勇者に恋人も幼馴染も奪われた! 『たかが数回やっただけで自分の女にした気になってんじゃねーよ、バーカー』(仮)

石のやっさん

第1話 追放...されないように

パーティーリーダーであり勇者のジョブを持つガイアが俺に告げる。


「悪いが今日でクビだ」


「ちょっと待ってくれないか?」


 ガイアとは俺は幼なじみだ。


 俺はそれなりに仲良くやってきたつもりだったが…


 そんな風に思っているのは、どうやら俺だけのようだな。


 剣聖のエルザ


 聖女のマリア


 賢者のリタ


 五人揃ってSランクパーティー『ブラックウイング』そう呼ばれている。


かなり中二病な名前だがまぁガイアは勇者だし、剣聖や、聖女、賢者まで居るから誰もそうは言わない。


確かに俺の能力は他の皆より劣っている。


ジョブの差で成長した3人に能力が追いついていないのは事実だ、仕方ない。


だから、別の面で俺は頑張っていた。


俺をガイアが追放したい理由、それは解る。


『ハーレムパーティにしたいんだよな』


腐っても俺もSランクパーティーのメンバーなんだぜ。


此処を出れば、幾らでも次があるんだからしがみつく必要は本当は無い。


こいつ等が凄いだけで他のSランクパーティーならまだ通用するし、Aランクまで落とせば幾らでも受け入れ先はある。


その位の価値はあるんだよ、俺にはな。


だがガイア…お前のやり方が気に入らねー。


「ついて来れないのは分かっているだろ理人」


「そうだな、確かに侍マスターの俺じゃ戦闘で皆について行くのは...難しいな」


確かにその通りだ。


だがな、ガイア…お前の目的はそれじゃねーよな。


お前の狙いは解っている、ハーレムが欲しいんだろう?


「勇者とし大きく飛躍するには大きな手柄が必要なんだ。残念ながらお前とじゃ無理なんだ。なぁ分かってくれよ、パーティを抜けてもお前が親友なのは変わりないからな。」


ああ、別に親友で良いぜ。


『友情』と『愛』は別…それで良いんだよな。


この世界の親友は、親友の恋人に手を出さない。


結構モラルが高いからなこの世界。


それは別に良いぜ、前の世界で慣れている。


だが居場所を奪うのはルール違反だ。


虐げたりするのも同じだ。


男の友達が俺しかいねーガイアにとっては『これでも親友』なのか…まぁそれで良いなら構わない。


それで…他の奴はどうなんだ。


俺は付き合っていたリタの目を見た、彼女ももう昔の優しい目をして居ない…もうガイアに取られた後な訳ね。


「私もガイアの意見に賛成だわ!貴方はもうこのパーティについていけないじゃない。きっと近いうちに死ぬか大怪我をするわ..さっさと辞めた方が良い...これは貴方の事を思って言っているのよ」


まぁ、そう言うだろうな!


ふと、リタの左手に目が行く。


薬指には見覚えのない指輪があった、これは多分ガイアが買い与えた物だろう…そんな露店の安物で釣られた訳ね。


勇者と侍マスター、ガイアを選んだわけだ。


他の2人も同じ様な指輪をはめていた。まぁそう言う事だ...


ハーレムパーティに俺は要らない…だから追い出す。


そう言う事だ…だがやり方が気に食わない。


だから、俺は


「リタ...そんな事を言わないでくれよ、確かにこの先は厳しいかも知れないけど、あと1年、いや半年で良い…此処に居させて貰えるように頼んでくれないか?  なぁ頼むよ?」


「....」

だんまりかよ。


「なんで何も言ってくれないんだよ」


「もう、貴方を愛していない」


そんな事は...もうとっくに気が付いていたさ。


「リタがガイアと恋仲になったのは知っている! それでも俺は幼馴染で友達だろう?居場所迄奪わないでくれ」


「し..知っていたの?」


「まぁな…別に恋人に戻りたい訳じゃない…此処にいたいだけだなんだ」


「ごめんなさい!」


「もう気にしないで良い…だが、此処に、頼むから居させてくれないか?」


もうどうでも良い事だ。


ただ、俺が振られて、今はガイアが彼氏、それだけだ。


「大人しく村に帰って田舎冒険者にでもなるか、別の弱いパーティでも探すんだな」


「ガイア、頼むから、此処に居させてくれないか? 1年、いや半年で良いんだ、此処に置いてくれよ!」


 ガイアは俺とリタが付き合っているのを知っていて口説いた。


まぁいいさ...前の世界でも『恋愛と友情は別』そういう親友は山ほど居た。


だがな、俺はこの世界に転生して、この世界のやり方に従った。


ガイアがこういう奴なら『そういう付き合い方』をすれば良い。


ガイアは勝ち誇った顔で俺を見ている。


思いっきり、俺をあざ笑っているんだな。


何をしても優秀で、顔も良くて、強くて、おまけに勇者に選ばれた。


そんなお前は『自慢の親友』だったよ。


リタは確かにおれの恋人だったが、それもお前のパーティに居るから選んだだけだ。


勇者パーティに居るならメンバー以外に選択肢が無いからな、エルザとマリアをお前のお気に入りだ。



だから、余り物を選んでやったんだぜ。



「さようなら、リヒト」


「さようなら」


「貴方より!ガイアの方がごめん...」


 三人の幼なじみが一斉にお別れの言葉を言ってくる...まだ出て行くと決めてねーよ。


「あのよ!何でもするから此処に居させてくれないか?」


「情けない奴だ、そんなに此処に居たいのか? なら、それを態度で示せ」


「そうね…本当に居たいなら態度で示すべきだわ」


「私は潔さが必要だと思うが…」


「そうね」


「解ったよ」


俺は『五体投地』を行った。


五体投地とは一般的には知られてないが『土下座』を超える謝罪行為だ。


大地に寝転がり…どうとでもして良いという事を表現している。


ガイアは意地悪くにやりと笑った。


ガイアはこの意味を知っている


「五体投地か…仕方が無い3か月だ、3か月だけこのパーティから抜けるのを待ってやるよ」


「ガイアありがとうな!ガイア達は世界を救う勇者達だ、俺はただの侍マスター…せめてこの3か月ガイア達との最後の思いでにさせて貰うよ」



 「そうか、そうか…まぁ頑張れよ」


他の三人はもう、何も言わなかった。

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