第31話
「にしてもさー、自分もたまにあの番組観るけど、殿堂入りしたエルフの子、そこまで性格悪かったんだ」
噂では知ってたけど、となっちゃんは続けた。
「有名なんだ、リリアさんの性格」
「有名っていうか、ほらアイドルグループでもあるじゃん。
実は仲が悪いとか。そういう系の話」
「あー、なるほど」
陰口というか、ゴシップと言うやつか。
「リリアさんに関しては、根も葉もある噂通りの人だった、と」
「ココロから話聞いた限りだと、噂より悪いかなぁ」
そりゃ、悪いだろうな。
伝えたあたしのリリアさんに対する印象が最悪だし。
なんでもそうだけど、たとえ人伝の噂だったとしてもそれを伝える人の主観がどうしても入ってしまうものだ。
そして、その噂の内容が嘘か本当かはあまり重要じゃ無かったりする。
だって話をする人達が楽しめればそれでいいのだから。
「正直なこと言うとさ」
あたしは、ポロッと呟く。
「後ちょっとで妹と喧嘩するみたいに、リリアさんの頭どつく所だったんだよ」
手が出なくてほんと良かった。
今更だけど。
「エルフの頭どつくって、ココロにしか出来なそう」
なっちゃんがケラケラ笑いながら返してくる。
一応、神様の伴侶がエルフだったってことで、まあ、ロイヤルファミリーとまでは行かないけれど、そういう特別な目でエルフを見る人は少なからずいるらしい。
あたしみたいに家族や、ご近所に住んでいたらまた違うけれど。
「エルフでも、頭の強度は普通の人間とそう変わらないみたいだし、今度なっちゃんも冒険者エルフと喧嘩した時やってみればいいよ」
ケースバイケースだとは思うけど。
「いや、そういうことじゃなくて。
というか、中々無いからそんなこと」
「そう?」
「そうだよ。七割、八割くらいは善良な人達だから。
タマを拾った時に遭遇したタイプが残りの三割から二割の人達」
「あー、居たねぇ、そんなの。
いい大人がなんであんな虐待してたのか不思議だったんだけどさ」
「あれねー、簡単に言うと、俺たちは冒険者で強いんだぞー、凄いんだぞー、ガオーってやつ」
なっちゃんが肉食獣の真似事をしながら説明してきた。
「でも、なっちゃんにはビビってたよね?」
「だって、私の方がランク上だし。見ての通りの鬼人族でしょ?
こう言っちゃなんだけど鬼人族は冒険者の世界はもとより格闘の世界とかでも能力的に優位だし」
「?
強いってこと?」
「そーそー」
確かに、世界的なスポーツ大会で功績を残すのは能力的に優れている人達だ。
練習をどれだけしてきても、覆せないどうしようもないことがこの世界にはある。
実際、そう言った知名度のある大会で選抜される選手にはあたしのような【人間種族】はほとんどいないのが現実だ。
身体能力が高いのは、なっちゃんのような鬼人族、そして末の妹のような吸血鬼等の亜人種族なのだから。
社会ではそういう能力的なことから差別が横行した時代が長く続いたとも、歴史の授業で習った。
今でも少しそういうのは残っている。
実際、あたしは小学生の頃に同級生の意地悪男子から、【人間種族】という理由でからかわれたり、イジメを受けたことがある。
今でこそよその子を軽々しく叩いたりしないが、当時のあたしはお転婆で、負けん気が強かった。
兄を口喧嘩で泣かしたという経験もあったので、同じようにふざけた事を言ってくるやつは口で言い負かして泣かせた。
そうすると、相手は泣きながら手を出してくるから、それを見計らってわざと怪我をする。
もっと言うと、わざと殴られてやるのだ。
運が良ければそこで教師など大人が現れるし、来なくても正当防衛での反撃ができるし、目撃証言から女の子を殴ったということで相手は大人からの印象が悪くなり、下手すると子供社会でも詰むこととなる。
少なくとも同じ年代の女の子からは避けられるのは必須だ。
「なっちゃん、強いんだ」
「
謙遜してはいるが、なっちゃんは得意げだ。
「でも、ココロ。気をつけなよ」
表情を真面目なものにして、なっちゃんは言う。
あたしは訳が分からず、首を傾げる。
「?」
「こういう時はあんまり動かないはずの特定班が動いてる」
「とくてーはん?」
なっちゃんは携帯を操作して、今度は所謂ネット掲示板を見せてきた。
そこには、タマの飼い主であり、くそ生意気で一部で反感を買っていたリリアさんを負かした人物、つまり、あたしがどこの誰か探そう、という話題で盛り上がっている人達がいた。
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