【歴史エッセイ】東京の中の古墳
古墳と聞くと、どのようなものを思い浮かべるだろうか?
大方の人は大阪にある仁徳天皇陵(大仙古墳)や卑弥呼の墓とされている箸墓古墳(奈良県にある古墳)を思い浮かべるだろう。もしくは、同じ名文の鉄剣が出土した埼玉の稲荷山古墳や江田船山古墳を思い浮かべる人もいるかもしれない。まあ、大きな古墳や前方後円墳といったところだろうか。
大仙古墳や箸墓古墳ほど有名ではないが、東京やその周辺にも古墳は存在する。
保存状態のいいところだと、足立区の白旗塚古墳だろうか。
白旗塚古墳は保存状態だけでなく、交通のアクセスもいい。東武線を埼玉方面にたどったところにあるからだ。
形状は円墳(円形の形をした古墳のこと)。作られた時期は、周辺にあった古墳の発掘調査から、5~6世紀ごろのものと考えられている。
「白旗」という名称は、源頼義・義家親子がここに源氏の象徴である白旗を立てたことに由来している。
「埴輪や古墳の形式、副葬品からわかるものなの?」
そう思った人もいるかもしれないので話しておくが、わかるものだ。
例を上げると、前期辺りの古墳は仏が入っている穴が縦に掘られているが、それ以降のものは、横に穴が掘られている。
また、副葬品の場合は、前期には勾玉や銅鏡といった呪術的なもの、中期には馬の鞍や鉄剣といった軍事的象徴のものが多い。これらのことから、前期の古墳に埋葬されている人はシャーマン的な人物、中期の古墳に埋葬されている人は武人的性格の人物と推測されている。
だが、どれもあくまで推測なので、何が本当なのかは、当時を生きた人にしかわからない。
上野公園にも古墳がある。近代美術館の目の前にある摺鉢山という小さな山がそれだ。
摺鉢山は上野公園の敷地内にある古墳。円墳(円形の形をした古墳のこと)のようにも見えるが、実は前方後円墳。作られた時期は、出土した埴輪や須恵器の欠片から約1500年前と考えられている。
単純な円形や正方形、八角形、四角い鍵穴状のもの。様々な形の古墳が存在する。
それでも古墳と聞くと、みんな前方後円墳を思い浮かべる。仁徳天皇陵や箸墓古墳といった有名な古墳はほとんど、前方後円墳だからだろうか。あるいは、あのきれいな鍵穴の形に何か人を惹き付けるものでもあるのだろう。
それと、東京の古墳は、神社や公園の敷地内にあるので、非常にわかりづらい。
そして部分的に破壊されている物が多いので、通りすぎる人のほとんどは、
「築山かな?」
と思ってしまうほどに。
地域や公園の景観の一部になっていて、いろんな人から親しまれているという意味では悪いことではない。
都営三田線から降りてすぐの場所にも古墳がある。芝公園の敷地内にある芝丸山古墳だ。
芝丸山古墳は都内最大級の古墳で、形はきれいな前方後円墳。盛り土をした形跡がないことから、丘を削って作られたのではないかと考えられている。また、後円部とてっぺんに当たる部分が削られている。そのため、石室がない。
このように、後世の人たちの都合で破壊されてしまう古墳は意外と多い。
破壊されてしまう主な理由としては、宅地の造成や娯楽施設の建設などといったところだろう。他にも歴史的な背景があって切り崩されたり改変されたりしたケースもある。
前者はわかった時点で調査を進めたり、保護しようという動きが出たりするから、まだいい。だが、後者の場合は少し複雑だ。
「古墳も歴史だし後世に改編された部分も歴史」
というかなり面倒な扱いになるからだ。古墳も後世に改ざんされた部分も文化財という扱いになるので、容易にどちらかを崩してしまおうということは、まずできない。だから、古墳と安土桃山時代の遺構である石田堤がある丸墓山古墳は、どちらも粗末に扱えないのだ。
ちなみに丸墓山古墳は、小田原攻めで忍城の成田氏を攻めたとき、石田三成が陣を敷いた場所だ。
「歴史文化と私たちの生活の共存」
これが現代社会の文化財保護における一番の課題であることは確かだろう。もちろん古墳だけに限った話ではない。
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