25歳の俺が中学2年の頃にタイムリープしたら、精神年齢が高いというだけで学校一の美少女と付き合えた話
もろもろこしこし
第1話
言うまでもないが、この世界は不条理である。
持たざる者は一生持たざる者として、その生を終えることになるだろう。
それはこの俺、小林貴志(25歳)にも当てはまることである。
俺は無難に人生を過ごしてきた。普通に学校に通って、男友達とそれなりにバカもして、そこそこ勉強もして、親と同じく公務員になり、市役所で働いている。
パリピのように、大勢でウェイウェイ遊ぶことは苦手だが、学生時代からの仲のいい男友達も4人いるから、まあ楽しく生きさせてもらっている。
ちゃんと仕事もしてるし、友達もいるし、アニメや漫画も好きで、休日も趣味で充実してるから、この人生は幸せと呼んでもいいのだろう。
だがしかし。俺は彼女が欲しい。めちゃくちゃに欲しい。
だから今、全く満たされていない。俺以外の友達はみんな彼女いるし、なぜか俺にだけ全く彼女ができない。
実を言うと、人生で一度も彼女なんてできたことがない。
めちゃくちゃ陰キャで女子と関わることがなかったから、というわけでもない。
高校でも普通に女子と話してたし、大学のサークルでもしっかり女の子とは関わりもあった。
なんなら今は、めちゃくちゃ課金して、マッチングアプリだってしている。
なぜモテないのか、それは、「ただ優しいだけだから」とのことだ。
俺は別に顔がいいわけでもないし、面白い話ができるわけでもない。普通に人の話を聞いて、普通にリアクションして、普通に過ごしているだけだ。
そんなの、25歳だったら誰でもできることだろう。
だから、俺と過ごしていても、なんの刺激もないし、何も起こらないし、退屈だと思われてしまうのだろう。
そして、アンパイだと思われて、勝手に友達認定されて、密かに狙っていた女子から好きな男の相談とかされたりするのだろう。
しかし、こういう優しい男は案外、俺の好きな漫画やアニメの世界ではモテたりする。
幼馴染や隣の席の女の子にギャル、クール女子、主人公の優しさがその子たちだけにはしっかり理解でき、好かれるというものである。
読者諸君もわかるであろう。優しい男などこの世にめちゃくちゃいるし、大人になれば、優しいというか皆、大人の対応ができるようになるから、優しく見えることなんて普通ということを。
男子が優しいことが特別に思えるなんて、中学生くらいまでだろう。中学生の時なら、思春期真っ盛りで、男は誰しもが女子に思ってもいない悪態をついてしまう。
どんなに心が優しいやつとて、男友達たちにからかわれると、咄嗟に身体が反応して、照れ隠しで悪態をついてしまうだろう。
仕方のなきことよ。嗚呼、なんと無力なことか。
高校でも照れる者も多いだろうが、やはりしっかり大人になるやつもいるので、やはり中学までだ、優しい男がモテるのは。
おっと、そんなことをつらつらと考えていたら、さすがに酒を飲みすぎてしまったな。
部屋で1人で飲むと、飲みすぎてしまうことが多いから気をつけないとな。
明日も仕事だ。もう寝るとしよう。
ーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーおい、ーーーおい小林、小林!!」
誰か呼んでいるな。
「小林、おい聞いてんのか!」
目の前には学生服を着た男がいた。
なんだこいつ、いや待てよ、なんか見たことあるな。
「なにぼーっとしてんだよ!俺の話聞いてんのか?」
あっ、思い出した。こいつは、中学の頃の友達、橋本だ。懐かしいなこいつ、元気じゃん。
いや、ちょっと待てよ、学生服。え?俺も着てるじゃん!
どういうこと?昨日は普通にいつも通り、酒を飲んで寝たはず…。これは夢か?いや、テンプレでほっぺをつねったが、普通に痛い。ま、まさか、アニメとか漫画とかでよくあるタイムリープってやつか!?
「お、おい、橋本。今、俺らって何年生だっけ?」
「あ?小林いきなり何言ってんだよ?俺ら中2だろ?」
ちゅ、中2!?マジかよ、めちゃくちゃ戻ってんじゃねーか!また、人生ここからやり直すのかよ!
いや、待てよ、ここから頑張れば何にだってなれるんじゃねーか?勉強頑張って、東大行くとか、株で大金持ちになるとか!
…………いや、やっぱいいや。めんどくせーしな。普通に無難に生きて、また同じような人生過ごすのが良さそうだな。
株もよくわかんねえし、勉強するの面倒臭いし、正直なにかに頑張るってことがもうできないんだよなぁ。
それだったら毎日普通に過ごして、漫画とかアニメ見るのがいいわ。
あっ、今なら「これリアタイで見たかったな〜」ってアニメ、全部リアタイで見れるんじゃね!!
テンション上がってきたー!!
タイムリープ最高じゃん!!ボカロとかも今、全盛期じゃね??ジャンプのラインナップも激アツな可能性がある!!
おいおい、最高の青春が過ごせそうじゃねーか!!
「おい、小林。次は気持ち悪い顔をしだして、何やってんだ?」
あ、こいつの存在忘れてた。
「すまん、橋本。考えごとしてた。」
「なんだよ、考え事ってー!もしかして、神崎さんのことでも考えてたのか??笑」
ん?神崎さん?……ああ〜懐かしいな〜!確か、学校一可愛かった子だよな!クラスもずっと3年間一緒だったから嬉しかった覚えもある。懐かしい〜!あの頃は俺も憧れてたな〜!だって普通に可愛いかったしな!確か数回だけ話したことあったけど、めちゃくちゃ緊張して、「はい」とかしか言えなかった気がする…。若かったな〜あの時の俺。仕事だったらどんな人でもちゃんと話しないといけないしな〜。で、社会人だとしっかりメイクも上手にしてるのもあって、みんな綺麗だからな〜。最初は緊張してたけど、緊張してたら仕事にならないし、何も思わなくなったな〜。
おっと、また考えすぎたか。早く返事しねえと。まあ否定するのもめんどくさいし、乗っかっておくか。
「まあ、そうだな。神崎さんのこと考えてた。」
「ええーー!!マジかよ!!なにお前、やっぱ神崎さんのこと好きなの??いっつも見てたもんな!!」
え?俺、中学の頃、そんなに見てたっけ?まあ、確かに可愛かったしな〜。憧れるくらい、平凡な男にもさせてくれよ。
まあ、可愛かったし、あの頃の俺も多分気になってたし、好きってことでいいか。
「おう、好きだぞ。」
「ま、マジかよ!!おーい!!みんな!!今、小林が神崎さんのことが好きって、はっきり言ったぞー!!こいつ、神崎さん好きらしいぞー!!」
おー、やるね橋本。これが中学生か〜。まあ、恋愛の話なんて、最高におもしろいじり話題だよな〜!それも学校一の美少女の神崎さんのことならもちろん。
「お、おい小林、神崎さんのこと好きってマジかよ?笑笑」
「神崎さん、呼んでこよーぜ!笑笑」
「いいねいいね!小林にここで告白させてやろうぜ!笑笑」
橋本がそんなこと言うもんだから、クラスのよくわからん男どもがクソ面白くないことが始めやがった。
こいつらどうせみんな神崎さんのことが好きなくせに、告白もできないしょーもないやつらだ。
まあ、中学の時は俺もその1人だったんだが。
誰かが、あの美少女に告白して振られるのがただ見たいし、それを見て楽しみたいんだろう。あわよくば、俺のことをネタして、神崎さんの話すのを目的にな…。
本当にしょーがないやつらだな。まあでも中学生なんて、そんなもんか。
「おーい!小林ー!神崎さん、呼んできたぞー!!」
仕事が早すぎるなこいつら。なんだこの一体感は。
「えっと〜、小林くんが話があるって聞いて来たんだけど…」
久しぶりに神崎さんを見た。黒髪ロングで清楚な雰囲気、中2とは思えないほど、色気もある。
まあ、中2にしてはってことだから、中身25歳の俺からしたらまだ子どもだなぁ〜。まあでも、やっぱりすごく顔も整ってるし、こんなふざけたことにもしっかり向き合ってここに来てくれるし、優しい人だなぁ。とんでもないイケメン御曹司みたいな人と将来付き合ってそうだな。
まあ、それはいいとして、ここまで来たら告白するしかないか。中学生のお遊びに付き合ってやろう。
「神崎さん、あなたが好きです。俺と付き合ってください。」
「えっ!??」
そんなに驚くことか?というかちょっと顔赤いし。どうしたんだ?
「なんか顔赤いけど、大丈夫?」
「え?いや、大丈夫大丈夫!ちょっとびっくりしただけ!そんなに冷静にはっきり、す、好きって言われたことなかったから…」
へ〜そうなんだ。まあ、告白されたことは何度もあるだろうけど、中学生の告白なんて、顔真っ赤にしながら、緊張で声張り上げちゃうもんね。さすがにテンション低すぎたかな?まあ仕方ないか、中身25だし…なんか嘘ついてるように見えたかな?好きだったのは本当だし、まあせっかく告白もしたし、念押ししておくか。
「そうなんだ、でも俺が神崎さんを好きってことは本当だよ。」
「ひゃっ!?!?あ、ありがとう…」
あれ〜??なんかまた顔真っ赤にして、黙っちゃったぞ?どうしたんだ〜?
「ち、ちなみに小林くんは、私のどこが好きなの…?」
え、なんか上目遣いで可愛いこと聞いてきて、すごく推せるんですけど〜!!中学生、可愛いな〜!!俺が失ったピュアさを持ってるー!!まあ、いきなりの告白だったしな、ちょっと気になるんだろう!答えてやろう!
「そうだな〜、まずは圧倒的に可愛いところ。次に優しいところ。普通の女の子だったら、こんなよくわからないやつの告白なんてちゃんと聞かないよ?あとは、まあまただけど可愛いところかな〜。顔ももちろん可愛いけど。さっきから反応も可愛いし、多分中身もこれからもっと知っていけば、可愛いところだらけなんだろうな〜って思う。」
おお、自分で言って気づいたけど、俺、神崎さんのことめっちゃ高評価だな。まあ、昔も好きだったし、今も普通に可愛いって思えてるしな〜。
人生、最初で最後の告白イベント、楽しくいこうじゃないか!まあ、あとは断られるだけだけどな!
まあ、大人になってから思いだせる甘酸っぱい思い出が増えたということで良しとするか!!
平凡すぎる俺とこんな美少女が釣り合うわけないしな〜!!
ん??んんん???なんか神崎さん、また顔赤くなってない??それもプルプル震えてない??
え?俺、なんか怒らせること言ったかな??やばいやばい、怒らせるつもりはなかったんだけどな!
「か…か…」
なにか言おうとしてる。か?なんだ?かって?
「帰れ馬鹿野郎」とかかな?でも神崎さん優しいし、そんなこと言うわけないか。一体なんだ?
「神崎さん?大丈夫?」
「か…か…考えさせてくださいーーーー!!!!」
そう言うと、神崎さんはダッシュで教室から出て行ってしまった。
固まる俺と教室にいた観覧者たち。
考えさせてください?どういうこと??なんで振らなかったの??どういうこと??
俺の脳ではなんの答えも出なかった。
俺はただ大人として、事実を述べただけなのに…。
そうして、精神年齢が10歳年上の俺の言葉に神崎さんが慌てふためき、結局、この美少女と付き合うことになるのだが、成就した恋ほど語るに値しないものはないので、割愛させていただこう。
25歳の俺が中学2年の頃にタイムリープしたら、精神年齢が高いというだけで学校一の美少女と付き合えた話 もろもろこしこし @moromorokoshikoshi
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