俺を大好きなヒロインvs本物リアのラブコメ
やまちゃん
第1話 隣の席の春1
高校二年の春、四月下旬。
新しいクラスになってからもうすぐ一ヶ月。
明日からの連休を前に、帰りのホームルームで席替えが行われると担任から発表されても「ああ、そうなんだ」くらいの気持ちだった。
誰の隣になりたいとか、逆に嫌とか。別にそういうものはなく。
もちろんほとんどのクラスメイトと同じく、一番前とか授業中によそ見ができない席になったら嫌だなぁくらいの感想はあるけれども。
そんな平凡な俺の名前は夏野夕也(なつのゆうや)。
クラスでの出席番号は真ん中あたり。
今もたまたま教室の真ん中あたりが俺の座席だった。
そうして、担任の戸坂(とさか)先生を中心に席替えが始まった。
教壇に置いてある箱から数字の書いてあるクジを引くという、一般的な席替えスタイルだ。
お昼休みに先生とクラス委員が作ってくれたらしい。
高二にもなって、と思うが黒板に座席番号が書かれるたびに意外とワイワイ盛り上がっている。
と、ぼんやりしていたら
俺が手にしているくじ引きの紙の番号が黒板に書かれる。
それを見て、「やった! マジか! ラッキー!」と俺も声をあげたくなった。
もちろんそういうタイプではないので心の中でだけに留めておいたけれど。
全員分、座席を決め終わると
「それじゃあ、今から席を移動してね。それで今日のホームルームは終わりにしましょう」
と、戸坂先生は言った。
まだ二十代の新米ってほどではないけど親しみやすい感じの、数学の女性の先生だ。
女子生徒と友達みたいに話しているのも見たことがある。
そうやって一通りくじ引きが終わると俺も含めた二年A組の生徒はガタガタと机を運び始める。
──そして……。
俺が窓際の1番後ろ。個人的に席替えの中で一番の当たりの場所だと思っているその場所に自分の机を運び、まわりを見渡す。
隣、誰なんだろうと思ってしばらく。
ガタッと机を置く音が聞こえると同時くらいに
「夏野くん」
と右隣から声がかけられた。ちなみに俺は端の席なので左には窓しかない。唯一の隣というわけだ。
声をかけてくるなんて律儀だなと思いながらそちらを見る。
「隣、夏野くんなんだ。しばらくよろしくね」
爽やかな挨拶。真っ白な肌に、肩の下くらいまで伸ばしている黒髪が綺麗だった。
毎日顔を合わすクラスメイトなのに、それでも一瞬見とれそうになる。
透き通ってそうなのにキラキラ輝いている目を少しだけ細めて、
月島杏(つきしまあん)はニコッと笑った。
女の子らしい、ふわふわとした柔らかいオーラが俺まで届いて
普段女子と話すことが少ない俺は少し面食らってしまった。
「よ、よろしく」
「夏野くんのところ、一番良い席だね」
「あ、ああ。うん……、そう」
「新しい席楽しみ! 私たちラッキーだね」
なんとか挨拶を返した俺に月島はそんな言葉を投げかけた。
どこか自分はこの女子と仲が良かったんじゃないかと勘違いしてしまいそうな……。
そんな笑顔の月島と数秒間、見つめ合ってしまったのだ。
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