第28話
ヤバイ、と思った時に頭痛がした。ズキズキと痛み出し、目をしかめ、ヤバイのは自分の体調だった。頭に手を当て、地面の方に視線が向いてしまった。参ったな、疲れがとれきれてなかったのだろうか、と思った。
ムッツーはアカネと何か話をしているが、何を話をしているのか耳に入ってこなかった。
斜め後ろから、服の裾を引っ張ってくる感覚があり、マナチが何かを伝えたいのだろうとぼんやりと感じたが頭がうまく働かなかった。僕は頭をふったが、頭痛がおさまるわけでもなく、継続して頭痛がしていた。歯を食いしばりながら、前を向くと視界の中に入っている建物の一つから、人間の顔がこちらを覗いていた。
目が合ったそれは、ゆっくりと巣から現れてきた。頭、と思われる部分が陰から現れ、それは人間ではなく別の何かだった。僕、生存確率が今いくつなのか見るとそこには「検疫されました。」文字が数値の近くに表示されていたのだった。
検疫、という文字が防具に付与されて何か攻撃を受けてそれが反応しているのか?
再度頭痛がし、「検疫されました。」という文字がまた表示されたのだった。僕はその奇妙な生物が何かしてきているのかという疑問があったものの、それが何をしてきているのかわからなかった。
しばらくすると、その何かは、人っぽく見える頭の大きい、小さな人にしか見えた。だが、実際は腕が四本あり、脚も四本あり、上から見たら蜘蛛や蟻に近い構造が露わにった。頭は後頭部がある部分にもう一つの顔がついて、後ろにも顔があり、人間を背中でくっつけたような生物だった。両方の顔で僕を確かめるように首をぐるりと回してきたその姿は鳥肌が立った。
「アンドロギュノス? 男女が互いにくっついた雌雄同体の創造上の生物に酷似している?」
辛うじて、後ろでジュリが言った言葉が頭に入った。そうかあれは創造上ではあるものの、生物としているのかぁと思った。創造上なのに、なんでジュリは知ってるんだろう?
胴体の部分は昆虫のような形をしており、ところどころに指が生えているような体毛のようなものが転々と生えていた。グロテスクだ。
「紹介するね、ベェスチティって言うんだって」
アカネがその創造上の生物だと思っている何かをベェスチティと言った。
それぞれの建造物からぬるりと出てきたそれらは、人間と同じように顔つきや体格に差があった。どれもゆっくり出てきて、機敏な動きはしていなかったがどれも不気味さと気持ち悪さがあった。頭痛はさっきより、収まってはきたものの、不安感は高まった。
ベェスチティと呼ばれた生物は動くたびにポキポキと音が鳴っていた。関節を鳴らした時の音であり、関節が思った以上にある生物だとわかった。わかりたくないと思える気持ち悪さと音が相まって、それが単体ではなく、複数でポキポキと音が重なると怖気具合はひどく増した。
アカネがベェスチティと呼ぶ生物は、ただ僕たちをじっと見ているだけだった。
「な、なんだ……これは?」
「だからぁ、ベェスチティだってば! 結構前からここに住んでいるんだよ。いろいろ教えてくれるんだよぉ」
これは誰もが想像できなかった事態じゃないだろうか、そもそもこの奇怪な生物に出くわすとは想像できない。ツバサとジュリは想像はしていたか聞いてみたくなった。事前にこういう生物が現れる可能性がありますと二人から説明された所で、それで対処できるかと言われると無理ですと答える。それほどこれは気持ち悪い。
「ちゃんと言葉も通じるよ? やほやほー!」
アカネは一番近くのベェスチティの方を向き、両手で手を振ったのだった。すると、ベェスチティも四本の腕をゆっくりと振り、言葉を発した。
「ややほほーややほほー、ここんんににちちはは」
男と女が微妙に重ならない声で返事をしてきたのだった。さらに顔はにっこりと笑顔でさらに不気味さを際立てていた。
「もー、両方同時だと聞こえづらいよーキャハハ」
僕はアカネがどこかおかしいのではなく、この世界に来ておかしくなったと感じた。早くここから離れたいという衝動に駆られていた。
「ここら一帯がベェスチティたちと私の縄張りだから、来ないでねぇ~」
アカネは僕たちに言うのだった。もとより二度とここには近寄りたくないと思った。縄張りなら来ないし、というか二度と来ない。廃墟の街でこの生物たちの近くにいて大丈夫なのかとも思ったが、外には出てこないっぽいから大丈夫なのかもしれないが怖い。
僕はもっとこの生物の情報を知らないと今後何かあった時に、対策が出来ないと感じた。。またどこかアカネがおかしい状態だ。余程の事をしない限り襲ってこないのではないかと考えたりしたが、あのアカネの不気味さは何かある。ただ、感情的には一刻も早くこの場所から去りたい。タッツーに癒されたいからハルミンと場所を少しの間だけ変わってほしい。多分無理だろうけど。
後ろではジュリとツバサが漫画やアニメでお決まりな展開からすると今ここで殲滅しておかないと後々自分たちが餌にされたり、ベェスチティのような見た目に改造されるとボソボソと話をしていた。それが相手に聞こえていたら一斉に襲い掛かってきそうだから今ここで離さないでください。
「あ、そうだ! ここのリーダーがいるんだ。挨拶しておく? それともまた今度にする?」
僕は一度リーダーにあっておくべきだと感じた。
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