好きこそ魔法の上手なれ
銀野きりん
魔法実技試験
1,魔法学校
私は大きなため息をついた。
そして大好きなおばあちゃんを見る。
おばあちゃんを悲しませたくないな。
そんな思いがよぎった。
でも言わなきゃ。
もう、そうするしか方法はないんだから。
「おばあちゃん」
私は思い切って口を開いた。
「なに?」
「私、学校をやめる。もう、魔法学校に行くのをやめる」
私の言葉が意外だったのか、おばあちゃんは驚いた顔で私を見た。
「どうしてだい?」
「だって」
私は一瞬、言葉をつまらせる。でも、なんでも話してしまうのが私の性分。
「だって、うち、貧乏でしょ。もう、魔法学校に通うお金なんかないんでしょ」
「……」
「私、知ってるの。魔法学校へ通うにはたくさんのお金がいることを。うちにはそんなお金、もうないんでしょ」
おばあちゃんは私の言葉を黙って聞いていた。そしてこう言った。
「確かにうちはお金持ちではないわよ。でもそんなこと、まだ子供のアオイが心配しなくてもいいの。アオイはちゃんと魔法学校を卒業して、立派な魔法使いになることだけを考えていればいいのよ」
「……うん」
立派な魔法使いか……。
おばあちゃん知っているでしょ、私の成績を……。
「さあ、つまらないことは忘れて、学校へ行っておいで」
おばあちゃんは笑顔を向けると、そう言って私を送り出した。
「行ってきます」
ランドセルを背負った私は小さな声を出す。
「何よ。いつものアオイはもっと元気なはずよ。いつも通り、大きな声を出して外へ飛び出して行きなさい」
「行ってきます!」
私は声を上げ、入り口のドアを開けた。
「そう、その調子よ」
おばあちゃんの言葉を背にし、私は外へ出た。
集合住宅の廊下を少し歩くと階段があり、私は一気にそこを飛び降りた。
ふわっと体が浮き、ゆっくりと足が地面につく。
浮遊術だ。
学校の外で魔法を使うことは禁止されているのだが、これくらいはみんなやっている。
地面に降りた私は、小走りで学校へと向かう。
集合住宅の敷地の外を出た時、背後から声がした。
「アオイちゃん、おはよう」
聞き慣れた声。
私は振り向いて、声のする方向へ顔を向けた。
そこには黒いランドセルを背負った、日焼けした男の子が立っていた。
「おはよう、レン君」
男の子に返事をすると、彼はすぐに私の横に並んできた。
「ねえ知っている? ミチカちゃんが魔法コンクールで特別賞もらうらしいよ」
レンはすぐさまそんなことを言ってきた。
「そうなんだ。さすがだね。でもコンクールの発表、まだでしょ。どうしてそんな事知っているの?」
「本人には早めに通知されるんだよ。それを聞いたんだ」
私はなるほどと思った。
ミチカはレンに自慢したかったんだ。
彼女、レンのこと好きだからね。
そして……。
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