びびるなダイナマイト

@tsujion

第1話

俺はダイナマイトだ、生まれてからずっとダイナマイトだ、様々な人間が毎日俺の元に仕事を持ってくる、けれどそのどれもを断っている、なぜなら俺はダイナマイトだから仕事をする=爆発して死んでしまう、だからだ。今日はドロドロの作業服に身を包み「安全第一」と書かれたヘルメットを被りツルハシをもった人間がやってきた、彼が言うには採石場と言う所で俺を爆発させて人間たちの仕事場を増やしたいらしい、俺は「とんでもない!俺を使ったら爆発が大きすぎて採石場の鉱石ごとぶっ壊してしまう。そうだ、そこのダイナマイトを使うといい、彼なら爆発も小さいからちょうどいいだろう」と人間に伝えた、本当は同じように作られたダイナマイトなので爆発の大きさは同じなのだが、人間はそれを聞くと俺じゃない方のダイナマイトを持っていった、ふぅ、今日も生き長らえた。

 また少し経った頃大柄で小綺麗に整えられた軍服姿のまるで熊のような人間が来た、その人間が持ってきた仕事は他国との戦争があるからダイナマイトで敵を爆殺したい、と言うものだった、俺はまた「とんでもない!俺を戦争なんかで使ったら爆発が大きすぎて味方ごと爆発させてしまうぞ!そうだ、そこにあるダイナマイトを持って行くといい、彼なら爆発も小さいから使いやすいだろう」と言うと大柄な人間はフンッと鼻を鳴らして俺じゃない方のダイナマイトを持って行った、ふぅ、今日もやり過ごせた。

 こんな感じでもう十年が経った、俺は今ゴミ箱にいる、十年の長い年月は俺の中の火薬を湿気らせるには十分な時間だった、俺は今猛烈に後悔している、ダイナマイトとして生まれたのに爆発せずにゴミとしてこのダイナマイト生を終えるのか、俺は爆発するのが怖かった、爆発に予行演習なんて無い、完全な未知にびびっていたんだ、勇気が無かっただけだったんだ、俺の身代わりになったダイナマイト達は華々しく爆発してダイナマイトとしての使命を全うしたのに俺は薄暗いゴミ箱の底にいる、爆発出来ないままで、チャンスはいくらでもあったのに。

 あぁ、涙が出てきた、火薬が俺の涙で更に湿気っていく。

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