第14話 マジックミラー号殺人事件
衆人環視の中で誰にも気づかれることなく殺しをすること。それこそが馬来の手口だった。
――今日もまた、血に飢えた殺人鬼が生贄を探し求める。
🚌 🚌 🚌
「エリカちゃん、大至急教えてくれ。どうすればマジックミラーの中を逆から覗くことができる?」
「……あのさ警部、何でそんなことが知りたいわけ?」
「説明している時間が惜しい。とても重要なことなんだ。あとで必ず事情は教えるから!」
「……まァいいけど。マジックミラーの原理は、射した光の一部を反射して、一部を透過させるってことなわけ」
「……えと、どゆこと?」
「つまりマジックミラーを明るい部屋と暗い部屋の間に設置すると、明るい側からは光を反射して鏡に見え、暗い側からは光の一部が透過することでマジックミラーの先が見えるってこと」
「ふむふむ。それでそれで」
「警部がやりたいのは、明るい側からマジックミラーの先を見たいってことだよね? だったら光が入ってこないように新聞か何かを筒状に丸めて、それを当てて中を覗けば見えると思うよ」
「なるほど、部屋の中より暗くなるようにして覗けば、外からでも中が見えるってことか!」
「犯人、わかったんだけど」
そこでエリカは何時もの決めゼリフを吐いた。
「えッ!?」
エロ警部は思わず動揺の声を上げてしまう。
「警部、今外にいるでしょ? それも人通りの多い繁華街」
「……え? いや、エリカちゃんもしかして僕のこと何処からか見てる?」
「調子のんな。誰がテメーみたいなオッサン好き好んで監視するかよ、ザコが。お前の行動くらい見てなくてもお見通しなの」
「……す、すみません」
「警部はそこでAVの撮影が行われているとみられる、全面鏡張りの大型車両を発見した。そして警部はその中で行われているであろう性行為を覗きたいと考えているわけだ。でも一応言っておくと、それって立派な犯罪だからね」
「……ご、誤解だよエリカちゃん、僕がそんな人間に見える?」
「うん。見える」
「……じゃ、エリカちゃんまた今度デートしようね」
工口はそう言って一方的に電話を切ると、尻ポケットに入れていた競馬新聞を徐に丸め始めるのだった。
こうして事件は一件落着。来年も宜しくお願い致します!
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