第24話
僕はハルミンの心情を汲み取る事ができなかった。そういった事ができていればきっと、僕は人気者になれていただろうと思った。そして、キャッキャウフフな展開になっていたかもしれないと妄想したが今はそれどころではない事を思い出した。
何が変わったのか、何か元の世界に帰る手がかりがあるのかもしれないと思い、ステータスウィンドウを表示させ映し出される情報を確かめる事にした。
だが、どこにも元の世界へ戻る手がかりとなるようなものはなく、どこか心の中でわかっていた。このよくわからない状況に向き合えないままだと突きつけられた気分になった。
「検疫……?」
マナチがつぶやいたのを聞き、僕はその言葉がある場所を探した。
検疫というアビリティ・スキルは自衛の中に防具に検疫が追加されており、未知のウイルスや毒物などから感染しないためのアビリティ・スキルだった。
未知のウイルスや毒物など、という表記が何とも大雑把だなと僕は思った。
ジュリとツバサの二人を見るとぼそぼそと増えたアビリティ・スキルについて話し合っているようだった。僕は可能な限り、怖がらせないように話しかける事にした。
「ツバサ、よかったら増えたアビリティ・スキルのことを教えてくれないか?」
するとツバサは頷き、ゆっくりとだが答えてくれた。
「今までの防具は 防刃、防弾、防炎、防水と様々なものが付与されてます。これにさらに防疫が付与され、殺菌効果などがつくのがわかりました」
僕は自分が着ている防具になんかいろいろついているという事がわかった。
「ただ私にもまだ判明できていない部分がありますが、様々な事から身を守ってくれると思います。そして、この防具の中に検疫があったのも、おそらく他のアビリティ・スキルもこういった形で解放されて本来の力を発揮できるようになるのかもしれないと思います」
僕は必死にツバサが説明していることを聞くがなんとなく強くなってるという事くらいしかわからなかった。
「あとこのタイミングだったというのが気になるよね」
ジュリは相槌をツバサに入れた。ツバサはずれた眼鏡を正しながら疑問を口にしていた。
「ゲームだど、こういうのって次のステージとかで必要になるから準備を怠るな、とかだよね」
「そういえば、ネズミって不潔ですし、黒死病を蔓延させたりしてましたよね……」
二人は検疫という追加されたアビリティ・スキルについて饒舌に語ってくれた。
「ツバサ、ジュリ……ちょっと聞きたい事があるんだけど、防具と銃って何か関係性あったりするか?」
ツバサとジュリは少しだけビクついたものの、僕に対して慣れてきたのか、二人ともすぐに頷いた。
「そのあたり知ってる事があれば教えてほしい」
僕は二人に頼むことにしたのは、自分自身これから何が起きるかわからない中で知っている事によって助かることもあると思ったのと、銃撃乱舞とかゲーム的知識で何かヒントがあるかもしれないと思ったからだ。
「多分、わからないのですけど、役割とかあってそれに合った武器と防具が割り振られてるのかも知れないと思います」
「僕はその、あまり詳しくないからわからないんだが、このアビリティ・スキルで召喚した銃によって使い方の向き不向きがあるってこと?」
「は、はい。例えば、ジュリの銃はゲームだと近距離向きだけど近距離だととても強かったりしたりします。私のは中距離向けのものだったりします」
「その近距離とか中距離っていうのは、どういう意味なんだ?」
「その戦う相手との距離です……」
「その距離とかどこでわかる? アーミーナイフのアビリティ・スキルの説明に書いていたりするのか?」
僕の中には焦りが生まれた。ただ武器と防具を持っていても、それが何となく使えるようになっていたものの、特性まではわからなかったのだ。銃を構えれば、使い方はわかるのに特性がわからない事に気づいた。
料理で言うと包丁で野菜や肉を切ったりするやり方をわかっているが、野菜や肉に対して適切な切り方をしらないという状態だった。綺麗には切る事ができるが、料理に適切な状態に切ることができないのだ。
「え、えと……そのアビリティ・スキルを表示させて、銃に使い方を意識を向けると文字が表示されるのでそれをもっと詳しく、って思うとまた文字が出てくると思います」
僕はさっそく、アビリティ・スキルを表示させ、クリスベクターカスタムの文字に意識させていくとより詳細な文章が表示されていき、これがただの銃ではない事を知るのだった。
そこに書かれていたのは、有効射程距離は百メートルから六百メートルであり、使用されている弾丸は特殊徹甲弾と書かれていた。特殊徹甲弾ってなんだと思い、意識していくとコンクリートや防弾使用の防具に対してダメージを与え、破壊すると書かれていた。効力が発揮する距離は百メートルから三百メートルと書かれていた。
つまり、防御無視な攻撃を与えられるという事だと思った。
「あ、あ……ありがとう!」
僕は自分の銃の特性がわかり、二人にお礼を言った。ビクッとし、お礼を言われたことに驚き、二人は頷いた。
その後、アビリティ・スキルの説明を食い入るように見ては、クリスベクターカスタムを召喚し、確かめたりした。
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