第5話

 冷静に考えてみれば、今持っている物はこのアーミーナイフだけだ。なので何か小さいマッサージ機器なんてものは持っているわけがない。どうしてこうもそういった事を考えてしまうのか、これは思春期のせいだなと曇り空を見て結論を出した。

 

 何やらタッツーはポケットに入れていたアーミーナイフを取り出したが首を傾げていた。

 

「え、えと、ステータスウィンドウみたいなナビゲーションを想像すると空中に出てきて、その、あの……」

 

 彼女はツバサの説明についていけなかったのか、頷きながら理解してない感じだった。

 

「うおおおお!!!できました!!!すごい!!!これどうなってるんですか!?」

 

 タッツーの横にいたハルミンが興奮しながら空中に指をタッチパネルがあるかのように動かしていた。僕もアーミーナイフを見ながら同じようにステータスナビタイム! と心の中で叫ぶとゲームで見た事ある画面が表示された。

 

 飾りっけのない、レトロゲーみたいなステータスウィンドウだった。

 

 僕はテンションが上がったが同時に不安も感じた。これツバサとジュリがいなかったら、わからないままだったのでもしも何かあったら詰むなと思った。

 ステータスウィンドウを見ながら周りを見てみるとムッツーとタッツー以外は出来ているのか空中で指でステータスウィンドウをスワイプしたりしていた。あの二人は、お嬢様系なのかゲームとか遊ばないのだろうなと思った。

 

「それで、その……アビリティ・スキルの中に、生活という項目にいろいろあって……」

 

 僕はアビリティ・スキルと書かれている場所を指で押した。ステータスウィンドウはそこにあるわけじゃないので、空中で何も感触がない場所に指でつんつんするのは何かバカっぽいなぁと思った。

 すると、そこには「自衛」「偵察」「生活」「特殊・自動化」と分類されていて、「自衛」と「生活」だけが閲覧可能状態だった。他の二つはグレーアウトされたままで、押しても反応を示さなかった。

 

 ふと、タッツーとムッツーはもうさすがに見れただろうとチラ見したら、まだ見えていないのか僕たちの行動が集団幻覚を見ている危ないやつらを見るような目で見ていた。大丈夫だ、その感覚は間違ってない、僕も戸惑っている。

 

「ヨーちゃん、なんかキャンプ道具みたいなのあるよ」

「生活のところか?」

「そうそう、なんかいろいろあるね」

 

 マナチが話しかけてきて、生活の所を詳しく見てみるとそこにはテント、寝袋、簡易トイレ、一人用焚火、BBQセット、椅子、テーブルなど一覧があった。

 

「これなら、休憩するときに椅子とか召喚すれば砂利に気にしないでいられるな」

「そうだね!」

 

 そして、生活の中に食料も表示されており、水と食料の懸念は解消された事に安堵した。そして、「自衛」というのを僕は詳しく見る事にした。この文字からして、何か脅威から自分を守らないといけないということを意味していると思った。

 自分の中にある欲望を解き放たないように自衛するために貞操帯とか卑猥な事を考えると電流が流れる……いやそれは何かに目覚める可能性があるから自衛にはならない。周りの人たちを見て、この中で冷静でい続ける自信は割と低い。そうなってくるとやはりて貞操帯が必須になってくる、問題は着用時に違和感がないかとかトイレする時に問題がないかなども大事だなと思った。

 

 様々なことを考えながら、いざ詳しく見るとそこには銃器と防具があった。まずは防具から見てみようとタップするとマナチが着ている服とは違うデザインの防具が表示された。帽子、マスク、下着、上着、ズボン、靴などがあった。

 マナチが着替えていた服と似たようなズボンだが、デザインが違った。もしかしたら、人それぞれ違うデザインなのかもしれないと思った。

 

 こういう服って軍隊とかで使われているのかな、と僕は思った。

 

 次に銃器の方を詳しく見てみると、サブマシンガンと書かれており、もっと詳しい書き方があるだろうと思ったら、「クリスベクターカスタム」を書かれていた。銃に詳しくない自分は、何か説明とか書かれていないのかと名前の所をタップしようとした――

 

「ヨーちゃん何見てるの?」

 

 突然声をかけられ、驚きはしたものの顔には出さずに答えた。別に悪い事をしているわけではないけれど、何かこういけないものを見ているような感じがあった。だって、銃とか持ってるだけで逮捕されるし、かっこいいなと思うけれど危ないしね。

 

「自衛の中にある銃器とか防具とか、見ていた」

「えぇ、怖くない?」

「怖いけど、自衛って書いてあるってことは、何かあるのかなと思って」

 

 気が付くと周りはテントとか椅子とか出していて、自分だけステータスウィンドウとにらめっこしていた。僕もキャンプ道具から椅子を召喚し、テントとか設営しないとなと思った。あたりは大分暗くなってきて、時間はわからないが、とりあえず寝る場所を確保しないといけないと思った。

 多分、今日はもうこれ以上進まないだろうし、テントの設営とかやったことないから時間かかる。しかし、周りを見るとみんなやったことあるのか、てきぱきとテントを設営していた。もしかして、僕だけキャンプ経験なしなのかなと思うほど手際よくしていた。

 

 あのツバサとジュリでも戸惑いながら設営していて、驚いた。

 

「マナチはテントできたの?」

「うん、そこにあるやつだよ」

 

 後ろを見ると立派なテントが出来ていた。僕もテントを召喚し、マナチとは少し離れた場所に設営しようとした。プライベート空間が確保されたとはいえ、声が漏れるかもしれないし、声が聞こえたらドキドキして寝れない。

 

「もっとくっつけてお隣でいいじゃん」

「お、おう」

 

 抗うのもおかしいか、と僕の理性はマナチの隣に設営した。特にテントを組み立てるのは初めてだったが、割と簡単に設営でき、最近のテントは組み立てが楽なんだなと思った。

 僕たちはテントの前で椅子に座りながら話をすることにした。ほかの人たちはみな思い思いに休憩していたのもあり、空気を読むことにした。

 

「それで自衛が必要になるような事があるってこと?」

 マナチがさっき僕が見ていた自衛の項目について、話が気になったのか聞いてきた。僕の中ではすでに今夜まともに寝れるのか気にしていたが、頭を切り替える事にした。こういうのは切り替えが大事だ。

 

「わからない。わからないけれど、自衛と書いてある時点で私は嫌な予感をしている。マナチ―は?」

 

 そうなのだ、僕でさえ本能、欲望、心の情動がうずいてしまうんだ。この嫌な予感は、思春期特有のものだ。落ち着け僕、落ち着くんだ。

 

「私は、わけわからなくて怖い」

「そうだよね」

 

 僕も自分自身がわけわからなくて怖い。よく考えなくても今までいた場所と全く違う場所に知らない人たちでキャンプとかコミュニケーション能力低い僕にはどうしたらいいのかわからなくて怖い。


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