吸血鬼商人は突然現れた異界のダンジョンを足がかりに稼ぎまくる! ~目指せタワマンオーナー! のはずが、凶悪聖女のモンスター退治に巻き込まれて先に墓標を立てる羽目になりそうです!?~
第29話「クイーンワイバーン討伐で稼ぎまくる」
第29話「クイーンワイバーン討伐で稼ぎまくる」
ワイバーンが地面へと落ちると、ホリィは最後の力を振り絞る。
「ああああっ!!」
満身創痍の体だが、それでもハンマーを杖のようにしながら、墜ちたワイバーンに歩み寄る。
ワイバーンの瞳には意味が分からないという困惑が浮かぶ。
「こんな結果になってアタシも不本意よ。1対1で本気で命のやり取りをした相手にこうして勝つだなんて。正義のヒーローならこんな勝ち方しないでしょうね。でも、アタシは聖女なの。どんな勝ち方でも、それで皆を守れるなら良いのよ。こだわりで人を救えるなら、とっくに世界は人間が勝っているわ」
「があああああああっ!!」
ワイバーンは再び宙に舞おうとするが、それをホリィのハンマーが制す。
「もう飛ばせるわけないでしょ! あんたなんか、飛んでなければただのワニワニパニックなのよ!」
ホリィはハンマーを振り下ろす。
一撃では巨大なワイバーンの装甲は破れず、二撃、三撃と繰り返す。
傍目には弱った飛竜を滅多打ちにする残酷な図だが、全ては人間の未来の為。一切の後悔も憐憫もなく、ただただ勝利の為に打ち付ける。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。決着ね……」
ホリィの手からハンマーが離れ、どしんと重みを感じさせる音を響かせる。
愛鎚とでも言うべき相棒を手放すほど、ホリィの気力、体力共に限界を迎えていた。
そのままぺたりと地面に座り込み、大きく息を吐く。
そのとき、完全に絶命したかと思われたクイーンワイバーンの口が大きく開く。
「まだ、生きていたのね」
その声には焦りの色は微塵もなく、道端で久しぶりに会った知り合いに投げかけるかのようであった。
「おかげさまでね。まぁ、ホリィの所為で食われて死にかけたけど」
そんな皮肉がワイバーンの口から発せられる。エリックの声で。
「よいしょっ!」
口をしっかりと開けて脱出するエリックはいたるところで服は破け、露出した肌は皮膚が溶け落ちていることが多く、見るからに痛々しい見た目であった。
しかし、エリックが気にしたのは、
「そっちもそれなりに埃で酷い姿だけどさ。こっちってどんな? 短パンになっているのは分かるんだけど、背中の方とか」
自身の服の方が怪我より大ごとで、現在の状況を尋ねる。
そんなエリック同様に、ホリィもエリックの怪我には一切の興味もなく、服の感想を伝える。
「あ~、変態よ。大丈夫。そのまま街に出るといいわ」
「さも、普通みたいに言ってるけど、変態かよっ!! 完全にアウトじゃねぇかっ!! 警察のお世話になる格好になってるな。はぁ、結構高かったのに」
洋服は背中が全て溶けており、尻も半分見えていた。
丸まって耐えていただけに体の前が比較的無事なのが余計変態度合いを高めるという、エリックの不幸なところだった。
「少し休憩したら、11Fへ上がってから帰ろう」
「吸血鬼のクセに体力ないわね。でも、アタシは人間だから、休むわ」
「人には働くことを強制させて、自分は休むとか、ブラック企業の上司かよ」
エリックとホリィはそのまま原っぱに横になる。
飛竜のいない、自由な
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます