Revolution

Sonata

第1話 『幸せの花』

(登場人物)

琴坂遙

 星羽高校1年3組。完全記憶力を持つ。それが原因で中2までは不登校だった。

花寺遥香

 星羽高校1年3組。家が花屋『Celestial Bloom』を経営する。優しい穏やかな雰囲気。


(本編) 遙side

遥「琴坂君,だよね?花寺遥香です。隣の席だからよろしくね。」

雰囲気がほんわかしてる。

遙「名前一緒なんだね。」

遥「はるか君っていうんだ~。去年同じクラスだったのに学校来ないから,今年こそ話しかけてみようと思ってたの。」

かすかに花のにおいがする。

遙「…もしかして『Bloom』の店の人?」

遥「そうだよ。どうして分かったの?」

遙「…なんか,覚えてた。」

嘘。完全記憶力を持ってるから全部わかる。

遥「琴坂君って凄いんだね~。」

純粋すぎる笑顔。

遙「凄くないよ。普通。」

こう言ったらなんて返してくるんだろう。

遥「琴坂君にとっては普通なのかな~。でも,覚えててもらえて本当に嬉しいなー」

予想外の回答。初めてなんだけど。

遥「あ!琴坂君初めて笑った~。全然笑わないから心配したんだよ。」

笑ったの,久しぶりだなぁ。

遙「面白いね,花寺さん。」

今まで引っ張っていたものが切れた気がする。

遥「そうだ!今日『Bloom』に来ない?サービスするよ~。」

唐突だな…。でも,久しぶりに家から出たんだ,ちょっと寄り道くらい。

遙「じゃあ,行こうかな。」

目の前の大きな扉が開いた気がする。


そして帰宅途中。

実は割りと家の近くに『Bloom』の店はあった。

俺は先生に呼び出されたため,少し遅い時間になってしまった。

遥「いらっしゃいませ~。あ,琴坂君本当に来てくれたんだ~。」

遙「うん。先生に呼び出されて少し遅くなった。」

すごく綺麗な花屋だ。

遥「ハーブティーあるの。一緒に飲まない?」

遙「うん。いいよ。」


遙「久しぶりだなぁ。」

遥「何が?」

遙「こんな風に人と話して一緒にご飯を食べて…っていう事。」

遥「えっ…。」

花寺さんの顔が不安げになる。

遙「俺不登校だったから。」

遥「そうなんだ…。家では何をしてたの?」

遙「そうだな,ずっと数学と英語とプログラミングを。あとゲーム。」

へぇ~と花寺さんは目を丸くする。

遥「凄いね~。どうしていろんなことできるのに家にいたの?」

遙「完全記憶力を持ってるから。嫌な思い出が全部残っちゃうんだ。」

遥「完全記憶力…?あ,そうだっ!」

花寺さんはタタタッとどこかに走って行ってしまった。

遥「琴坂君!これ,私からのプレゼント!」

花寺さんが持ってきたのは青い鳥のブローチだった。

遙「凄く綺麗な色だ。」

電気にかざすと美しいライトブルーに光る。

美しい。

遥「さっきね,琴坂君,嫌な思い出が残るって言ってたけど,楽しい思い出も綺麗なものもずっと覚えていられるんだよ。」

あぁ,そうだ。なんで気づかなかったんだろう。

遙「花寺さん,ありがとう。毎日が楽しくなりそう。明日からが楽しみだなぁ。」

遥「そう思ってもらえて嬉しい。琴坂君はやっぱり笑った顔の方が似合うよ。」

俺も自然に笑えるんだな。

全部花寺さんのおかげだ。

遙「あ,もし良かったらなんだけど,遙で…いいから。」

絶対顔真っ赤だ。

遥「ん~じゃあ,遙ちゃんなんてどうかな?」

遙「え,遙ちゃん⁉」

遥「うん。私ははーちゃんで。皆にそう呼ばれてるの。」

はーちゃん…まあ,でもみんながそう呼んでいるんだったら。

遙「はーちゃん,今日はありがとう。じゃあ,また明日。」

遥香とLINEを交換して俺は店を出た。

青い鳥のブローチ。制服の襟につける。

幸せがやってきそうだな。

素敵な思い出をたくさん作っていこう。

                     (完)




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