34,クラス投票当日
ついにこの日が来てしまった。
今日の放課後、クラス投票が行われるのだ。
レンとミチカが魔法のじゅうたんに乗って楽しそうに空中を飛んでいる姿が目に浮かんでくる。
けれど……。
マリが気になることを言っていた。
今回の一番人気は私だと。女子で選ばれるのは私かもしれないと。
そんなこと、あるわけないか。なにせ前回私はたった一票しか入らなかったんだから。
朝、ランドセルを背負った私は、いつものように浮遊術で階段を飛び降りる。
いつもなら、敷地の外でレンが待っていてくれるんだけど、今日はいないはずだ。昨日、レンの誘いを断ってムラタと二人で勉強したんだから。私のことは放っておいてと言っちゃったし。
そう思っていたが、予想は外れた。
いつもの場所でレンが待っていたのだ。
どういうつもりだろう。
私は、レンから顔をそむけ、彼の前を通り過ぎようとしたその時。
レンが私の前に立った。そして「これ」とだけ言って手に持つものを差し出した。
お弁当だ。レンのお母さんが作ってくれたお弁当。
でも、もうレンとは距離を置こうとしているんだし……。
受け取るわけにはいかない気がする。
けれど、お弁当がなかったら困るのも事実だし。おばさんの優しさを踏みにじるようなこともできない。
「ありがとう」
私は蚊の泣くような小さな声でそう言うとお弁当を受け取った。
お弁当を渡し終えたレンは、私に何も言わず早足で学校へと向かっていった。
そんなレンの様子をみて思う。
万が一、クラス投票で私とレンが選ばれてしまったらどうなるのだろう。こんな関係で、レンといっしょに魔法のじゅうたんなんかで飛べないし。
でもそうだった。マリの話によれば、男子はムラタが選ばれるように話が進んでいるみたいだし。
万が一、マリの言う通り、私が一位で選ばれてしまっても、みんなの前でいっしょにじゅうたんで飛ぶのはきっとムラタだわ。
まだ自分が選ばれたわけでもないのだが、私はそんなことを考えて自分を安心させていたのだった。
学校に着くと、すぐにマリが話しかけてきた。
「ちゃんとみんなには話しておいたから安心してね」
「なんのこと?」
「とぼけなくていいのよ。男子はムラタが選ばれるようにちゃんとみんなに話してあるから、安心してね」
みんなに話してあるって……。
「私、別にみんなの前でそんなことしたくないんだけど……。だいたい私が選ばれるって本当なの?」
「うん。そこが問題なのよね」
マリはちょっとむずかしい顔をした。
「男子の票が完全には読めないのよ。どうもアオイ派とミチカ派に分かれているみたいなの。こればっかりは、やってみないとどうなるかわからないわ」
そりゃそうだ。美人で勉強のできるミチカは、男子たちのアイドル的存在だ。選ばれないわけがない。
どうか、ミチカが選ばれますように。
私は心のなかでそんなことを祈っていた。
だいたい、ミチカとムラタがいっしょに魔法のじゅうたんをやるのなら、心が乱れることないし。
そんなことを思っていると、時間はあっという間に過ぎていった。一日の授業が終わってしまい、気がつけばクラス投票の行われる放課後がやってきてしまった。
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