第2話 お嬢様学園殺人事件

 工口こうぐち警部は殺人現場にいるというのに、鼻の下が伸びるのを堪えられなかった。警部がいるのは、とある名門女子校。こんな事件でも起きない限り決して立ち入ることの出来ない、以下略。

 朝立あさだち巡査が警部に事件の概要を報告する。

「ガイシャは馬波まなみ桜子さくらこ。美術室内で頭を石膏で殴られて殺害されています」

 長い黒髪の美少女が頭から血を流して倒れている。

「事件発生当時、学園内にいたのは四名。将棋部の下毛しもけ美映みえ乳井ちちいめぐみ。帰宅部の男女島おめじま圭織かおり。そして、宿直当番だった数学教師の古閑こかん政孝まさたかです」

「その教師が怪しいな。女子校に男性教師とは羨まけしからん」

「しかし警部、この四人にはアリバイがあるのです」


     🎀 🎀 🎀


 四人の事件前後の動きは以下の通り。

 十六時から十八時の間、下毛と乳井は部室で将棋の対局をしていた。その間、二人は一度も席を立つことはなかった。二人の対局を眺めていた男女島はすぐに飽きて、その間に何度か席を立っている。

 十八時五分、女学生三人が揃って校門を出ようとしたところで乳井が忘れ物を取りに部室に戻る。二分後、今度こそ帰ろうとしたところで三人は校舎から女の悲鳴を聞く。

 十八時十分、三人は宿直室に向かい、古閑と合流。ちなみに古閑は宿直室に入った十八時より前の時間は職員会議に出ていた。


 ――そして四人は死体を発見する。


     🎀 🎀 🎀


「犯人、わかったんだけど」


 肉倉ししくらエリカは頭を抱える工口警部を尻目に、ポツリと呟いた。

「エリカちゃん本当? 教えて教えて」

「……コーチのバッグで欲しいのがあるんだけど」

「買う買う。買ってあげるから」

「まず、悲鳴だけど事件と関係ない。教師が女子校生モノのAVでも観てたんでしょ」

「へ?」

「折角女子校に寝泊まり出来るんだから、その臨場感を利用しない手はないじゃん」

 警部はその見事な推理に完全に納得する。

「教師に犯行は無理。今正に抜こうとしてたところに生徒がズカズカ上がり込んできて、迷惑だった筈だよ」

「古閑は何故そのことを黙っていたんだ?」

「言えるわけないよ。聖職者がお嬢様学園でオ〇ニーするのが日課とか。犯人はそれを知っていて利用した。宿直室のヘッドホンに細工して音が大音量で出るように準備までしてね」

 エリカは可愛い顔でニヒルに笑う。

「十八時には教師は既に宿直室いる。忘れ物を取りに戻った乳井にヘッドホンを細工することは出来ない。つまり、馬波桜子を殺害したのは男女島圭織」


 こうして事件は一件落着。今回も難事件であった。ふぅ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る