第13話
「いい知らせと悪い知らせがある。
どっちから聞きたい?」
帰りの車の中、お父さんの方から、どっかのドラマみたいにそう切り出された。
「じゃあ、悪い方」
「お前にレアスキル兼レア職業の才能が眠ってることが判明した」
「……あー、お狐様が言ってたヤツかな?」
「キツネ?」
「こっちの話。
良い話は?」
「そのレアスキル兼レア職業は、ある意味魔物使いと相性がいいってことだ」
「と、言うと?」
「紙に書いてあった、【言霊使い】ってのがそれなんだが。
これな、極端な話、自分以外の他の存在に『死ね』って言えば、それだけで死なせることができる能力らしい」
「は?」
あたしは戸惑って、手をパタパタぶんぶん振ると続けた。
「待って待って、いや、それは有り得ないよ。
こう言っちゃなんだけど、今まで何回
お父さんだって見て来たでしょ?
マリー、死んでないよ?」
主に一人っ子の読者に告げる。
家族をなんだと思ってる、とか、姉としてどうなんだ、とか疑問が出ていることだろう。
家によるが、歳の近い兄弟姉妹は喧嘩をするものだ。
みだりに、上や下の兄弟姉妹がいていいなぁ、とか羨ましいなぁ、とか言ってはいけないぞ。
地雷だったりするからな。
さて、喧嘩でそんな罵りあいをしていた妹は、むしろ、現在進行形で後部座席にて間抜け面で眠りこけている。
元気そのものだ。
「練度が低いんだよ。
意識してその能力の訓練をすれば、出来るようになる。
今は、せいぜいおばあちゃんの育ててる花とか、おじいちゃんの育ててる野菜とかに声掛けすると、綺麗に花が咲いたり、美味しくデカく育てたりすることが出来るくらいだ」
言われて、あれ? ちょっと待て。
なんか、そういえばちらほら身に覚えがあるような?
ばあちゃんの手伝いで花の水やりを、声掛けしながらやったらやたら綺麗に咲いたりしたっけ?
あの、品評会に出す菊とか。
めっちゃ綺麗に咲いてたような?
そういえば、昔、ばあちゃんに。
「ココロには、花を育てる才能があるかもねぇ」
なんて言われたことがあったよーな?
それに、じいちゃんの手伝いで夏野菜の水やりしたあとは、やけにデカいけど美味しい野菜が採れてたような?
「あとは、タマとか低レベルモンスターに言うことをきかせることができるくらいか」
「ふむふむ」
「で、だ。
悪い話に戻ると」
「え、なに?
まだなんかあるの?」
「あるんだよ。実は」
なんだなんだ、怖いな。
「鑑定結果がレアであろうとなかろうと、鑑定をした場合、【言霊使い】に限らず、役所に申し出なきゃいけないんだ。
んで、定期的に国が主催してる講習会に出るか、専門の訓練施設に通わなきゃいけなくなる」
「うわぁー、クソめんどいやつだ」
「そうなんだよなぁ。
ただ、やっぱりそれだけ危険を孕んだ能力ってことだから、仕方ない」
「ちなみに、高校は辞めなくても大丈夫なんだよね?」
「それは大丈夫らしい。とりあえず、国としてもそう言った危険度の高い能力所持者の居場所を把握しときたいってことらしい」
まあ、わからなくはない。
「でも、人権とかその他諸々の事情もあって強制隔離とかはないから」
「それは、とても安心だ」
「ただ、やっぱりそういう能力持ちってことは把握されるわけだから、もしかしたら進路に影響は出るだろうな」
「……はぁ、やっぱり調べなきゃ良かった」
「まぁ、とりあえず選択肢は広がったってことで、良しとしてくれないか?」
「ばあちゃんがまたご馳走様作りそうだよね」
「あー、うん。それな。
おばあちゃんから連絡入ってて、まぁ隠せないからもう言ってある。
お赤飯炊いて、あとデカいケーキ買ってくるってさ」
「HAHAHA」
もう笑うしか出来ないや。
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