予想をしているかの数値の違いなのかと思ってる。だから、一歩前進だとは思う」
僕は自分の生存確率が三人に比べて低かったものの、今までが低かったのが上昇したし、この三人と仲が深まった気がするし、よかったと思う事いした。一番低かった事に関しては恥ずかしさがあるものの、もっと積極的に周りと話をして、気が付いた事を共有していけば大丈夫だと感じていた。
「でも、私はツバサやジュリのようにあんまり知らないよ?」
「もしかしたら好奇心とか知りたいという欲や警戒心とかも影響しているのかもしれないですね」
ジュリが腕を組み考えながら口に出していた。
「でもそしたら、ヨーちゃんだってもっと高くならない? いつもいろいろ考えてるように見えるし」
違うんです。妄想してるだけなんです。
「も、もしかしたら防具の差かも?」
僕はマナチの防御力が高そうな防具が高めているのではないかと言った。
「む~っ」
マナチが着ているものについて言われて、頬を少し膨らませていた。かわいい。なんかリスっぽいな。
「防具……確かにその差はありそうですね」
――バァン! バァン!
突如、遠くの方で銃声が聞こえてきた。
砂利の砂漠で試射した時と同じような音だった。一同がビクッとした後に、音がした方向を確かめるため建物から外に僕たちは出た。ハルミンだけは建物の中に残り、ムッツーとタッツーも何事かと一緒に外に出たが反応が鈍く感じた。どこか周りに合わせている風に見えた。
――バァン! バァン!
さらに銃声が聞こえ、どうするか僕は迷った。まだ身体は重く、倦怠感があったからだ。
「私、見てくる」
マナチが何かを決意したように音がする方を見て言った。僕も一緒に行く、と言おうとしたら――
「わた、私も行く」
ジュリが立候補していた。手には銃を持ち、行く気満々だった。
「ヨーちゃんは待ってて、体調があんまりよくないんでしょ? なんかそんな気がするし」
マナチの指摘した通り、身体は本調子ではない。
「わかった……危なくなったら戻ってきてくれ、僕たちはここで待ってる」
僕は行って確かめたいと思ったが、自身の生存確率の低さと今の体調を考えるとマナチとジュリに頼ってみようと思った。
ツバサがジュリを気遣い声をかけた。
「ジュリ、気を付けてね」
「マナチ、頼んだ」
マナチとジュリが今までしたことのない行動をとったのは不安だった。やっぱり自分も行くべきだろうか、そう思った時、生存確率が15%までぐんと下がった。どうやら僕が行こうとすると何かダメなのだろうと思うと30%に戻った。
僕は二人を見送り、建物の中に戻った。ムッツーやタッツーも同じように建物の中に戻り、ハルミンの近くへ行った。
ツバサも遅れて建物の中に入り、僕は彼女にいろいろ聞いてみる事にした。多分、僕が今できることはゲーム的な事やファンタジーな事に対しての知識だ。
「ツバサ、知っていたら教えてくれると助かるんだけど、銃について詳しかったりする?」
クリスベクターカスタムブレイクスルーを召喚し、彼女に見せた。
「え、えと……これはクリスベクターをカスタムした銃だとわかりますが、このカスタムは見た事がないです」
彼女が眼鏡を正しながら教えてくれた。
「ちなみに、私のがこのアサルトライフルのGr-Mg333と言います。この型番のGr-Mgシリーズは存在しておらず、ゲーム等にも私の記憶にはありません」
ゲームにも無かったとツバサがいい、軽々とまではいかないが私よりも大きい銃を難なく持っていた。
「驚くべき性能は、操作性、反動、連射性、放熱性と本来ならあり得ないような拡張性が付随してました」
僕は饒舌になる彼女に相槌をうちながら、聞き入った。
「銃弾を発射後に銃身、つまりこの筒の部分は段々熱くなっていくのですが、この銃はどんな素材を使っているのか全く熱くならないんです。すごいですよ、これは!」
僕は何がすごいのかよくわからなかった。
「つまりですね、銃身が熱くなると一定時間冷却させたりしないと最悪銃身が破損して、銃が使い物にならなくなります。でもこの銃はその心配がいらないという事なんです。また、反動に関してなのですが砂利の砂漠で試射した時に、本来なら撃った際に衝撃が強くて私みたいな訓練もしてない身体だと腕の付け根部分がとても痛くなります」
そういって銃を構えて、左手で右腕の付け根を指さした。
「なのに、電動マッサージ機を当てたような反動しかなく、疲れにくくなっています。次に拡張性についてなのですが、私が見えてるアビリティ・スキルでは、現実世界では存在しない銃弾が使用できるようになっています。銃弾は色々種類があるのですが、簡単に言うとこの銃で使用できる弾はとても強く、本来ならそんなに連射なんてできないと言う事です」
彼女は銃弾が入ってるマガジンを取り出し、僕に見せてくれた。
「これがその銃弾?」
「はい、そうなんです」
先端が透明に近く、まるでクリスタルを削り出したような銃弾だった。僕はこれが何がおかしいのかよくわからなかった。
「本来、銃弾というのはこんな透明な何かではなく、もっと鉄っぽいんです。でもこの銃弾、アビリティ・スキルで確認すると特殊徹甲弾という名称なんです」
「徹甲弾ってこういうクリスタルな感じではないのか?」
ツバサの目がくわっと見開いた。
「全然違います。普通はこう鉄っぽい感じの見た目をしています。また詳しく材質を見ようとすると聞いたこともない金属名が出てきました。ミストウォーカーという名前の金属です。現実では聞いたことなく、よく聞くようなオリハルコンとかミスリルやヒヒイロカネといったものではありませんでした」
彼女の説明は段々熱が入っていき、自分のクリスベクターカスタムブレイクスルーの銃弾について見てみると同じように詳細が追加されていた。
「そして、驚く事にこのミストウォーカーという弾の特徴は――」
「ねぇ、なんでそんなに平気でいられるの!?」
ハルミンが嫌なものを見るような目で言った。
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