邪神の加護を受け魔王に。

モンド

第1話 プロローグと魔法誕生

ーー プロローグ



ゼスト王国の東の外れにその村はあった。


ここの国王は、とても強欲で常に隣国の隙を窺っていた。


そんな王国が女神の「使徒様」と呼ばれる者の怒りを買い、その為に王国は滅亡することになったのが、1ヶ月ほど前のことだった。


そんな中、魔物が溢れだし村はその魔物に襲われた。


さらに魔物達は、隣国センターターク王国に向かい、「使徒様」の力で殲滅されたがそれを起こしたのがこの国の国王と判り。


「使徒様」の怒りを受け王国は滅亡に向かうことになった。


王国が滅亡しようが新しく国が興ろうがそこに住む民には関わりのないことであった。


男は魔物に家族や友人を殺され、たった一人生き残った幼い妹も飢えのために死んでしまった。


男の怒りは何処の誰にぶつければ良いのか。


傷だらけになりながらも、数多くの魔物を倒した男はレベルが限界突破し、怒りが身体強化を会得させた。

そんな時にある声が聞こえ始めた。


『お前に力を授けてやろう。何からも自由を奪われない力を』


とその日から毎夜男の頭に聞こえ始めた。



             ◇



男は慣れ親しんだ村を捨て、新天地を求めて旅を始めた。


そして、同じように荒廃した村を捨てた幼い兄弟と旅を共にしていた。


兄妹は言う


「あのねお兄ちゃん、センターターク王国には、使徒様が居て孤児や困っている子供たちを多く助けていると聞いたんだ。だからね僕たちと一緒にそこに行こうよ。」


男は、躊躇した。


男の国が荒廃したのは元は国王のしたことが原因かもしれないが、それを見捨てた使徒様と呼ばれる存在も許せなかったのだ。


力を持つものが弱いものを助けず、切り捨てたことに。


その後3人は山を越えセンターターク王国にもう直ぐ入ると言うところで、盗賊に襲われた。


突然、弓矢の攻撃を受け兄妹と男が離れると盗賊が兄妹を攫って行ったのだ。


男は弓矢を叩き落としながら、攫われた兄妹を追うが見失ってしまう。


その日から男は周辺を探し回り、やっと盗賊の寝ぐらを見つけた時には兄妹は既に、奴隷商人に売り飛ばされていた後だった。


盗賊らを皆殺しにした後男は、奴隷商人を追いかけた。


3日後にその奴隷商人に追いついたが、奴隷商人は


「商品をただで返せと言うお前は強盗盗賊と変わらぬ、返して欲しくば金を持ってこい。」


と言われ、男は怒りの為我を忘れた。


男が気づくとそこには、死体の山しかなかった。


その中にその兄妹の死体も有った。


男は、何故こんなことになったのか自分を責めると共に、この世界を恨みました。


その夜また声が聞こえました。


『お前の怒り、よく分かるぞ。強くなってその怒りを正しいと思うことに使ってみないか。お前ならこの狂った世界を変えられるはずだ、この腐った人間を一掃して新しい世界を作るのだ。』


その声と言葉に男は、心を動かされ、


「分かった。俺に力をくれ。」


と叫んでいた。


そしてこれが、邪神の加護を持つ男が生まれた瞬間であった。




ーー 魔王誕生



邪神の加護を受けた男は、その日から身体に湧き上がる力と怒りに自我を失いつつあった。


それでも辛うじて自我を保っているのは、兄妹を手にかけた自責の念がその罪滅ぼしをしたいとの気持ちで保っていたのだ。


しかしそれすらも吹き飛ばす衝撃が男を襲う。


奴隷商人を追ってサハラ王国に立ち寄った際に、砂漠の国でそこに住む国民は常に飢えて苦しい生活をしていると聞いていたが、何と水を湛えた水路が巡らされとても豊かな国に生まれ変わっていたのだった。


「どうしてなんだよ!何故俺の国は助けてもらえなかったんだよ!」


男の声は誰にも伝わらなかった。


その時、この世界の理不尽が男の理性のその最後の綱を切り裂いたのだった。


ここにこの世界で初めての「魔王」が誕生した瞬間だった。



                ◇


魔王となった男は、


 固有スキル [魔物を統べるもの]、[怒りの鉄槌]


と言うスキルを新たに持っていた。


魔物に苦しめられた男がその魔物を従えるスキルを持つ、何と意地くその悪い仕打ちか。


男が歩くたびに、この世界の草木が枯れ果てる、そして魔物が湧き出でて男の後ろに付き従う。


男に付き従う魔物は、他の魔物と違い男が指示しなければ、人を襲ったりしないようだ。


男は少しずつ大きくなる魔物の群れを連れて、元の村に戻る。


元ゼスト王国の荒れ果てた王都にて入った男は、ここに新たな王国を作ることにした。


魔王城と魔王の国ができた瞬間である。



                 ◇



高位の魔物は、食事を必要としない。


魔素を取り込んで身体を維持するのである。


魔王はその湧き出る魔力を魔素に変え、従える魔物を支配しているのだ。


魔王は、先ずこの付近にる魔物を自分の配下の魔物に一掃させた。




ーー  勇者の存在



魔王が周辺の魔物を一掃した結果、周辺隣国に魔物が逃げ込むように侵攻することになった。


周辺王国は、軍隊と冒険者を使いその魔物を防いだがその過程で、魔王の誕生を知ることになる。


教会はその情報を各国に流すと、勇者の選定を行い始めた。


魔王には教会で選定した勇者でなければ太刀打ちできないと言うのが、教会の常識であったが、今回の魔王は今までと違うことに気づいて居なかった。


今回の魔王には、この世界の女神から渡された「聖剣」も勇者の固有スキルも通じないのである。




ーー 女神の憂鬱 シーアカータ   side



この世界を管理する女神シーアカータは、悩んでいた。


この世界は女神が管理する数ある世界の一つの世界であったが、女神は本気で管理する気はなかった。


そのため問題が起こると、適当な理由をつけて異世界人を召喚したり、適当な人物に加護を与えたりしていたのだ。


しかしそれで上手くいくのは、彼女の管理に含まれるものだけ、今回の魔王は何故だか女神以外の神が加護を与えて誕生したもので、彼女の力が及ばないのである。


よって聖剣や勇者のスキルがただの武器や攻撃にしかならないため、魔王以上の力を持たなければ敵わないのである。


魔王のレベルは、400。


女神も知らぬスキルさえ持っている可能性があるため、女神は誰にその力を分け与えるか悩んでいたのであった。


何故なら、魔王に負けると言うことは、女神が与えた力が魔王または魔王に力を与えた神に流れると言うことで、女神の力を奪う目的さえ考えられるのである。




ーー  王都と教皇の憂鬱



女神シーアカータの神託が各国の教会に降りてきた。


「魔王が誕生した、魔王を撃つために勇者を選定せよ。勇者がレベル400以上になるまで、魔王と戦わせてはならぬ。」


との神託であったが、今までの記録では


・勇者は魔王一人に対して一人。

・勇者のレベルは、100〜200。

・聖剣は一本のみ。


これからすると、各国で勇者を選定しレベルを400以上に上げると言う神託は信じ難いものであった。


その為、十分にレベルが上がらないところで勇者が魔王に挑むことになれば、


勇者が魔王に倒される、これ以上の醜聞はない。



教会と国王の憂鬱は続く。

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