街灯テラス
Rod-ルーズ
第1話 光照らされ寄り付いて…
フリーターとして早1年が立った。自分の夢を追って仕事をやめてはいいが、全くと言って自分が書いた小説は泣かず飛ばず。バイトから帰る道中は、必ず「このままでいいのか」なんて考える日が続いていた。
(やっぱり無理だったのかなー…26歳で作家なんて夢見過ぎだったのかな)
もう一度、サラリーマンとして社会復帰することを視野に入れてしまうほど夜は落ち込む。夢に挑戦するというのは、ここまで暗い道だと思わなかった。
(今月にもハロワに行って仕事探すか…ん?)
街頭があまりない道路で数少ない灯りを灯している自動販売機の前に1人の女性が佇んでいた。髪の毛色は金髪で背丈は、やや高いがそこまで高身長という感じではない。
(…外国人か、何悩んでいるんだろう。てか髪の毛綺麗だなぁ〜あれが本物のブランドヘア)
街灯がさらに彼女の髪の美しさを際立たせている。外国人自体、街を歩けばよく見かけるがこうも近くで見るとどれだけ綺麗か、それがよくわかる。
「…………………」
「あの、何を悩んでいるんですか…?」
つい我慢出来ずに声をかけてしまった。お金がないのなら、たかが自販機だし何か買ってあげようなんて気持ちを持ちながら様子を伺ったのだ。
「あ、いやあの〜言葉通じてるかな。英語全然分からないから何て言ったらいいか、分からねぇ…」
「ちゃんと理解してますよ。日本語しっかり伝わってます」
「うぇ!?…あ、そうですか、、、あのちなみに自販機眺めて何してたんですか?特別、変わった自動販売機ではないんですけど」
日本語がわかっていた。なんだろう、この恥ずかしさ。人は見かけによらぬものとは、こうゆう事を言うのだろうか。
金髪ロングな彼女は続けて話す。
「日本語は母から教わりました。語学の興味からです、難しい単語とかはまだ習っていないのですが普通の会話程度ならできます」
「あっそう…話せないわけじゃないんですね」
「ほんと見た目で判断するんですね。もう慣れましたが、会話ぐらいできますよ。普通の日本人だって、見かけによらずに英会話をしている人だっているでしょう。なんから、中学生とか」
確かにそうだ。まさか、外国人からそういった指摘を受けるとは思わなかった。しかし、ここまで彼女が日本に適していて何故、こんな普通の街中の夜中に出歩いているのかが分からない。
「あの、それじゃあどうしてこんな真夜中に出歩いているんですか?ここ、そんなに人気のある街じゃないですよ。なんなら、ただの住宅街ですよ」
「……降りた駅がここだったんです」
「ん?なんて?」
「だから!降りた駅がここだったんです!本当は夜景とか飲食店がいいところに行きたかったですよ!けれど、漢字が読めなくてとりあえず降りた駅がここだったんです!」
少し幼そうな彼女の顔が赤くなる。きっと恥ずかしかったのだろう。案外、子供らしい理由に笑いが込み上げるがここで笑ったらきっと拗ねてしまうだろう。俺は笑いを堪えて彼女の話を聞いてみた。
何も、よく知らない東京という夜の街並みを堪能しようとしたら漢字が読めなくなった。そして、あまりお金を持っておらず喉が渇いたついでに自販機を眺めた際に見かけて、母国と違う品揃えに感動を覚えていたところに話しかけたという流れだった。
「なんか思っていたのと違ったわ…ごめんね、急に話しかけて」
「別に何でもないです…こちらこそ、取り乱してすみませんでした……」
「あー、そんなに謝らなくていいよ、なんか俺が話しかけちゃったのが始まりだし。もうお家に帰ったら?」
年齢は分からないけど、とりあえず家に帰した方がいい。外国人でも夜中に街を歩く女性は危険だ。
「あー、それなんですけど帰り方が分からないです…何駅を使えばいいのか」
「は?」
「でも、大丈夫です。携帯で迎えにきてもらうように話したので…だから、あのもしよかったらそれまでお付き合いしてくれませんか……」
寂しそうな瞳でこちらを見つめる。はした金しか持ち合わせていないが、それでもこんな夜中に1人にさせるほど無神経な男ではない。
「じゃあ、、、ファミレスでも行く?」
不思議な出会い。
これだから夜は面白いのだ…
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