異世界に飛ばされた6人のおはなし

@CIHR

第1話

「…………………」


誰かの声がする。


「…………………」


うるせぇやつだ。

俺は今素晴らしく快適なベッドで寝てるんだよ。


「…………………」


安眠の邪魔するのマジでやめろ。

死刑になっても文句は言えんぞ。


「おい、大丈夫か?」


…………………


全然知らん声じゃん。

秒で目が覚めたわ。






跳ね起きた俺の目にまず飛び込んできたのは、太陽と思わしき暖かな日の光、そしてきれいな川に馬鹿でかい木がたくさん。


「悪かった、驚かせるつもりはなかったんだ」


そしてムキムキの筋肉



……誘拐かな?


自分でもびっくりするほどの勢いで飛び起きながら、転がるように距離を取る。

もしかして今のが火事場の馬鹿力というやつか、ちょっと感動。

てか俺が眠っていたのはベッドの上じゃなくて自然あふれる豊かな森だったのかよ。

…ヤバ、めっちゃ首ヤってる……


いやそんなこと言ってる場合じゃないわ。


起きたらムキムキの筋肉と森の中で一対一とか、少ない文に情報量詰め込みすぎなんよ。ワンテンポぐらい休憩挟め、なんか一周回って落ち着いてきたわ。

人って一瞬でパニックを起こしまくると逆に冷静になるらしい。一生知らなくていい情報だった。


「そんなに警戒しなくても…っていうのはさすがに無理か、すまん」


当たり前だ、こちとらただの一般男子高校生なもんでな。そんなご立派な筋肉相手にどうあがいても勝ち目もなければ逃げることもできん。パンチ一発で瀕死確定だわ。


………


……あれ?じゃあ警戒なんてする必要ないんじゃね?

だって警戒してもしなくても変わらないんだったらしなくても大丈夫だよね。疲れるだけだし。ぱっと見いい人そうだし(適当)

なんだ、警戒して損した。


――あ、大丈夫です。たった今、警戒だけでは世界は平和にならないと気付いたので


「それでいいのか……?いや、話を聞いてくれるのはありがたいんだが……」


いいのいいの、このくらい適当なほうが人生楽しいと思う。


俺の返答に若干困惑しながら、ムキムキの筋肉は(嘘かほんとか分からないが)なぜこんな意味不明な状況になっているのかを語りだした。






話をまとめるとこうだ。


”ムキムキの筋肉”こと堂安どうあんけいさん29歳ジム経営者。いつものようにジムの掃除をしていたところ、いきなり白い光に包まれていつの間にか気を失う。そして目が覚めると見知らぬ森の中、さっきの俺と同じように混乱したようだが、あたりを見まわしておそらく自分と同じ状況に陥っていると思わしきのぶっ倒れてる若い男女を発見。すわ若者の命の危険か⁉と、あわてて確認するも、どうやら寝ているだけのようだと一安心。しかし、日差しが強いところで寝ているのを放っておくと熱中症になってしまうかもしれないと思い、1人ずつ木陰に運んでいた最中に俺がうなされているのに気づく。心配になった慶さんが声をかけたところで冒頭に戻る。






……めっちゃいい人やん

その話が本当ならめっちゃいい人やん。

1人で5人を運ぶとか絶対きついでしょ、俺なら絶対途中で潰れてるわ。

なんか急に罪悪感わいてきたな。ムキムキの筋肉とか言いまくってすまんかった、いや悪口のつもりで言ってたわけじゃないけど。


…………


――え、5人?


「あぁ、君の横で寝ている4人と君を合わせて5人だ。」




横を見る。


うわ、本当に4人いる。全然気づかんかった。

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