第7話
「それで私たちが協力することでそれぞれでのアビリティ・スキルを共有していけるのはわかったわ。他は何か発見したことはある?」
タッツーがムッツーのフォローに入った。まるで生徒会長と副生徒会長のような感じだったので、タッツーの事は副生徒会長枠と僕は脳内にメモした。
「アビリティ・スキルで何か出した際に、使ったことがない物に対して使い方がある程度わかること、です」
伏目になりながらツバサはおどおどとしていた。どうやらムッツーを赤面させてしまって、タッツーから叱られたと感じてしまったのかもしれない。
「それってつまり銃器とかそういったものも全くの素人じゃなく、使い方がわかるってこと?」
「……はい、実際に昨日テント内で拳銃を出してみたら、今まで触ったことがないのに使い方がわかりました」
誰かのつばを飲み込む音が聞こえ、隣の人に心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思うくらいそれぞれが緊張をしていた。
「ふ、ふっ・・・ふふ、ば、ばかばかしい。触ったら使い方がわかるだって、そんなわけないだろう」
ムッツーが首を振りながら否定し、ツバサがそれをみて悲痛な顔をした。
「だ、だし、出してみて確かめてくだひゃい!」
ジュリがツバサを庇うようにムッツーに食い掛った。
「うっ」
ムッツーはたじろいでしまった。そんなわけないと否定を通したかったが、ジュリの必死さに確かめざる得ないといけない雰囲気になった。
「わ、わかった……」
ムッツーは意識し、アビリティ・スキルの銃器を召喚した。すると、テーブルの上に現れ、ムッツーは恐る恐る手に取り、凛々しい顔から目を見開いて銃を触っていた。
「ほ、本当だ……」
ムッツーを持つと映画とかで見るような手つきで銃を構えたり、なんかスイッチをいじったり、どこかに標準を合わせたり、なんか様になっていた。そして、意識して銃を消して、ツバサの方を向いて謝ったのだった。
「す、すまなかった」
「い、いえ」
「ってことは、テントとか組み立てられたのもそういうことだったってこと?」
ハルミンは立ち上がり、ショックを受けた顔をしていた。
「は、はい、そうなります。はい」
「私って天才じゃんと思っていたのに・・・そんなぁ・・・」
「ふふっ」
タッツーが噴き出し、それにつられて周りも笑い出した。
え、何? もしかして、テントを組み立てられたのもこのアビリティ・スキルの恩恵だったって事?
微妙な空気だったのが、和気あいあいとなっていった。僕もつられて一緒に笑みを浮かべ、空気を読む事にした。そのままこの不思議なアーミーナイフについて互いに理解を深める事になった。
自衛で召喚できる銃器などを一通り触り、他に出せるものは全て試し、理解していくことにしたのだった。気になったのが銃器は人それぞれ個性があるのか、同じ見た目のものはなかった。僕が召喚したものと同じものを持ってる人はいなかったのだ。
防具もそれぞれデザインが違い、サイズはその人に合った物になっていた。皆、それぞれ今まで着ていた服から着替え、動きやすく転んでも膝など擦り切れないガードがついた防具に着替える事になった。正直、革靴とかより遥かに歩きやすい。この砂利の砂漠みたいな所は、足がとられるところもあって、転ぶ事もあるのを考えると着替えた方がいいという結論になった。
来ていた服などは、リュックサックを召喚する事で解決した。このリュックサックも同じデザインじゃないのでどうしてこんなに違うんだろうと思った。
誰一人として、スカートじゃなくなった。
これからパンチらハッピータイムは来なくなった事は悲しいが、そんな邪な心をこの中の誰かに知られたら、今は協力状態だけど、ハブられてしまう。まあ、でもハブられても生きてはいけるけれど、心が死んじゃう。
「ヨーちゃんの格好、かっこいいよね」
着替えた後に、マナチが話しかけてきてくれた。
「そ、そうか? ありがとう」
フード付きのケープみたいなローブを上から羽織っていた。その下は、ベストに長袖インナーに穴あきグローブとか特殊部隊が着てそうな服だった。いやどちらかというと何かのコスプレっぽさがあった。
マナチの方を改めて見てみると、厚ぼったさがある防御力高そうな服装だった。
「へ、変かな?」
「いや、強そうだな、って」
「も、もう!」
「ふ、ふふっ、すまない」
からかったら怒られた。だが、怒った顔はかわいかった。よしっ!
他の人の防具を見てみるとムッツーとタッツーは似たような恰好をしていて、なんというか体のラインがでやすく、なんかとてもエッチかった。眼福。
ハルミンは、軽装な感じだった。ツバサは僕と同じような感じだけど、もっとポンチョっぽい感じだった。ジュリはハルミンとは違う軽装だが、防御力高そうな感じがした。
ムッツーとタッツー以外は、実用性を重視している感があった。これはお色気担当はあの二人ということかもしれないと思った。
「おい、あまりジロジロみないでくれ……その恥ずかしい」
「あら、私とそんなに恰好変わらないでしょ」
ムッツーとタッツーの会話が聞こえ、可能なら僕もジロジロ見たいですと会話に混じりたかった。いやその混じり方だとただの変質者だった。自戒自戒。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます