第31話「通行料で稼ぎまくる?」

「なぜ、なぜ、こんなことになった……」


 頭を抱えながら、うんうんと唸るエリックの手元には300万円の請求書を写したiPadが怪しく光る。


 なぜ、こんなことになったかというと……。


 クイーンワイバーンとの戦闘から生き延びたエリックは次なる金儲けに向けて動き出した。

 それは、ホリィと確約した、通行料金での商売であった。

 半額になるとはいえ、それでもいきなり10Fから探索できるのであれば、それなりの収益が見込めるだろうという計算だったのだが、問題が1つ。


「あのワイバーンが居たままだと、誰も行きたがらないよな。入ったら即死トラップがあるようなもんだし」


 そこでエリックは傭兵を雇うことにした。

 それも銃火器や戦車を備えた超一流の傭兵をだ。


 10Fに出来たショートカットの最大の恩恵は車両も行けるようになったことだと考えたエリックはそれを最大限使うこととした。


「支払いはかなりの額になるが、前回倒したワイバーンの死体も回収したいし。大型ワイバーン2体ならかなりの額になるはず。依頼代を補ってあまりあるはずだ」


 そして、すぐさま挑んだのだが……。


「いや、勝てたよ。勝てたけどさぁ」


 ほぼ全ての弾薬を使い、そのうえ、戦車まで破壊されてのようやくの勝利であった。


「あれとほぼ一対一で戦っていて、勝利したってどんだけあの聖女強いんだよ。バケモノだろ」


 いずれ戦う未来がある相手の脅威度が判明し、頭を抱える。

 そして、さらに悩みの種は目の前の請求書。

 ワイバーンを売った金は莫大なものとなったが、必要経費はそれ以上となり、その差し引きで300万もの負債が残る結果となった。


 しかも、ワイバーンを復活させない為、10Fには傭兵が数人残っており、こうしている今も負債はかさんでいるのだった。


「果たして、これって元は取れるのか?」


 そんな疑問がエリックの脳裏によぎる。

 通行料を取るためにはそこに関所を設け、さらには入ろうとする人物から金を巻き上げる人員も必要だ。

 伊東屋の従業員を使えば人員自体は確保できるが、そこから出ていく人件費が果たしてこの負債を賄えるものなのだろうか。


「いやいや、やらなければ確実に損しかない。ここまで損したんだ。後は得が待っている……はず」


 そうして通行費を取ることを試みることに決めたのだった。

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