第2話
僕たちは歩きながら、光りが見える方向へ歩いていった。その光は朝焼けのような眩しさはなく、直視しても目が痛くならない程の淡い光を放っていた。
「あの光りがある所まで、どのくらいなんだろ」
マナチが足を引きずっているような足取りをしながら、ボヤいた。僕が後ろを振り返るとツバサとジュリも同じような感じで歩いてるのが目に入った。
「マナチ、わかる。ほんと遠いよね、私は休みたくなってきた」
ハルミン、彼女も疲れているのかマナチに同調した。
「ヨーちゃんも一休みしたくない?」
「ん、ああ」
突然、あだ名を呼ばれたことでドキッとしてしまい、下手な返事しかできなかった。僕は返事をした後に、指で自分の唇を触り、落ち着かせた。
「休むにしてもあたり一面砂利だらけで、座れる場所もないぞ」
「確かに、汚れてしまいますね」
ムッツーとタッツーはどうやら先を急ぎたいようだった。
「とはいえ、歩き続けないと今日中にたどり着けるかわからないしな。ジュリとツバサは大丈夫か?」
ムッツーは七人の中で遅れてきてる二人に声をかけた。
「は、はい、大丈夫です。行けます」
ジュリは身長が低い分、歩幅も他よりも短く遅く、また体力もそこまでなかった。
「わ、私も・・・だい、大丈夫です。はい」
ツバサは運動が苦手でありジュリと同じペースであり、体力もそこまでなかった。
どう見てもこの二人は休憩しないときつそうだった。
「ねぇムッツー、ここらでちょっと休憩いれましょう」
「さんせーさんせー」
タッツーはムッツーに提案するとハルミンはすかさず同意した。一同はいったん立ち止まり、その場でしゃがんだり息を整えたりし、休憩することになった。
「み、水がほしい・・・」
マナチはその場にしゃがみ込みぼそりと嘆いた。僕はそれを見て、このまま飲まず食わずのままではいずれ力尽きてしまうと思った。
マナチがため息をして、手のひらをにぎにぎしていると水が入ったペットボトルが彼女の手に握られていた。
「えっ・・・」
彼女は驚き、僕もその光景に驚いた。そして、こともあろうかペットボトルを開けて、そのまま飲み始めた。ごくごくと勢いよく飲み、口の端から水が少しこぼれていった。
「お、おい」
ペットボトルを開けるのを見ていたのは僕だけじゃなく、ムッツーも見ていたのか後ろから声がした。マナチは気にせずごくごくと飲んだ。半分くらい飲み干した後に、マナチはムッツーの方を向き、間抜けな顔をしていた。
「おま、いや、マナチそれどうしたんだ?」
「なんかあった」
「いや、あったって・・・持っていたのか?いや、あり得ない・・・えっ、どういうこと?」
「わからない、水がほしいと思ったら目の前にあった」
「そ、それで・・・開けて、飲んだと?」
「うん、普通に水だった。飲む?」
僕は目の前の状況についていけなかった。それはムッツーも同じく、ついていけてなかく、理解が追い付かないのか頭を抱えた。
「ねぇ、そのペットボトルってどうやって見つけたの?」
タッツーは頭を抱えるムッツーの横からマナチにやさしく聞いた。
「水が欲しいと思ったら目の前に出てきた」
「む~」
タッツーは唸りながら目を閉じ、水が欲しいと願ったが何も起きなかった。
「他はどんな事、思ったりした?」
「コンビニにおいてあるペットボトルの水が欲しいなぁと思ったよ」
タッツーはマナチが言われたように思い浮かべたのか、タッツーの手には水が入ったラベルのないペットボトルが握られていた。
その時のタッツーの顔は、マナチもたじろぐくらいの表情だった。僕からはその表情は伺えなかったが、マナチの驚きようから相当不思議な表情をしていたのだろうと思った。
落ち着いたタッツーはペットボトルを開け中身の臭いを嗅ぎ、口につけて飲んだのだった。
「水ね」
「た、タッツー? それ・・・どうしたんだ?」
「ムッツー、落ち着いて聞いて、ペットボトルの水を欲しいと思い浮かべたら出てきたわ」
「え、どういうこと?」
何かあったと察したほかの四人は、いつの間にか周りにいて、タッツーが言っていることを実践し、それぞれペットボトルを手に入れ、開けて飲んだ。
「え? え? え・・・?」
ムッツーだけ状況がのめず、水を飲めずにいた。
なお僕は普通に水のペットボトルを召喚できた。ムッツーの慌てようを見ていて、ちょっとかわいいところがあるんだなと心の中で思った。
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